シャンティー・トライアル・シリーズ1
フランスの秋競馬と言えば、10月第1週の凱旋門賞。その土日は日本馬も参戦する凱旋門賞だけではなく、多くのGⅠ戦とGⅡ戦が並ぶ一種のお祭りで、競走馬各部門の頂点レースが目白押しです。
その祭典を丁度1か月後に控えた9月の第1週と第2週は夫々のチャンピオン戦へのトライアルが並び、昨日9月3日シャンティー競馬場でも4鞍のG戦が組まれていました。馬場は秋らしく soft 、4鞍をレース順に見て行きましょう。
最初のダレンベルク賞 Prix d’Arenberg (GⅢ、2歳、1000メートル)は、この日行われた2歳戦3鞍のうち最初のもの。来年のクラシックというより将来の名スプリンターを探す一戦で、中にはアベイ・ド・ロンシャン賞に向かう若駒が出るかもしれません。
7頭が出走し、既に3勝を記録しているゴドルフィンのサウンド・アンド・サイレンス Sound And Silence が4対5の断然1番人気。前々走ジュライ・ステークス(GⅡ)では11着大敗でしたが、ロイヤル・アスコットと先週のヨークでリステッド戦を制しています。
先ず5番人気(91対10)のオーヴァー・リアクテッド Over Reacted が逃げましたが、2ハロン地点から先頭を奪った6番人気(109対10)のリミニ Rimini が、2番手を追走した本命サウンド・アンド・サイレンスに半馬身差を付けての逃げ切り勝ち。そのまま粘ったオーヴァー・リアクテッドが頭差の3着でした。
クリストフ・フェランド厩舎、ジュリアン・オージュ騎乗のリミニは、ボルドーの1200メートルでデビュー勝ちし、ヴィシーの1000メートル・リステッド戦で2着。前走ドーヴィルのリステッド戦(1000メートル)ではスタートで危うく落馬しそうになるアクシデントに加えて落鉄、他馬との接触も響いて競馬にならず10頭立て最下位に終わっていました。今回の勝利で、前走の不名誉を一掃した形です。
続いて行われたパン賞 Prix du Pin (GⅢ、3歳上、1400メートル)は、一月後のフォレ賞(GⅠ)へのステップ・レース。1頭が取り消して8頭立てとなり、3歳馬で今年の仏2000ギニーにも参戦(7着)したアフリカン・ライド African Ride が13対5の1番人気。前走ポルト・マイヨー賞(GⅢ)2着で距離適性が買われています。
スタートで6番人気(115対10)のエンパイア・オブ・ザ・スター Empire Of The Star が飛び出しましたが、100メートル進んだ地点で3番人気(48対10)のカラール Karar がハナを奪うと、一旦控えて再び盛り返したエンパイア・オブ・ザ・スターに1馬身半差を付けて見事に逃げ切りました。後方から追い込んだ4番人気(5対1)のダム・デュ・ロワ Dame Du Roi が1馬身差の3着に入り、人気のアフリカン・ライドは後方のまま6着に終わっています。
勝ったカラールは、今期初勝利。フランシス=アンリ・グラファール厩舎、グレゴリー・ブノワ騎乗の5歳せん馬で、去年のフォレ賞は2着でした。そのあとBCターフ・スプリントに遠征しましたが14着最下位と利あらず、今期2戦目パレ・ロワイアル賞(GⅢ)3着のあと去勢手術を受け、術後初戦のリステッド戦(クレールフォンテンの1400メートル)で2着していました。
この勝利で弾みを付け、次走は間違いなくフォレ賞で去年より一つ上の表彰台を目指します。
この日三つ目、2歳戦としては二つ目のG戦となるシェーヌ賞 Prix des Chenes (GⅢ、2歳牡せん、1600メートル)は5頭立て。言うまでもなくジャン=リュック・ラガルデール賞(GⅠ)の前哨戦でもあります。8月8日にドーヴィルで新馬勝ちしたオルメド Olmedo が3対5の1番人気。1戦1勝、メンバー中只1頭無敗馬と言う評価でしょうか。
しかし勝ったのは2番人気(14対5)のステージ・マジック Stage Magic 、スタートから主導権を奪い、4番手追走から追い上げるオルメドを短頭差抑える逃げ切り勝ちでした。2番手を進んでいた最低人気(113対10)のジジーヴァ Zyzzyva が首差の3着に入り、この3頭は大接戦。レースのレヴェルには疑問符が付く内容と言わざるを得ません。
これで4戦2勝としたステージ・マジックは、ゴドルフィンの所有馬でチャーリー・アップルビー厩舎、ジェームス・ドイル騎乗。ヘイドックの7ハロンでデビューして2着、次のニューバリー7ハロンで初勝利を挙げ、前走ドーヴィルに遠征した1600メートルのリステッド戦は2着でした。前走は馬場が乾き過ぎたのが敗因とのことで、馬場の渋った今回のレースが彼本来の実力と言う評価です。
次はジャン=リュック・ラガルデール賞と行きたいところですが、今年ゴドルフィンの2歳馬は前日のソラリオ・ステークス(GⅢ)を1番人気で制したマサール Masar を始め、持ち駒豊富。必ずしもステージ・マジックの次走が来週のシャンティーということにはならないようです。
昨日の最後は、オマール賞 Prix d’Aumale (GⅢ、2歳牝、1600メートル)。2歳牝馬チャンピオン決定戦のマルセル・ブーサック賞(GⅠ)と同じ距離で、それを目指す5頭が出走し、8月8日にドーヴィルで別の新馬戦を楽勝したエファーダー Efaadah が9対10の1番人気。メンバー中2頭の無敗馬の1頭です。
4番人気(8対1)のチポラータ Chipolata が逃げ、エファーダーは最後方から。3番手を進んでいた唯一の未勝利馬で最低人気(98対10)のスーストラクション Soustraction が逃げ馬を捉えると、懸命に追い込む本命エファーダーを1馬身差抑えるサプライズ。4番手で待機していた2番人気(7対2)のワイルド・イリュージョン Wild Illusion が頭差の3着に入りました。
勝ったスーストラクションはクリストフ・ラッフォン=パリアス厩舎、マクシム・グィヨン騎乗で、前走はエファーダーが制した新馬戦で3馬身差の2着に入っていた馬。これが2戦目、いきなりG戦での初勝利ですが、100メートル伸びた距離と、重馬場でのスタミナが逆転に繋がったのでしょう。
パリアス師も未勝利馬でG戦に勝ったのは初めてとのことで、出走してきたこと自体が自信の表れだったと思われます。次は文句なくマルセル・ブーサック宣言も出されました。
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