八度目の正直

2月第1週のアメリカ競馬はクラシックに向けたトライアル戦が目白押しでしたが、第2週は古馬たちが主役。2月10日の土曜後には南北フロリダと西部カリフォルニアで合計8鞍のG戦が行われました。

先ずはフロリダから、先にガルフストリーム・パーク競馬場の2鞍を紹介しましょう。第1弾はいきなりこの日の目玉、今期最初の芝コースGⅠ戦で、ガルフストリーム・パーク・ターフ・ハンデキャップ Gulfstream Park Turf H (芝GⅠ、4歳上、9ハロン)。firm の芝コースに8頭が出走し、微差ながらG戦9勝の7歳古豪ハート・トゥー・ハート Heart to Heart が5対2の1番人気。
スタートから気持ち良く先頭に立った本命馬、後続に終始1馬身ほどの差を付けて逃げると、最後は4番手から外を通って追い込む3番人気(9対2)のクリロフ Kurilov を首差抑えて鮮やかに逃げ切りました。3番手を進んだ5番人気(7対1)のハイ・ハッピー Hi Happy が4分の3馬身差で3着。着差は首ですが、2頭の斤量差は4ポンド、決して辛勝という内容ではありません。
ブライアン・リンチ厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のハート・トゥー・ハートは、これがGⅠ戦8度目の挑戦での初勝利。G戦そのものは10勝目で、3歳時2勝、4歳でも2勝、5歳時は3勝し、去年も2勝を加え、毎年複数のG戦勝利を積み重ねてきた結果です。去年は9月にサラトガでバーナード・バルーク・ハンデ(芝GⅡ)を制し、キーンランドのシャドウェル・ターフ・マイル(芝GⅠ)で2着、続くBCマイルは10着に終わっていました。今期は1月のガルフストリーム、フォート・ラウダーデール・ステークス(芝GⅡ)で始動して7着と敗退しましたが、シーズン2戦目で念願のGⅠ戦初制覇を果たしています。

ガルフストリームのもう一鞍は、同じく芝コースの牝馬によるスワニー・リヴァー・ステークス Suwannee River S (芝GⅢ、4歳上牝、9ハロン)。こちらも9頭と頭数が揃い、2走前にゴールディコヴァ・ステークス(芝GⅡ)に勝っているキッテンズ・ロアー Kitten’s Roar が8対5の1番人気。
6番人気(9対1)のミッドナイト・クロッシング Midnight Crossing が逃げ、キッテンズ・ロアーは4番手で機を窺います。2番手でマークしていた4番人気(6対1)のドリーム・アホワイル Dream Awhile が第4コーナーで逃げ馬を捉えて先頭で直線に入りましたが、前半は5番手の外を進んでいた2番人気(7対2)のエリシーズ・ワールド Elysea’s World が外から追い上げ、ゴール直前でドリーム・アホワイルを首差差し切っての優勝。3番手追走から内を衝いた5番人気(6対1)のウルトラ・ブラット Ultra Brat が半馬身差の3着に食い込み、人気のキッテンズ・ロアーは伸びず、更に1馬身4分の3差の4着に終わりました。
チャド・ブラウン厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のエリシーズ・ワールドは、これがG戦初勝利となる5歳馬。去年のこのレースでは2着に入っており、前走12月30日のロバート・J・フランケル・ステークス(芝GⅢ)でも2着、今一歩のところでG戦タイトルを逃していましたが、今期初戦での念願成就となりました。

続いてはフロリダ州北部のタンパ・ベイ・ダウンズ競馬場から3鞍。最初のエンデヴァー・ステークス Endeavour S (芝GⅢ、4歳上牝、8.5ハロン)は、firm の馬場に1頭が取り消して7頭立て。人気は2頭の一騎打ちの様相で、去年秋にクイーン・エリザベス2世チャレンジ・カップ(芝GⅠ)を制してGⅠ馬となったラ・コロネル La Coronel がイーヴンの1番人気。
先手を取ったのはライヴァルで僅差2番人気(6対5)のダナ・ブルーハ Dona Bruja 、ラ・コロネルはこれを5番手で追走し、早目に2番手に押し上げますが、ダナ・ブルーハの逃げ足衰えず、懸命に追い縋る本命馬に4馬身差を付ける完勝の逃げ切り勝ちでした。ポツンと離れた最後方から追い込んだ3番人気(5対1)のトゥルーリー・トゥゲザー Truly Together が1馬身差の3着。
イグナシオ・コレアス厩舎、ホセ・オルティス騎乗のダナ・ブルーハは、去年夏にアルゼンチンからアメリカに転籍し、いきなりG戦を2連勝(ミント・ジュレップ・ハンデ、モデスティー・ハンデ)した6歳馬。2連勝のあとビヴァリー・D(芝GⅠ)で2着し、ファースト・レディー(芝GⅠ)も4着。ここが今年初戦で、3つ目のアメリカG戦獲得となりました。

次は3歳戦のサム・F・デイヴィス・ステークス Sam F. Davis S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)。fast の馬場に1頭が取り消して6頭立てとなり、既にG戦2勝、去年のBCジュヴェナイル・ターフでも4着したカソリック・ボーイ Catholic Boy が3対5の断然1番人気。
レースは4番人気(10対1)フレームアウェー Flameaway の逃げで始まり、カソリック・ボーイは3番手で追走。第4コーナーで予定通りフレームアウェーを外から捉えたカソリック・ボーイでしたが、意外や一旦交わされたかに見えた逃げ馬が再び内から差し返し、最後は半馬身差大本命を抑えての逆転勝ちです。4番手を進んだ2番人気(2対1)のヴィーノ・ロッソ Vino Rosso が4分の3馬身差で3着。
マーク・カッセ厩舎、ホセ・レズカノ騎乗のフレームアウェーは、去年10月にバーボン・ステークス(GⅢ)に勝って以来となる、G戦2勝目。そのバーボンは本来芝のGⅢ戦でしたが、雨のためにダートに変更され、AGCの判断で改めてGⅢと認定された一戦。このレースそのものがBCへの優先出走権対象であったためBCジュヴェナイル・ターフに出走したものの、8着に終わっていました。今期は1月6日にガルフストリームのリステッド戦(キッテンズ・ジョイ・ステークス)に勝っており、ステークスは2連勝です。

