セントレジャー開催2008・最終日

ドンカスターのセントレジャー開催が無事に閉幕しました。劇的なドラマを生んで・・・。
そう、セントレジャー(GⅠ、3歳、1マイル6ハロン110ヤード)で遂にサー・マイケル・スタウト調教師の34年の夢が叶い、英国最後のクラシックの初制覇を達成したのです。
勝ったのはデットーリ騎乗のコンデュイ Conduit 。これまでの憂さを晴らすように、2着に3馬身の差を付ける圧勝でした。
その2着は無敗の牝馬アンサング・ヒロイン Unsung Heroine 、3着は更に3馬身4分の1でオークス馬ルック・ヒア Look Here が入りました。
セントレジャーは14頭立てで行われ、1982年以来の多頭数が揃いましたが、クラシック馬が2頭参戦し、質量共にハイレヴェルだったと言えましょう。牝馬の参加は2頭でしたが、それが2・3着、牝馬勢の質の高さを証明する結果でもありました。
9対4の1番人気を集めた愛ダービー馬フローズン・ファイアは良い所なく7着惨敗。スタウト厩舎の主戦・ライアン・ムーア騎手が選択したドクター・フレマントルもスタミナを無くし、8着に沈んでいます。
ムーア騎手、本来ならコンデュイに騎乗したかったようですが、馬場状態が重いことを考慮してドクターを取り、誤った結果になってしまいました。
さすがのスタウト師、インタヴューも涙目で応えましたが、“何も言えねえ”ということはなく、長年の夢が叶った喜びに加え、ムーア騎手への労いも忘れていません。
9回もチャンピオン・トレーナーのタイトルを獲得しているスタウト師は、これまでセントレジャーに25回挑戦し、何度かニアミスはあったものの、勝利の栄冠はまだ手にしていませんでした。
この名伯楽、イギリスの他のクラシックはどれも2勝以上していますから、レジャー未勝利は競馬界七不思議の一つに数えてもよいほど。
これまで5回の2着を列記すると、
1990年 ヘレニック Hellenic (スインバーン騎乗)
1991年 サドラーズ・ホール Sadler’s Hall (レイド騎乗)
2000年 エア・マーシャル Air Marshall (レイド騎乗)
2002年 ハイエスト Highest (ホーランド騎乗)
2004年 クイフ Quiff (ファロン騎乗)
他に負けるはずがないと言われたシャーガーの惨敗も記録に残っています。まずはスタウト調教師を称えましょう。おめでとうございます!!
騎乗したデットーリ、彼にとってはこれが5度目のセントレジャー制覇となりました。スタウト師と抱き合って喜びを分かち合う写真が、電子競馬新聞のトップを飾っています。
5回のデットーリ優勝は、珍しいことに全て異なる調教師の馬を御してのもの。彼が如何に様々な調教師から信頼されているかの証でもありましょう。それも書き出しておくと、
1995年 クラシック・クリシェ Classic Cliche (サイード・ビン・スロール)
1996年 シャントゥー Shantou (ジョン・ゴスデン)
2005年 スコーピオン Scorpion (エイダン・オブライエン)
2006年 シックスティーズ・アイコン Sixties Icon (ジェレミー・ノセダ)
2008年 コンデュイ Conduit (サー・マイケル・スタウト)
デットーリ騎手、今回も観衆の大声援に応えて、得意のフライング・ディスマウントを披露しました。
さてドンカスターの最終日の他の結果を簡単に。
シャンペン・ステークス(GⅡ、2歳、7ハロン)は7頭立て。13対8の圧倒的支持を集めたザシント Zacinto が勝ったと思った瞬間、ムルタ騎乗のウェストファリア Westphalia が追い込んで首差、勝を攫いました。3着は1馬身差でプレイフェロウ Playfellow 。
ウェストファリアはオブライエン厩舎の馬で、前走フューチュリティーはアラザンの7着、馬場が敗因の由。この勝利で来年の2000ギニーに25対1のオッズが出ました。
