GⅠ戦24勝はお預け

本来なら昨日のブログで書くべき英国競馬レポート、この週末は所用で京都に出掛けたため、1日遅れの更新になってしまいました。10月13日と14かの2日間、事実上今年最後の開催となるニューマーケットのセザレウィッチ開催です。
この開催で行われるG戦は合計7鞍。そのうち2鞍が2歳馬によるGⅠ戦で、アメリカの故ロバート・フランケル(通称ボビー・フランケル、名馬フランケル Frankel の馬名の由来ともなった)調教師が打ち立てた1シーズンGⅠ戦25勝という大記録にあと2勝と迫ったエイダン・オブライエン師が何処まで記録を伸ばすか、という興味も大きな話題になっていました。

ということで金曜日のニューマーケット競馬場、G戦は4鞍で、レース順に取り上げていきましょう。この日の馬場は good 、先ず第1レースとして行われたコーンウォリス・ステークス Cornwallis S (GⅢ、2歳、5ハロン)は2歳の短距離戦で、12頭立てと多頭数。シーズン大詰めのG戦とあってどれも出走馬が多く、ニューマーケット恒例の内外二手に分かれるレースが目立ちました。前走フランスに遠征してエクリプス賞(GⅢ)を制したゴドルフィンのサウンド・アンド・サイレンス Sound And Silence が5対2の1番人気。今期既に4勝している快速馬です。
スタートで先頭に立ったのは2番人気(9対2)のエイベル・ハンディー Abel Handy でしたが、これをマークした本命サウンド・アンド・サイレンスが1ハロン進んだ地点でこれを交わして先頭。そのまま押し切るかに見えましたが、一旦2番手に控えたエイベル・ハンディーが最後の1ハロンで差し返し、ゴールでは本命馬を首差捉える逆転劇でした。中団から伸びた5番人気(8対1)のモカーティル Mokaatil が半馬身差の3着。

デクラン・キャロル厩舎、ジェームス・ドイル騎乗のエイベル・ハンディーは、6月にノッティンガムでデビュー勝ちし、ヨークで2着、サークスで2勝目と続き、前走ヨークのリステッド戦(ジュリア・グレイヴス・ステークス)ではサウンド・アンド・サイレンスに半馬身差の2着と既に一戦を交えていました。サウンド・アンド・サイレンスがその後フランスに遠征してG戦で2・1着となったの対し、こちらはここまで待っての再対決。本命馬がGⅢを勝ったことにより3ポンドのペナルティーを背負っていたことも逆転の要因だったのでしょう。今期はこれで終戦、冬場は休んで来期のスケジュールを立てるとのことでした。

第2レースのオー・ソー・シャープ・ステークス Oh So Sharp S (GⅢ、2歳牝、7ハロン)も14頭の多頭数。混戦の中から2対1の1番人気に支持されたのは、やはりオブライエン/ムーアのコンビ、前走ダンダルクのデビュー戦を4馬身差で圧勝したばかりのアイ・キャン・フライ I Can Fly でした。
このレースはスタンド側と馬場中央の二手に分かれる典型的なパターンで、スタンド側を逃げた3番人気(11対2)のダーク・ローズ・エンジェル Dark Rose Angel を追走していた9番人気(25対1)の伏兵アルティン・オルダ Altyn Olda が抜け出し、馬場の中央を先行した2番人気(7対2)ガヴォタ Gavota との叩き合いを首差制して優勝。人気のアイ・キャン・フライも馬場の中央を後方から追い込みましたが、1馬身届かず3着に終わっています。

勝ったアルティン・オルダ、実はスタート直前に騎手を振り落として逸走するアクシデントがありましたが、幸い直ぐに制せられてレースに参加できたもの。ロジャー・ヴァリアン厩舎、アンドレア・アッゼニ騎乗の同馬、アッゼニによれば、スタート地点に向かってキャンターしているときにカメラを構えた人影に驚いて騎手を振り落としたそうな。ヴァリアン師もそのままレースに向かうか迷ったそうですが、放馬の影響はなかったということで一安心でしょう。
8月と9月、2度ニューマーケットで走りましたが何れも2着。未勝利のまま挑戦したG戦で初勝利となりました。彼女もこれがシーズン終戦となるようで、来年はトライアルを叩くか、1000ギニーに直行するか、これも冬場の思案となりそうです。