タンパ・ベイの最後は、その名もずばり、タンパ・ベイ・ステークス Tampa Bay S (芝GⅢ、4歳上、8.5ハロン)。1頭が取り消して9頭立てとなりましたが、ここは去年のBCマイルでヨーロッパ勢を相手に快勝した王者ワールド・アプルーヴァル World Approval が1対5の一本被り大本命。
4番人気(12対1)ウエスタン・リザーヴ Western Reserve と7番人気(48対1)ル・ケン Le Ken の2頭の大逃げを3番手で焦らず追走した大本命、第4コーナーで直後に付けていた2頭の連続落馬にも煩わされることなく、第4コーナーで先行2頭を外から捉え、5番手から更に外を通って追い込む3番人気(12対1)のフォージ Forge を半馬身抑えて人気に応えました。7番手から追い込んだ2番人気(8対1)のファイア・アウェイ Fire Away が4馬身差の3着。
マーク・カッセ厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のワールド・アプルーヴァルは、これがBC以来となる今期初戦で、4連勝となる6歳せん馬。せん馬だけに、BCマイル連覇が目標になるものと思われます。

土曜日の最後は、サンタ・アニタ競馬場の3鞍。最初のサンタ・マリア・ステークス Santa Maria S (GⅡ、4歳上牝、8.5ハロン)は fast の馬場に5頭立てでしたが、ここも女王ユニーク・ベラ Unique Bella 参戦とあって1対9の馬鹿々々しいほどの1番人気。
スタートから先手を取ったユニーク・ベラ、最後まで後続に影を踏ませることなく、馬なりのまま2着以下に9馬身の大差を付ける圧巻の一人旅でした。3番手に付けていた2番人気(6対1)のモポティズム Mopotism が2着、2番手追走の3番人気(8対1)マジェスティック・ヒート Majestic Heat が1馬身4分の1差で3着。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、マイク・スミス騎乗のユニーク・ベラに付いては何も付け加えることも無いでしょう。デビュー戦の2着、去年のBCフィリー・アンド・メア・スプリント7着以外は全勝となる4歳馬。BC以後は12月のラ・ブレア・ステークス(GⅠ)に続く2連勝で、目指すは古馬牝馬チャンピオンか、チャンピオン・スプリンターか・・・。

続いて行われたサンダー・ロード・ステークス Thuder Road S (芝GⅢ、4歳上、8ハロン)は去年、ダービー直前の4月29日に施行された一戦。今年は firm の芝コースに6頭が出走し、4連勝で臨んだBCマイルで3着して注目されているブラックジャックキャット Blackjackcat がイーヴンの1番人気。
逃げたのは大外6番枠発走の3番人気(4対1)オム Om 、2番低下を7馬身以上離しての大逃げとなります。本命ブラックジャックキャットはこれを2番手で追走しましたが、ペースに惑わされたか早々と燃料切れとなり後退一方。代わって4番手を進んだ2番人気(2対1)のボウイーズ・ヒーロー Bowies Hero が第4コーナーで外からオムに並び掛けましたが、オムは最後まで抜かせず、結局ボウイーズ・ヒーローに半馬身差を保ったまま逃げ切ってしまいました。最後方から追い込んだ4番人気(5対1)のネックスと・シェアーズ Next Shares が頭差の3着に入り、期待のブラックジャックキャットは5着大敗に終わっています。
ダン・ヘンドリックス厩舎、フラヴィアン・プラット騎乗のオムは、2戦目に初勝利を挙げた際に三冠馬アメリカン・フェイロー American Phroah を破ったことで有名になった馬ですが、勝ち星は2015年12月のマティス・ブラザーズ・マイル(GⅡ)以来の3年弱ぶり。前走元旦のリステッド戦(ジョー・ヘルナンデス・ステークス)も4着に終わっていました。

愈々土曜日の最後となったのが、サン・ヴィセンテ・ステークス San Vicente S (GⅡ、3歳、7ハロン)。タンパ・ベイのサム・デイヴィスに続く3歳戦で、新星6頭が出走。デビュー戦で9馬身半差の圧勝を演じたアックス・マン Ax Man が2対5の圧倒的1番人気に支持されていました。
最低人気(18対1)のミスター・イェーガーマイスター Mr. Jagermeister の逃げで始まりましたが、抜け出したのは後方2番手で待機していた5番人気(11対1)のカンタカ Kanthaka 、3番手を進んだ4番人気(9対1)のネロ Nero に3馬身4分の1差を付けていました。4番手追走の3番人気(9対1)オール・アウト・ブリッツ All Out Blitz が12馬身の大差で3着に入り、人気のアックス・マンは4着大敗です。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、フラヴィアン・プラット騎乗のカンタカは、去年11月デル・マーのデビュー戦で5着。12月のサンタ・アニタ、2戦目で初勝利を挙げたばかりで、これが未だ3戦目。人気で負けた馬も含め、経験の浅い3歳馬たちには不確定要素が一杯、ということでしょうか。

 

 

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