ハスケルはエクサジェレイターに軍配

7月最後の日曜日、アメリカ競馬はいつものようにサラトガとデル・マーでG戦が行われましたが、この日ばかりはどちらも脇役に回っていました。モンマス・パークが一日5鞍のG戦デイ、しかも最後のGⅠ戦ハスケルではケンタッキー・ダービー馬とプリークネス馬の再対決が見られたのですから、注目はニュージャージー州に集まっていたワケです。
ということで今レポート、ニューヨークとカリフォルニアを先に片付け、最後にハスケルで締めることにしましょう。

先ずサラトガ競馬場のシュヴィー・ハンデキャップ Shuvee H (GⅢ、3歳上牝、9ハロン)から。雨のため馬場は sloppy 。4頭立てのレースで、レース前から2頭のマッチレースと見られていました。即ち1番枠のカランバ Carrumba と3番枠のカーラライナ Curralina 、2頭が共に4対5のオッズで並んでいましたが、負担重量が5ポンド重いカーラライナが僅かに1番人気。
レースも単純明快、逃げたカランバをピタリ2番手でマークしたカーラライナが第4コーナー手前で外から並び掛け、直線ではライヴァルを突き放し、最後は9馬身4分の1の大差を付けて圧勝しました。3馬身4分の3差で最後方を選んだ3番人気(7対1)のスイートグラス Sweetgrass が3着。
トッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のカーラライナは、去年のエイコーン・ステークスとCCAオークスの勝馬で、4歳の今年もラ・トロワイエンヌ・ステークスを制して既にGⅠ戦に3勝している馬。前走オグデン・フィップス・ステークス(GⅠ)では4着に敗れ、これが生涯で4着以下に落ちた初体験でした。この時の3着がカランバで、人気が拮抗していたのはそのためです。

時系列的にはモンマスよりデル・マー競馬場のビング・クロスビー・ステークス Bing Crosby S (GⅠ、3歳上、6ハロン)が前に行われましたが、こちらを先に取り上げちゃいましょう。勝馬にはBCスプリントへの優先出走権が与えられる夏場の短距離戦。fast の馬場に1頭が取り消して8頭立て。前走サンタ・アニタでトリプル・ベンド・ステークスでGⅠ初制覇を達成したロード・ネルソン Lord Nelson がイーヴンの1番人気、GⅠ戦2連勝を狙います。
好スタートから2番人気(5対2)のサトル・インディアン Sutle Indian 、3番人気(7対1)フスティン・スクェア―ド Justin Squared の逃げ争いに譲って3番手に付けたロード・ネルソン、第4コーナーで外から先行2頭を捉えると、直線では一人旅の強さを見せつけ、4番手から追い上げる最低人気(40対1)のインデクシカル Indexical に4馬身の大差を付けて堂々GⅠ戦2連勝を達成ました。3馬身4分の1差で、5番手を追走していた並んだ3番人気(7対1)のアルスヴィッド Alsvid が3着。勝時計1分7秒65は、1962年以来破られていなかったステークス・レコード更新と言うオマケ付です。
ボブ・バファート厩舎、フラヴィアン・プラット騎乗のロード・ネルソンは、今期6月にサンタ・アニタのアローワンス戦から始動し、3戦3勝となる4歳牡馬。去年はサン・ヴィセンテ・ステークス(GⅡ、7ハロン)に勝っており、もちろん目指すは最強古馬スプリンターの座でしょう。

最後にモンマス・パーク競馬場の5鞍をレース順に。最初は第8レースとして行われたモンマス・カップ・ステークス Monmouth Cup S (GⅡ、3歳上、8.5ハロン)。こちらもニューヨーク同様雨のために馬場は sloppy 。6頭が出走し、去年の勝馬でメンバー中唯一のGⅠ馬でもあるブラデスター Bradester が3対5の圧倒的1番人気。
これまでモンマスでは6戦3勝2着3回と得意にしているブラデスター、泥んこ馬場での対応は未知数ですが、果敢に先頭に立って逃げ切りを策します。最初の内は競り掛ける馬もいましたが、後半は楽な一人旅に持ち込んだ本命馬、5番手から追い込む3番人気(7対1)のスクーバ Scuba に2馬身半差を付ける逃げ切り勝ちでした。5馬身4分の1差で2番手を追走していた4番人気(8対1)のミスター・ジョーダン Mr. Jordan が3着。
エディー・ケナリー厩舎、ジョー・ブラーヴォ騎乗のブラデスターは、このレース2連覇。今期は5月に同じモンマスで一般ステークス(マジェスティック・ライト・ステークス)に勝って始動し、前走スティーヴン・フォスター・ハンデでGⅠ初制覇。これで今シーズンは3戦3勝と絶好調で、モンマス競馬場での成績も7戦4勝としています。

次は第9レースの オーシャンポート・ステークス Oceanport S (芝GⅢ、3歳上、8.5ハロン)。朝から午後まで降り続いた雨で芝コースは yielding 。8頭が出走し、前走ベルモントの芝アローワンス戦で強い勝ち方をしたブラックタイプ Blacktype が5対2の1番人気。
レースは最低人気(19対1)のノンナズ・ボーイ Nonna’s Boy の逃げ。4番手に付けていた5番人気(7対1)のカラーファ Kharafa が抜け出して先頭に立ったところ、中団で待機していたブラックタイプが外から追い上げ、ゴール直前でカラーファを首差差し切って人気に応えました。1馬身半差で4番人気(5対1)のウォー・ダンサー War Dancer が3着。
クリストフ・クレメント厩舎、前のレースに続いてジョー・ブラーヴォが騎乗したブラックタイプは、フランスのタペタ・コースで2勝し、2014年にアメリカに転じた5歳せん馬。アメリカではニューヨークの芝コースで既に3勝し、GⅢ戦に2度出走して何れも5着でした。これがステークス初勝利。

