第369回・鵠沼サロンコンサート

土曜日の横浜行に続き、日曜日も神奈川県への出張コンサートです。今年一番の冷え込み、冬晴れが眩しい鵠沼海岸に降り立ちました。冬場のサロンは午後3時からのマチネー、未だ開場時間には少し早いけれど、ファンの出足が早い鵠沼サロンコンサートです。

今回が369回目。去年の11月と12月は生憎他の演奏会や用事が重なってしまってサロンは10月以来となりましたが、新年最初はイタリアからピアノ四重奏団を招き、「ニューイヤー・コンサート2018」と銘打たれていました。
ニューイヤーとは言え、シュトラウスのワルツは一切聴こえてこないのが鵠沼。何とドイツもドイツ、極めて重~い2曲で聴き初めとは相成ります。

ブラームス/ピアノ四重奏曲第3番ハ短調作品60
     ~休憩~
シューマン/ピアノ四重奏曲変ホ長調作品47
 アヴォス・ピアノ・クァルテット Avos Piano Quartet

2007年にローマのサンタ・チェチーリア国立音楽アカデミー卒業生有志によって結成されたというアヴォス・ピアノ・クァルテット。鵠沼は2016年の1月に続く2度目の登場ですが、確か前回は京都に出掛けていた関係で、私は初めて聴くグループです。2年前も1月のニューイヤー・コンサートで、当初はそれに相応しい選曲が予定されていたようですが、鵠沼のアーカイヴを見て驚嘆、急遽モーツァルト、マーラー、ブラームス(1番)という本格的なプログラムに変更したのじゃなかったかしら。

初めてなのでメンバーの紹介から。
ピアノはマリオ・モントーレ Mario Montore 、ヴァイオリンが山田美怜(やまだ・みれい)、ヴィオラをマルコ・ニルタ Marco Nirta 、チェロがアレッシオ・ビアネッリ Alessio Pianelli という面々。日本人女性に全員髭面が特徴的な男性3人という構成で、何となく前の日に聴いたオーデンの詩「不安の時代」を連想してしまいました。でもここはニューヨークでも、もちろんローマでもなく、極東の藤沢ですがね。

ホームページも、もちろんあります。イタリア語なのでチンプンカンプンですが・・・。

http://www.avospianoquartet.com/Sito/AVOS_PIANO_QUARTET.html

パンフレットによると2009年から日本ツアーを継続しているということで、既に聴かれた方も多いでしょう。私も初めて彼らの実力に肝を潰しました。凄いは、この団体。
特にピアノの存在感は尋常ではなく、その巨体(失礼!)から繰り出される圧倒的なフォルティッシモにはただただ仰け反るばかり。それにイタリア特有の、明るく良く歌う弦楽器たち。

いつものように平井プロデューサーの簡単な楽曲解説から。
ブラームスはピアノ四重奏曲を3曲残しましたが、第3番は最後ではなく、22歳の時に書いたものの気に入らずにお蔵入りになっていた由。後に大幅に改作されたのが本作で、出版の関係から3番に。師シューマンの自殺未遂や、クララとの微妙な関係にあった時期の改訂だけに、「ウェルテル四重奏」とも呼ばれるそうです。

ピアノ四重奏曲というジャンルは余りナマで聴く機会が無く、専ら音盤で楽しんでいましたが、やはりナマ演奏は感動の度合いが違います。
第3番でとくに面白いと思ったのは、第3楽章アンダンテはチェロとピアノだけで始まり、ほとんどチェロ・ソナタ状態になること。第17小節目になってやっとヴァイオリンが加わり、ヴィオラが入ってくるのは更に10小節も先、という風変わりな風景に目が行ってしまいました。
それは第4楽章アレグロ・コンモートも同じで、冒頭の28小節はヴァイオリン・ソナタのまま推移(提示部は繰り返しました)。目の前に演奏者がいるので判るのですが、CDで音だけ聴いていたのでは気が付かないでしょう。

目から鱗のブラームス第3が終わり、全員大きくため息。いつもは15分の休憩も、今回は20分取って長めの余韻に浸りました。

後半はシューマン唯一の作品47。平井解説によると、実はもう1曲書かれたそうですが、ピアノ・パートが完成せず未完のままとのこと。よく知られている四重奏曲は室内楽の年の傑作で、さすがにこれは初めて聴く作品じゃありません。
アヴォスは最近これを録音している(ブラームス第1とのカップリング)こともあって、真に朗々と鳴り渡る名演。第2楽章スケルツォから第3楽章アンダンテ・カンタービレは余り間を置かずに一気に演奏されましたが、緩徐楽章で各パートに受け渡されていくメロディーの美しこと。初めて聴かれた方でも、このシューマンは間違いなく大傑作であることに納得されるでしょう。そんな手応え十分の熱演でした。

ピアノ四重奏曲でのアンコールというのは在りそうで無いものですが、山田ヴァイオリンが “今日はドイツ作品を演奏しましたが、我々はイタリアから来たので、最後はヴェルディを” ということで椿姫のメドレー。
もちろんオペラの名旋律を次々にピアノ四重奏版で弾いて行くのですが、このアレンジが生半可なものじゃありません。弦は思い切りヴィブラートを効かせて歌いまくり、ピアノは両手を高く上下させてリズムを強調。これこそが彼ら本来のDNAなんでしょう、改めてブラームスとシューマンで聴かせてくれたフレーズが歌、歌、歌だったことを思い知りました。熱烈なるブラヴィーを・・・!

いやぁ~凄い、そして楽し発見でしたね、アヴォスPQ。お正月と言うことで新たな出会いもあり、湘南への行き帰りに丹沢山系と富士山も拝めたりと、実り多い一日でした。

ところで2月11日の鵠沼サロンコンサート、やはり午後3時開演ですが、平井氏曰く世界最高のクラリネット奏者セバスティアン・マンツ。ブラームスのクラリネット・ソナタ2曲と、ロータスQのチェロを加えてクラリネット・トリオも演奏しちゃいます。マンツは広上淳一指揮のN響とモーツァルトの協奏曲も演奏する筈ですが、世界の最高峰を眼前で聴ける貴重な機会。是非サロンを体験してください、と私からも宣伝しておきます。

 

 

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