読売日響・第475回定期演奏会

昨日、サントリーホールで行われた読響定期。
《下野プロデュース・ヒンデミット・プログラムⅡ》
ヒンデミット/シンフォニア・セレーナ
     ~休憩~
ヒンデミット/前庭に最後のライラックが咲いたとき
 指揮/下野竜也
 メゾ・ソプラノ/重松みか
 バリトン/三原剛
 合唱/新国立劇場合唱団(合唱指揮/田中信昭)
 コンサートマスター/藤原浜雄
 フォアシュピーラー/鈴木理恵子
他に、シンフォニア・セレーナの第3楽章に登場するヴァイオリンとヴィオラのソロ、夫々舞台上ではコンサートマスターと生沼晴嗣、舞台裏左にデヴィッド・ノーランと舞台裏右が鈴木康浩という布陣。要するに読響オールキャストという豪華版でした。ヴィオラの鈴木は、後半のレクイエムにも参加します。
下野が執念を燃やしているヒンデミット作品集、去年の第1回はヒンデミットの他にシュレーカーなどが組み合わされていましたが、今回はオール・ヒンデミット。彼の正指揮者としての任期も3年延長されたそうですから、このシリーズもⅤまで続くんでしょうか。
これからどのような作品が取り上げられていくのか楽しみです。
ただ、ヒンデミットはあまり一般受けする作曲家ではありませんから、客席には空席が目立ちますね。ザッと見て7割の入りでしょう。ま、止むを得ません。しかし人気は無いけれど重要な作品を取り上げるのは演奏家の使命。これにめげず、信念を貫き通して欲しいものです。
ということで今回のプログラム、私にとっても初めてナマで接するものばかり。表面を撫でただけの感想になってしまいますが・・・。
最初のシンフォニア・セレーナ、聴きどころで予習した通りの展開。ナマで聴いてみて、やはりこれは機会作品的な要素が強い、と感じました。
第3楽章の二部に分ける弦合奏、どうするのかと見ていましたら、第1群のアルコは各パートの表側、第2群ピチカートは裏側が担当という、予想通りの処置でした。ただしコントラバスは、前面の4人がアルコ、後ろ4人がピチカート担当です。
舞台裏にノーラン、鈴木を擁するあたり、さすが読響という感じ。藤原とノーランが同じ舞台に立つという光景、かなりレアな見物・聴き物だったんじゃないでしょうか。
演奏後のカーテンコールもいつもより長く、華やいだ雰囲気すら漂います。
後半は大作レクイエム。オリジナル通り英語による歌唱です。
最近は当たり前になっている字幕スーパーを使わず、プログラムに10ページほどの対訳歌詞パンフレットが挟まれており、昔のスタイルが復活されていました。
この曲、楽器の種類は多いのですが、木管は各1本ですから比較的ステージはゆったり、合唱団も舞台奥に配置されています。
レクイエムの主役は何と言っても合唱。この日の団体はプロフェッショナルと呼んでよいのでしょうか、堂々たる合唱で作品の感銘を深めてくれました。まず彼らにブラ~ヴィ、でしょう。
そしてバリトンの三原。先月は札幌のピーター・グライムズに参加していましたから、このところ英語づいています。CDで聴いたフィッシャー=ディスカウの怪しげな英語に感じたような違和感は全く無く、この夜の感動の主役。
メゾ・ソプラノの重松。このパートはバリトンに比べれば出番も少ないのですが、海外のオペラハウスでも主役級で活躍している人、立派な歌唱を聴かせてくれました。
最終曲で凛としたフルート・ソロを聴かせてくれた倉田優、相変わらず素晴らしく音楽的なソロでした。同じくホルンのソロ、今日はいつもの首席ではなく、エキストラと思しき外国人。読響では珍しい光景でした。
下野の指揮。他に比較する材料もほとんどありませんが、かなりテンポが速く、拍子を細かく振って的確な指示を出していましたね。
使用していた楽譜は緑色の大型譜、ショットのヒンデミット全集版ですね。
(シンフォニア・セレーナはショットの黄色いポケット・スコアを使っていました。その対照が面白い)
先の名曲シリーズを振った某若手と違い、フレーズの切れ目や曲の終始をキチンと指示していくので音楽に弛みが無く、作品が引き締まってきます。要するに、指揮者として不可欠のテクニックを踏まえての棒。聴衆も安心して作品そのものに身を委ねられるのです。
これは実に大事なことで、今回のようにほとんどの人が「知らない曲」を紹介するのには欠かせない資質です。その意味でも、実に充実したヒンデミットが聴けました。
(個人的にはもう少しドッシリした表現が欲しかったのですが、今の彼にそれを求めるのは場違いでしょう)
一つ気になること。毎度のことですが、今回のプログラムも内容はかなりお粗末。シンフォニア・セレーナは良しとしても、レクイエムの解説はこれじゃ不親切でしょ。
各曲の特徴ぐらい紹介があっても良さそうなもの。
①下野がスコアの指示通りアタッカで続けた場所。
②重要なポイントである第8曲の「愛する人々のための賛歌」の弦合奏についての指摘。
(下野はここでテンポを落とし、全体のバランスに配慮した上で弦に入魂の演奏を求めました。見事の一言。)
③第10曲に登場する軍隊ラッパ。(この日はP席で吹きました。)
これらについて、プログラムには一切書かれていません。そんなことは皆、百も承知じゃ、なんてことは絶対に無いはず。
この解説者、スコアを見ていないのじゃないでしょうか。上野の文化会館資料室に行けば、申請書1枚で総譜を閲覧できます!
プログラムにあまり細かい楽曲分析を載せる(東フィルなど)のもどうかと思いますが、読響のは情報無さ過ぎ。皆、よくこれで我慢してますね。

 

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