G戦は続き、第3レースはチャレンジ・ステークス Challenge S (GⅡ、3歳上、7ハロン)。ここは11頭立てとなり、今期は未勝利ながら去年のジュライ・カップ、フォレ賞とGⅠ戦を2勝している5歳馬のリマート Limato が6対4の1番人気。
ここも内外二手に分かれる展開となり、スタンド側は2番人気(11対2)のマサート Massaat が、馬場中央は5番人気(9対1)のギフテッド・マスター Gifted Master が逃げます。5ハロン地点で4番人気(15対2)のダッチ・コネクション Dutch Connection が競争を中止するというアクシデントがありましたが、終始スタンド側の中団を進んだ本命リマートが最後の1ハロンで抜け出すと、そのままマサートに3馬身半差を付けて堂々人気に応えました。馬場の中央を先行していた最低人気(66対1)の古豪ゴードン・ロード・バイロン Gordon Lord Byron が1馬身半差、グループの先頭を3着で入線しています。

ヘンリー・キャンディー厩舎、ハリー・ベントリー騎乗のリマートは、今期初戦が3月ドバイのアル・クォーツ・スプリントで12頭立て10着の惨敗。英国に戻ってロイヤル・アスコットのゴールデン・ジュビリーで3着、前年勝ったジュライ・カップは2着とGⅠ戦で入着したものの、前走格を下げたグッドウッドのレノックス・ステークス(GⅡ)でも4着と勝てずに来ました。去年10月シャンティーのフォレ賞以来となるほぼ1年振りの復活劇でした。
この馬にとってはこれが終戦ではなく、来週のアスコットで行われるチャンピオン・スプリントで再度GⅠ獲りに挑み、そのオッズはレース前の12対1から8対1に上がっています。更には来年のゴールデン・ジュビリーにも10対1のオッズが出されました。

そして金曜日の最後は、GⅠ戦のフィリーズ・マイル Fillies’ Mile (GⅠ、2歳牝、1マイル)。今期24勝目のGⅠを目指すオブライエン厩舎は3頭を登録していましたが、前走凱旋門賞当日のジャン=リュック・ラガルデール賞で牡馬を蹴散らして優勝したハッピリー Happily を取り消し。最終的には11頭が出走し、ハッピリーを予定していたライアン・ムーアが乗り替わったマジカル Magical が15対8の1番人気に支持されていました。
逃げたのは4番人気(8対1)のナイアレティ Nyaleti でしたが、1ハロン進んだ地点で6番人気(10対1)のローレンス Laurens が替わって先頭、最後の1ハロンでもリードを取って逃げ切りを図ります。そこに中団から猛然と追い込んできたのが2番人気(9対2)でオブライエン厩舎の2番手セプテンバー September 。2頭が鼻面を揃えてゴールインし、写真判定となりましたが、結果はハナ差でローレンスの逃げ切り勝ち。オブライエン師のGⅠ戦24勝目はお預けとなりました。中団を進んだ4番人気(8対1)のマジック・リリー Magic Lily が4分の3馬身差で3着に入り、本命マジカルは中団から伸び掛かりましたが3馬身差の4着に終わっています。

カール・バーク厩舎、ピージェイ・マクドナルド騎乗のローレンスは、前走ドンカスターでメイ・ヒル・ステークス(GⅡ)を制しており、G戦2連勝でGⅠ戦タイトルを獲得。騎乗したマクドナルド P J McDonald は、スコティッシュ・グランド・ナショナルを制したこともある元障害レースのジョッキーで、今年35歳になるヴェテラン。平場に転向し、これがGⅠ戦は初制覇となりました。
レース前は25対1だったローレンスの1000ギニーのオッズは、この勝利で16対1に上がっています。またディープインパクト産駒ということで日本でも注目されているセプテンバー、距離が伸びたこのGⅠ戦で末脚を活かしたことから、オークスのオッズは20対1から12対1に上昇。来年のダービーはサクソン・ウォリアー Saxon Warrior 、オークスはセプテンバーと、オブライエン/ムーア/ディープ産駒によるダブル達成という初夢が見られるかもしれません。

 

 

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