嵐のキーンランド

10月8日、日曜日のアメリカ競馬もBC1か月前とあって、GⅠ戦3鞍、BCトライアル4鞍の集中開催。記事のタイトルもそうしようと思っていましたが、キーンランドは嵐のために一部条件が変わってしまいました。3つの競馬場から合計5鞍のG戦をレポートしていきましょう。

先ずベルモント・パーク競馬場のG戦は2鞍でしたが、共にGⅠ戦、何れも勝馬にはBCへの優先出走権が与えられるレースで、先に行われたフリゼット・ステークス Frizette S (GⅠ、2歳牝、8ハロン)は good の馬場に10頭立て。前走スピナウェイ・ステークス(GⅢ)で1番人気に推されながら3着に敗れたセパレーションオブパワーズ Separationofpowers が9対5の1番人気。
6番人気(10対1)のストラテジック・ドリームズ Strategic Dreams が逃げ、これを3番手で追走した本命馬が第4コーナーで外から捉えると、4番手から追い縋る5番人気(8対1)のカレドニア・ロード Caledonia Road に3馬身半差を付けて見事人気に応えました。5番手を進んだ3番人気(4対1)のマヤ・マリブー Maya Malibu が8馬身4分の1差で3着。
チャド・ブラウン厩舎、ホセ・オルティス騎乗のセパレーションオブパワーズは、7月30日にサラトガで6ハロンのデビュー戦を2着以下に11馬身差を付けて圧勝。続くスピナウェイでも人気になりましたが、ハナ争いに巻き込まれて失速し、期待を裏切っていました。ここは馬が大人になった分能力を発揮してのGⅠ戦初制覇。問題なくBCジュヴェナイル・フィリーズに向かいます。

続いてはフラワー・ボウル・ステークス Flower Bowl S (芝GⅠ、3歳上牝、10ハロン)。firm の馬場に6頭が出走し、前走ビヴァリー・D・ステークス(芝GⅠ)で2着したフランス出身のグラン・ジュテ Grand Jete がイーヴンの1番人気。
そのグラン・ジュテがスタートから先頭争いを演じての逃げ。これを3番手で追走していた4番人気(9対1)のウォー・フラッグ War Flag が第4コーナーで前3頭を外から交わすと、5番手から大外を猛然と追い込む3番人気(4対1)ダシータ Dacita を頭差抑えて優勝。粘ったグラン・ジュテは1馬身差の3着でした。
クロード・マゴーヒー厩舎、フリゼットに続いてGⅠ戦ダブルとなったホセ・オルティス騎乗のウォー・フラッグは、去年までフランスでジャン=クロード・ルジェ師が管理していた4歳馬。3歳の最終戦は7月のクロエ賞(GⅢ)優勝で、その後アメリカに転じて7か月休養し、今期初戦のモンマスでアローワンス戦に勝ってアメリカ初勝利。そのあとマッチメーカー・ステークス(芝GⅢ)2着、グレン・フォールズ・ステークス(芝GⅢ)3着と続き、今回がアメリカG戦初勝利と共にGⅠ戦も初制覇となりました。

