日本フィル・08年11月東京定期聴きどころ

のんびり構えていましたら定期が今週に迫っています。慌てて11月のデータから見た聴きどころを書きますが、見落としがあるかもしれません。
11月は沼尻竜典の指揮、プログラムは、①メシアン/7つの俳諧 ②マーラー/交響曲第5番 の2曲。
沼尻は13回目の東京定期登場、日本フィルの正指揮者というポストは今年3月で満了しましたが、今後も数多く登場することが期待される逸材です。
現に11月は沼尻月間と言ってよいほどで、東京定期の他に横浜と埼玉、サントリーの名曲シリーズと杉並のアフタヌーン・コンサート、更に特別演奏会の第9と、多彩な活躍を展開しています。
私も先日の名曲シリーズを聴いてきましたが、真に充実した演奏、レスピーギでの咄嗟の判断など、その才能に疑う余地はありません。
マエストロはこれまでの12回の定期で、主にドイツ後期ロマン派の作品にスポットを当ててきました。それは日本フィル以外での活動でも一貫していて、芸術監督を務めるびわ湖ホールでもシュトラウスの「サロメ」を指揮したばかり。私はこれも聴いてきましたが、日本人だけによるサロメ公演を立派に成功させていました。
データ面から見た今回のプログラムについて。まずメシアン。
実は、日本フィルがメシアンを取り上げるのは珍しいことで、今回演奏される「7つの俳諧」が3作目に当ります。
これまで演奏された2曲は、トゥーランガリラ交響曲とクロノクロミーだけ。クロノクロミーは故渡邉暁雄氏が第159回定期と第353回定期で2度取り上げています。
一方のトゥーランガリラ交響曲は、当の沼尻が2002年11月の第545回定期で演奏したときのもの。この演奏は大いに評判になり、CD化されて一般にも発売されていました。
今回の作品は当然ながら日本フィル定期には初登場。メシアンが1962年に日本を訪れたとき、日本各地を旅して回った印象と、軽井沢や山中湖で採譜した鳥の声がベースになっている作品です。
様々な日本の鳥が登場しますが、我々には最も馴染みのあるウグイスがどの楽器で、どのように演奏されるか楽しみにして下さい。
楽器編成も変わっていて、弦楽器は8人のヴァイオリン奏者だけ。あとは管楽器と多数の打楽器だけですから、舞台上の配置などにも注目です。
(メシアンはスコアに楽器の配置を指定しています)
後半はマーラーです。
現代のオーケストラでマーラーを演奏しないという団体はまず無いでしょう。それほどにマーラーはオーケストラのレパートリーに定着していますが、半世紀前には考えられなかったことです。
日本フィルのマーラーは、これまで交響曲は全曲が複数回演奏されていますし、歌曲でも「さすらう若人の歌」が3回、「亡き子を偲ぶ歌」と「子供の不思議な角笛」歌曲集が夫々2回、変わったところでは第1交響曲のオリジナル版に含まれていた「花の章」も一度取り上げられたことがあります。
交響曲の演奏回数を番号順に列記すると、
第1番  9回
第2番  6回
第3番  3回
第4番  6回
第5番  6回
第6番  5回
第7番  2回
第8番  3回
第9番  4回
第10番 2回
大地の歌 3回
となります。このうち第10番はアダージョだけ。他人の手によって完成された10番の全曲版は、まだ日本フィルの定期には登場していません。
ダントツに多い第1番を別にすれば、第2位は2・4・5番が並んでいました。今回の第5の演奏により、単独2位に上がることになります。まぁ、順当な記録と申せましょう。
第5のこれまでの6回の内訳は、
1.1980年4月 第322回 渡邉暁雄
2.1983年3月 第351回 小林研一郎
3.1987年11月 第395回 ハルトムート・ヘンヒェン
4.1991年5月 第430回 小林研一郎
5.1997年3月 第488回 小林研一郎
6.2004年7月 第562回 小林研一郎
実に6回のうち4回まで小林研一郎が振っているのですね。3~4年に一度は演奏されてきた勘定。間が空いても6年が最高です。
今回は沼尻竜典の新しい観点による第5。小林とは全く異なるアプローチで臨むでしょうし、どの版を使うかという興味もあります。
以上、11月定期をデータから検証してみました。
最後に一つ面白い事実。
11月に沼尻マエストロが日本フィル東京定期に登場するのは今回が4回目ですが、最初(2002年)が上記のメシアン/トゥーランガリラ、2回目(2004年)が話題になったハンス・ロットの交響曲。そして3回目(2007年)がマーラーの第6なのです。
沼尻/マーラーは、この第6に続いて今回の第5が2曲目なのですが、正に11月に相応しいプログラム。偶然とは言え、今回のメシアン/マーラー・プログラムには期待が募るじゃありませんか。

 

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