第371回・鵠沼サロンコンサート

寒い1月と2月はマチネーだった鵠沼サロンコンサート、3月からはいつもの火曜日、午後7時からの開演に戻ります。3月例会は弦楽四重奏曲、シュトゥットガルトから「来日」したロータスQが次の恐るべきプログラムで50人の聴き手を魅了しました。

ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第15番イ短調作品132
     ~休憩(20分)~
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調作品131
 ロータス・カルテット

サロンコンサートについても、ロータスQに付いても何度も書いていますから、長くは書きません。改めてサロンのアーカイヴを検索してみると、どうやらロータスの鵠沼は今回が6回目のようですね。最初は2000年で、この年は春と秋の二度も登場してます。
現在のメンバー(小林、ノインドルフ、山碕、斎藤)で固定してからは2012年が最初で、この時は10年振り4度目だったと思われます。私が彼らを鵠沼で初めて聴いたのが前回、2016年の第351回で、これが5度目でしょう。従って今回は6回目、私は2度目の参加ということになります。ただし個々のメンバーは他のプログラム、デュオやトリオの一員としても来日していますから、4人は藤沢市の名誉市民にしても良いほど、すっかりお馴染みの顔。

ロータスQといえば去年6月、鶴見サルビアホールでのベートーヴェン全曲演奏会が生々しい記憶で、今回は、ツィクルス最終日の曲目を再現したということにになります。平井プロデューサーによれば、全曲完奏の打ち上げで盛り上がり、特にフィナーレが圧巻だったことから“もう一度やりたい。ならば鵠沼で、”ということで実現の運びになったのだそうな。夢よもう一度、鶴見で熱心に耳を傾けていたファンの何人かは、鵠沼にも出没してました。それだけ感銘が大きかった、ということでしょう。
このサロンではプログラムに曲目解説などはなく、毎回平井氏が口頭で簡単に作品を紹介するのですが、ベートーヴェン後期の大傑作二つとあって、いつも以上に熱が入った解説だったのが印象的でした。

演奏に付いては、去年のサルビア・レポートをご覧ください。もちろん100人のホールと60人のサロンでは響き方も違いますが、音楽の本質には違いはありません。平井氏も触れていましたが、ベートーヴェンの最高傑作を一つに絞るとすれば131か132か。改めて二つ聴き比べてみると、私的感想では、132は第9交響曲が無ければ生れなかった作品でしょう。実際、現行イ短調で書かれている最終楽章のスケッチは当初ニ短調で試行錯誤されていたようで、当初の第9交響曲の器楽フィナーレとして構想されていたらしい。第3楽章も、第9の緩徐楽章と構造的には同じですしね。
一方131は、長大な7楽章とは言え、各楽章も極端に長くはない。最長の第4楽章にしても楽想は頻繁に変化し、8部のエッセイとして聴けなくもない。そこを理解して聴けば、全曲はあっという間。むしろ軽妙洒脱なユーモアすら聴き取れて、最後の古典的な135に繋がる要素が多いのじゃないか、と聴きました。2曲は、怖い顔のベートーヴェンと、ニヤッと笑った巨匠。そんな単純なものじゃないか・・・。

超ヘヴィーな2曲のあと、もちろんアンコールはありません。私共は一日空けた15日、今度はサルビアホールでベートーヴェンを含まないプロで再びロータスを聴く予定です。

 

 

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