日本フィル・第327回名曲コンサート

日本フィルの名曲コンサートは定期演奏会に比べて曲目がかなり保守的に傾きますので、私のような天邪鬼には縁の薄いシリーズです。
しかし今日は名曲シリーズとしては聴き応えがありそうなプログラム、指揮者もソリストも定期演奏会レヴェルですから、比較的廉価な席で聴いてきました。2階LA6列。
モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
     ~休憩~
三善晃/「アン・パサン」(通り過ぎながら)~ヴァイオリンとオーケストラのための
レスピーギ/交響詩「ローマの松」
 指揮/沼尻竜典
 ヴァイオリン/アン・アキコ・マイヤーズ
 コンサートマスター/江口有香
これは大当たりでした。素晴らしいコンサートだったと思います。
このところ何かと話題の多い沼尻、冒頭のモーツァルトからしてかなり気合が入っていました。名曲コンサート開幕の序曲といった気楽な姿勢では全くなく、最初の和音からして響きは充実。その後の展開も極めてシンフォニックな演奏で唸らせます。
日本フィル、絶好調。
ん、今日はいいぞ。(いや、今日も、か)
次のメンデルスゾーン、これは破天荒と言って良いでしょうか。かなり変わったメン・コンが聴けました。
ソロのマイヤーズは、ロマン派の薫り高く美しいメロディーを朗々と聴かせるようなメンデルスゾーンをやりません。アグレッシヴと評したくなるほどに、攻撃的で猛スピードのドライヴ。普通のメンデルスゾーンを期待していた人は呆気に取られたかも知れません。
まるで喧嘩・アキコ。
(とは言いながら、首席ホルン福川とヴィオラがユニゾンで奏する第3楽章第2主題のふくよかなこと(784小節から796小節)。ここ、思わずゾクッと来ました。)
あるいは不満に感じた人もいるかと思いますが、私には極めて痛快。指揮者もソリストに合わせたのか、激しい表現で応酬します。
こんなメンデルスゾーンもありかヨ!
この行き方、明らかにメンデルスゾーンよりは休憩後に演奏された三善作品にピッタリ来ますね。彼女の研ぎ澄まされた技術とカラッとした音色が、現代作品には実に良く合うのです。
そう言えばマイヤーズ、ベイカーやコリリアーノの作品を初演している弾き手ですから、彼女自身にモダンな作品への愛着があるのだと思います。
沼尻の見事なコントロールに応えた日本フィルのダイナミックで明るい音色が作品によくマッチし、稀代の名演奏が生まれたと思います。
日本フィルと三善晃は、つい先日の定期でも尾高と交響三章を再演したばかり。オケの響きがスッカリ三善モードに染まった感があります。
定期で演奏された交響三章は、一分の隙もなく組み立てられた古典的相貌の大交響楽。
これに比べるとアン・パサンは、ヴァイオリンの華やかなソロを伴う協奏的作品。
打楽器と金管楽器が多彩でダイナミックに響くオーケストラ、これと渡り合うソリストとの間の呼応、感応が作品の聴きどころでしょう。
沼尻は言うまでもなく三善晃のスペシャリスト、この日も会場で発売されたばかりの3枚組み三善セットが販売されていました。
嬉しいことに、この日は三善晃氏ご本人も会場で聴かれていました。残念ながら私の席から1階の様子は見えなかったのですが、演奏終了後直ぐ、沼尻がステージを駆け下りて作曲家と固く握手を交わしたのでしょう。
客席から大きな拍手が両者に送られていました。
三善氏は先日の定期も列席されたかったそうですが、ドクターストップがかかっていて実現ならず。今日は愛弟子による名演を堪能され、「過ぎ去った時」に想いを馳せられたのでしょうか。
沼尻・東フィルとのライヴがCD化されたのですから、日本フィルの二つの名演も是非CDにして欲しいものだと思います。
大のCD嫌いである三善氏は、自身の空間的音響は録音には不向きというお考えのようですが、極めて完成度の高かった交響三章と今日のアン・パサンは、恐らく三善氏も満足されるであろう出来栄えでしたからね。
最後のレスピーギは絢爛豪華。名曲コンサートの締めとして大いに盛り上がりました。
カタコンブでの陰吹きトランペットは、P席裏の通路、扉を閉じたまま吹いたようです。
また、アッピア街道のバンダは2階客席のL。
更にジャニコロの松でのナイチンゲールの声。普通どおり録音をスピーカーで流すのですが、どうも沼尻マエストロも口笛で鳥の声を模していた風があります。
あるいは間違いかも知れませんが、録音ではない、一風変わった鳥の声が聞こえたような気がしましたがねぇ~。
折角オルガンも登場したということで、アンコールは「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲のオルガン付きバージョン。

 

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