さて冒頭でも触れたキーンランド競馬場は嵐に見舞われ、最初のバーボン・ステークス Bourbon S (芝GⅢ、2歳、8.5ハロン)は予定されていた芝からダートに変更。この時点で自動的にG戦からは外れましたが、アメリカ・グレード戦委員会の発表では、改めてGⅢに格付けされるとのこと。本来は勝馬にBCジュヴェナイル・ターフの出走権が与えられることになっていましたが、ダートに変更後もこの規定はそのまま活かされる由。結局、sloppy のダート・コースに1頭が取り消して14頭立てで行われました。前走2戦目で初勝利を挙げたばかりのタイガーズ・ルール Tigers Rule が7対2の1番人気。
レースはスタートから激しい先頭争いとなり、タイガーズ・ルールも一旦は先頭に立つ展開。最後まで競り合いが続き、ゴールでは本命馬と2番手で争った7番人気(13対1)のタップ・ダディー Tap Daddy 、3番手で追った3番人気(5対1)のフレームアウェイ Flameaway の3頭が並び、外のフレームアウェイがハナ差で先着。内のタイガーズ・ルールが2番手、中を通ったタップ・ダディーがやはりハナ差の3番手で入線しましたが、審議の結果タイガーズ・ルールが外に膨れてタップ・ダディーの進路が狭くなったと判定され、2・3着は入れ替わりました。
マーク・カッセ厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のフレームアウェイは、カナダのウッドバイン競馬場でデビュー勝ちし、サラトガの一般ステークス(同じく泥んこ馬場で行われたスキッドモア・ステークス)に連勝。前走チャーチル・ダウンズのイロコイ・ステークス(GⅢ)では6着と敗れましたが、これで4戦3勝とし、BCへの権利を得ました。BCが芝初体験となりますが、ヨーロッパの精鋭たちと手合わせすることになりそうです。

キーンランドのもう一鞍スピンスター・ステークス Spinster S (GⅠ、3歳上牝、9ハロン)は、最初からダートコースで、GⅠ戦、BCディスタッフの対象であることに変わりはありません。それでも sloppy の馬場を嫌って4頭が取り消しての9頭立て、前走プレスク・アイル・ダウンズ・マスターズ(GⅡ)で2着したバー・オブ・ゴールド Bar Of Gold が9対5の1番人気。
レースは8番人気(53対1)の伏兵ダッチェス・オブ・デューク Duchess of Duke の逃げで始まり、これを2番手でマークしていた4番人気(6対1)のロマンティック・ヴィジョン Romantic Vision が第3コーナーと第4コーナーの中間点で捉えると、4番手から追い込む3番人気(5対1)のマルティーニ・グラス Martini Glass に2馬身差を付けて優勝。7番手から伸びた6番人気(10対1)のブルー・プライズ Blue Prize が5馬身半差で3着に入り、人気のバー・オブ・ゴールドは6番手のまま6着敗退に終わりました。
ジョージ・アーノルド厩舎、ブライアン・ジョセフ・ヘルナンデス騎乗のロマンティック・ヴィジョンは、前走ローカスト・グローヴ・ステークス(GⅢ)に続くG戦2連勝となる5歳馬。ここで負ければ、11月のチャーチル・ダウンズデG戦を一叩きしたあと繁殖入りする予定でしたが、ここに来てのGⅠ戦初制覇で、しかもBCディスタッフの優先出走権獲得。予定通りあと一叩きで引退するか、思い切ってBCに挑むか、陣営にとっては悩ましい日々が続くことになりそうです。

日曜日の最後はサンタ・アニタ競馬場、BCの対象ではないエル・エー・ウーマン・ステークス L.A.Woman S (GⅢ、3歳上牝、6.5ハロン)。1頭が取り消して6頭立てとなりましたが、3月に腱を負傷して休養していたユニーク・ベラ Unique Bella が復帰するとあって1対5の断然1番人気。
休養明けのためかスタートで出遅れた大本命でしたが、2番人気(9対2)プリンセス・カレン Princess Karen の逃げを3番手で追走し、第4コーナーで逃げ馬を外からアッサリ交わすと、そのまま3馬身半差を付けて堂々の横綱相撲。4番手を進んだ5番人気(34対1)のカッドル・アラート Cuddle Alert が4分の3馬身差で3着に入りました。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、マイク・スミス騎乗のユニーク・ベラは、これで2戦目から休養を挟んで5連勝。G戦も1月のサンタ・イネズ(GⅡ)、2月ラス・ヴァージェネス(GⅡ)、そして3月のサンタ・イザベル(GⅢ)に続いて4連勝としました。ここでBCへの優先出走権を得ずとも、次のBCフィリー・アンド・メア・スプリントでは有力候補の1頭に選ばれることは間違いなし。ここを叩き台に頂点に立つか。

 

 

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