第10レースはモーリー・ピッチャー・ステークス Molly Pitcher S (GⅢ、3歳上牝、8.5ハロン)。去年は7月初旬に繰上げされていましたが、今年はいつもの時期に戻っての開催。去年からGⅢに降格された牝馬戦です。1頭が取り消して5頭立ての少頭数となり、前走プレーリー・メドウズの一般ステークス(アイオワ・ディスタッフ・ステークス)で2着している快速馬スーパー・マジェスティー Super Majesty が9対5の1番人気。
そのスーパー・マジェスティーが逃げましたが、泥んこ馬場に足を取られたのかズルズル後退。替って2番手を進んでいた3番人気(5対2)のジャンル Genre が先頭に立ち、3番手に付けた同じ3番人気のエスケンフォーマネー Eskenformoney との一騎打ち。この2頭、共にトッド・プレッチャー厩舎の馬でしたが、最後は内のジャンルが首差で僚馬を抑えて優勝。プレッチャー師のワン・ツー・フィニッシュです。3馬身差の3着は4番手から伸びたGⅠ馬で2番人気(2対1)のバードアットザワイアー Birdatthewire で、人気のスーパー・マジェスティーは5着最下位に終わりました。
パコ・ロペスが騎乗したジャンルは、6月にデラウエアの一般ステークス(オベアー・ハンデ)で2着、続く7月4日モンマスの一般ステークス(レディーズ・シークレット・ステークス)でも2着に入り、このGⅢ戦でステークス初勝利となりました。

ハスケル・インヴィテーショナルの前に行われたマッチメーカー・ステークス Matchmaker S (芝GⅢ、3歳上牝、9ハロン)は3頭が取り消して9頭立て。去年のベルモント・オークス・インヴィテーショナル(GⅠ)で2着と言う実績のあるイッツオンリーアクティングダッド Itsonlyactingdad が5対2の1番人気。
9番人気(33対1)のミーンズ・ウェル Means Well が逃げましたが、結果は人気のイッツオンリーアクティングダッドが追い込み、3番人気(4対1)のタミー・ザ・トルペード Tammy the Torpedo に1馬身4部の1差を付けて優勝。更に3馬身4分の3差で6番人気(10対1)のウチェンナ Uchenna が3着に入っています。先行馬総潰れの競馬。
これまたトッド・プレッチャー厩舎、ジョー・ブラーヴォ(この日3つ目のG戦)騎乗の5つオンリーアクティングダッドは、これがステークス初勝利。今期はガルフストリームの芝コースでアローワンス戦に勝ち、キーンランドのジェニー・ワイリー・ステークス(GⅠ)に挑んだものの9頭立ての8着。前走ベルモントの芝コース・アローワンス戦で2着し、ここに臨んでいました。通算成績は9戦4勝2着3回。

そして愈々ハスケル・インヴィテーショナル Haskell Invitational (GⅠ、3歳、9ハロン)。去年は3冠馬アメリカン・フェイロー American Pharoah がクラシック後最初に選び、圧勝したレース。3歳馬限定戦ながら、勝馬にはBCクラシックへの優先出走権が与えられます。今年もケンタッキー・ダービー馬ナイクィスト Nyquist 、プリークネスの覇者エクサジェレイター Exaggerator が揃って出走する豪華版の6頭立て。もちろんナイクィストがイーヴンの1番人気に支持され、エクサジェレイターが5対2の2番人気で続きます。
1番枠から飛び出したナイクィストがハナに立ち、エクサジェレイターはスタートして直ぐに下げ、内ラチ沿いにコースを取って離れた最後方から。2番手に付けていた4番人気(5対1)でアイオワ・ダービー(GⅢ)馬のアメリカン・フリーダム American Freedom が第3コーナー手前で本命馬を交わして先頭に立ちましたが、ナイクィストは再び内から盛り返して先頭で直線。再度アメリカン・フリーダムが外からナイクィストを捉えた所に、後方から一気に捲って進出したエクサジェレイターが内に切れ込みながら追い込み、並ぶ間も無くアメリカン・フリーダムに1馬身半差を付けて鮮やかに差し切りました。2馬身差で後方2番手から連れて追い込んだ5番人気(31対1)のサニー・リッジ Sunny Ridge が3着に食い込み、ナイクィストは4着敗退。
最後の追い込みでエクサジェレイターが内に切れ込んだ際、2着したアメリカン・フリーダムの進路を妨害したという理由でラファエル・ベハラノ騎手がケント・デサーモ騎手に対して異議申し立て。審議の結果、入線通りで確定しましたが、折角のGⅠ戦でやや後味の悪い結果になってしまいました。
騎手と兄弟のキース・デサーモ師が管理するエクサジェレイターは、ベルモント・ステークス11着からの巻き返しで、GⅠ勝ちはサンタ・アニタ・ダービー、プリークネスに続いて三つ目。プリークネスも今回と同じ sloppy の馬場で勝っており、このタイプのコースを得意にしているのかもしれません。ダービー馬ナイクィストはプリークネス3着以来の競馬で、エクサジェレイターには2連敗。しかし2歳時からライヴァルとは3回対戦して何れも勝っていたのですから、これで優劣が決したわけではないでしょう。次の舞台はサラトガ、真夏のダービーと異名をとるトラヴァース・ステークスになりそうです。土曜日にはベルモントの覇者クリエイター Creator も惨敗しており、未だ今年のクラシック世代の順位は定まったとは言えません。

 

 

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