オブライエン厩舎は、来年の2000ギニーでは既にマスタークラフツマンとリップ・ヴァン・ウィンクルという候補を輩出していますから、ウェストファリアは厩舎にとって3番手の馬でしょう。次はブリーダーズ・カップへの遠征が目標とか。
レースそのものも馬場が重いことが意識され、ペースが遅く、終わりだけのスプリントになってしまいました。結果をそのまま受け入れるのは難しいかもしれません。惜敗のザシントはまだこれが2戦目、次はデューハースト・ステークスで巻き返しを図ります。
パーク・ステークス(GⅡ、3歳上、7ハロン)は9頭立て。ややレヴェルの落ちるメンバーです。勝ったのはノセダ厩舎、ムルタ騎乗のアラビアン・グリーム Arabian Gleam 。9対1と人気を落としていました。
2着は1番人気のメジャー・カドー Major Cadeaux が半馬身差で、更に1馬身半の3着はアル・カジ Al Qasi 。
アラビアン・グリームは去年もこのレースに勝っていますからダブル。騎乗したムルタも去年と同じコンビですし、シャンペン・ステークスと合わせてドンカスター・ダブル達成です。セントレジャーこそ本命馬で負けましたが、しっかり帳尻を合わせたのはさすが。
さて、この日はヘイドック競馬場から代替になったスプリント・カップ(GⅠ、3歳上、6ハロン)も行われています。スポンサーもラッドブロークスに変更。
勝ったのは、代替となったために急遽フランスから参戦してきたアフリカン・ローズ African Rose 。最後はややバテたようですが、首差でアサーティヴの追い込みを抑え、7対2の1番人気に応えました。
3着は半馬身でアットモースト・リスペクト Utmost Respect 。
このレースはスタートでアクシデントがありました。人気の1頭エキアーノが、ゲートをこじ開けて飛び出してしまったのです。検査の結果、発走除外。ペリエ騎手もチャーリー・ヒルズ調教助手(調教師バリー・ヒルズの息子さん)も、この処置には大いに不満とか。
勝ったアフリカン・ローズはステファン・パスキエの騎乗、調教師はクリケット・ヘッド=マーレク Criquette Head-Maarek さん。マルシャン・ドールやタマヤズでご存知のフレッディー・ヘッド師のお姉さんですね。
モーリス・ド・ギースト賞では、そのマルシャン・ドールに及びませんでしたが、マダム・ヘッドにとって久し振りのイギリス遠征、弟の快挙に続く英断でした。
もう一つ書かなきゃいけませんね。そう、アイルランドはカラー競馬場で行われたアイリッシュ・セントレジャー(GⅠ、3歳上、1マイル6ハロン)。当初はオブライエン対決、イェーツ対セプティマスが話題でしたが、結局イェーツは回避。イェーツはフランスのカドラン賞を目指すことになったようです。
最終的には9頭立て。こうなればセプティマス Septimus の独壇場で、1対3の圧倒的本命。イギリス遠征のピンチヒッター、へファーナン騎手も楽勝。2着に何と13馬身差を付けるブッチギリ。もちろん馬なりですよ。
その2着もオブライエン軍団のニュー・ジーランド New Zealand 、3着は短頭差でレッド・モロニー Red Moloney でした。
これでオブライエン厩舎の今年のGⅠ勝は19勝目となります。また今年のアイルランド・クラシックに全勝したことになり、これは73年振りの大記録。1935年にジャック・ロジャーズ Jack Rogers という方が達成して以来のことだそうです。
これが初GⅠ制覇となったセプティマス、次は凱旋門賞かメルボルン・カップを予定していますが、凱旋門はデューク・オブ・マーマレイドとソルジャー・オブ・フォーチュンがいますから、メルボルン遠征の方が可能性が高いでしょうか。いずれにしてもまだ先のこと。馬場状態なども考慮に入れ、近々には最終目標が発表されるでしょう。
今日のマスコミ対応は、イギリス遠征中のエイダンに替わって夫人のアンヌ=マリーさん。

 

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