日本フィル・09年1月東京定期聴きどころ

1月定期が目前に迫ってきました。今月はアレキサンドル・ラザレフ氏が首席指揮者就任として初めて指揮台に立たれます。
恐らく既に来日され、今日辺りから厳しいリハーサルが始まっていると思われます。
漏れ伝えられる噂によりますと、新年最初に取り上げられる「新世界より」も普通とは全く異なるボウイングによるパート譜が届いている由。ラザレフによって拓かれる新しい新世界に期待が高まっているところです。
さて恒例のデータから見た聴きどころです。
ラザレフは今回が4度目の東京定期登場。2003年3月、2005年12月、2007年10月と、これまでは隔年で日本フィルを指揮してきましたが、今年から3シーズン、各2回づつの定期が予定されているようです。
プログラムの柱は、プロコフィエフの交響曲全曲演奏。これに毎回モーツァルトを組み合わせるというのがラザレフの方針だそうです。マエストロによれば、モーツァルトとプロコフィエフには共通点があるのだとか。その辺を演奏を通じて確認していくことも聴きどころでしょうか。
1月のプログラムは、①プロコフィエフ/交響曲第1番(古典交響曲) ②モーツァルト/ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 ③プロコフィエフ/交響曲第7番「青春」 の3曲。
まずプロコフィエフ。
意外かも知れませんが、日本フィルにとってプロコフィエフは取り上げた作品数が極めて多い作曲なのですね。
この話は先月も取り上げましたので繰り返しませんが、作品数では全体の6位に位置しています。ラザレフ・プロジェクトによって今後取り上げられる作品が増加するのは確実ですし、「日本フィルのプロコフィエフ」は一種のブランドになりそうな気配ですね。
これまで演奏されてきたのは18作品。内訳は、交響曲4曲、ピアノ協奏曲4曲(1番以外の全て)、ヴァイオリン協奏曲2曲、チェロ協奏曲(協奏交響曲)、バレエ曲では「ロメオとジュリエット」、「シンデレラ」、「道化師」。スキタイ組曲もバレエを基にした作品。オペラから編んだ「三つのオレンジへの恋」組曲。映画からは「キージェ中尉」と「アレキサンドル・ネフスキー」。これで18曲になります。
協奏交響曲とヴァイオリン協奏曲第2番は、日本フィルが日本初演という記録もおまけ付です。
交響曲でこれまで取り上げられたのは、第1番(3回)、第5番(4回)、第6番(1回)、第7番(5回)。今回の1番と7番については、
第1番「古典交響曲」
1. 渡邊暁雄(第103回)
2.イゴール・マルケヴィッチ(第156回)
3.外山雄三(第449回)
第7番「青春」
1.渡邊暁雄(第10回)
2.山田一雄(第213回)
3.オスカー・ダノン(第271回)
4.井上道義(第428回)
5.井上道義(第546回)
私は1番のマルケヴィッチ、7番の2回の井上道義を聴いた記憶が残っていますが、皆さんは如何ですか。
尚、第7番には終わり方が異なる二つの版が残されていまして、今回はラザレフが両方のフィナーレを演奏すると予告されています。
静かに終わるものがプロコフィエフが最初に意図した版。ソヴィエト共産党の当局から指示されて書き直し、賑やかに終わるのが最初の出版譜。
ラザレフがどのように両版を演奏するのか、真に興味深い見もの・聴きものですが、恐らくこのような企画は空前絶後かも知れません。日本フィルの定期会員でなくとも必聴のコンサートになること間違いなし。
因みに、私が聴いた井上の2回は、いずれも静かに終わるプロコフィエフの本音版でした。
真ん中に演奏されるのはモーツァルトです。
日本フィルのモーツァルトについては尾高氏の会でも紹介しましたので、ここでは協奏交響曲について。
この曲は日本フィル東京定期には4度目の登場になります。これまでの記録は、
1.渡邊暁雄 ブローダス・アール/河野俊達(第8回)
2.ルカーチ・エルヴィン 塩川悠子/今井信子(第336回)
3.沼尻竜典 町田琴和/清水直子(第570回)
お気付きのように、今回のヴィオラを担当される今井信子さんは、この曲では2度目の登場になります。今井さん自身の日本フィル定期も二度目ですので、偶然とは言いながら面白い選択です。
ところで、この作品のヴィオラ・ソロは、スコドゥラトゥーラという調弦を変えて演奏する新しい譜面が出版されているのをご存知でしょうか(ベーレンライター)。ヴィオラを得意にしたモーツァルトが、この楽器をより輝かしく響かせるための手段だとか。
この件については、前回の沼尻氏のプレトークでも紹介されていましたし、清水さんもこれで演奏しました。
今回の今井さんはどうするでしょうか。
(と言っても、彼女が五嶋みどりと組んで録音したCDではスコドゥラトゥーラで演奏していますから、今回も間違いないでしょう)
当然ながら、ここは大いに聴きどころとして推薦したいですね。

 

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