フェスタサマーミューザ2018「東京フィルハーモニー交響楽団」

毎夏の音楽の祭典、フェスタサマーミューザが7月21日に開幕しました。川崎に素晴らしいコンサートホールが誕生して直ぐに始まったサマーミューザ、私も最初の数年はオーケストラ聴き比べに足繁く通ったものでしたが、当初の期待に反して次第にマンネリ感を感ずるようになり、最近は足が遠のいていました。
ところが家内から“夏も音楽を聴きたい”と言われ、考え直した次第です。コンサートの選択は私に一任と言うことで、選んだのが平日夜の3回セット。最初の頃の経験からチケットなど何時でも手に入ると考えたのが間違いで、買い物序にミューザの窓口に行くと、“セット券はもう完売しました”とのこと。この催し、今じゃ人気企画なんですね。それでも一回券なら未だ席があります、ということで予定の3公演をバラでゲット。横からもう少し増やしても良いよ、という囁きが聴こえたので、オープニングとフィナーレを追加、全部で5公演のお買い上げとなりました。

ところが帰宅してスケジュールを確認すると、何とオープニングは二期会のオペラとバッティングしているじゃありませんか。衝動買いは間違いの基ですな。結局21日のチケットは家内の友人に半額で引き取ってもらうことにしました。
ということで今年のミューザには4回出掛けますが、その第一弾が24日の夜公演、東フィルの絶品フレンチⅠ~ラヴェルとドビュッシー~で、以下のプログラム。

ラヴェル/道化師の朝の歌
ラヴェル/ピアノ協奏曲
     ~休憩~
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
ドビュッシー/交響詩「海」
 指揮/ロレンツォ・ヴィオッティ
 ピアノ/小山実稚恵
 コンサートマスター/依田真宣

開演1時間前、ホールに入ってプログラムを手渡されましたが、これまでとは違っています。以前は音楽祭の総合プログラムだったと記憶しますが、今回は演奏会1回づつの簡単な見開き4ページのプログラム。総合誌ではコストもかかるでしょうし、複数回通う人にとっては同じ冊子が何冊も溜まって始末に困ります。以前は私も入り口で受け取り拒否したことも思い出しました。
この日は開演前にオーケストラのメンバーによるロビーコンサートがあるとのことで、開演前に席取りと思われる長い列も出来ていました。出演者はフルート、ヴィオラ、ハープと書かれていたので恐らくドビュッシーのソナタが演奏されたのでしょうが、私はパスして早々と2階席右寄りで涼みます。何しろ来るまでが暑かった!!

サマーミューザのスタート当初から東フィルは本格的なプログラムを用意してきましたが、今回も19日に行われたサントリー定期をそのまま川崎に持ち込んだもの。ドビュッシー没後100年に因んだフランス音楽の定番プログラムでしょう。
指揮者は、かつて日本フィルにも度々登場していたマルチェロ・ヴィオッティの息子とのことですが、正直余り似ていません。足が細く極めて長い、ふさふさとした黒髪が特徴の典型的なイケメン。ピアノの小山に付いては改めて紹介することもないでしょう。

久し振りにミューザの2階席で聴きましたが、やはり音響は素晴らしい。最近ここの1階席で何度かオケを聴きましたが、このホールに限っては2階の方が纏まって聴こえる、というのが私の意見です。家内は全く逆のことを言っていましたから、あ
くまでも個人的な感想、ということ。
それでも、この日はやや雑な印象。オーケストラというより、どうやら指揮者に問題があるのでは、と思いました。道化師の朝の歌にしても海にしても、ヴィオッティはテンポを少しいじり過ぎる嫌いがあります。その結果、音楽はダイナミック且つドラマティックに鳴り響くのですが、特にドビュッシーではこの作曲家特有の繊細さや色彩のグラデーションが犠牲になってしまう。ハッキリ言って、これからの人でしょう。

前半の協奏曲のあとでは、意外なアンコールも。舞台係がピアノ用の椅子と楽譜をサッと準備して、小山/ヴィオッティの連弾(4手)によるラヴェル/マ・メール・ロワの終曲「妖精の園」。指揮者のプロフィールを見るとウィーンでピアノも学んでいるそうですが、これはまぁ、ご愛嬌でしょう。客席は大いに沸いてましたが・・・。

後半、牧神と海は演奏会でもLPのカップリングでも定番ですが、単に有名な2曲ということだけじゃありません。今回改めてスコアに目を通してから出掛けましたが、牧神の譜面は主調が♯4つ。中間部に相当する部分で♭5つに転調し、最後は主調の♯4つに戻る。もちろん途中で様々に転調しますが、基本的には♯4つ(ホ長調、嬰ハ短調)と♭5つ(変ニ長調、変ロ短調)の交代で創られています。
一方の海は♯2つで始まりますが、第1楽章の主部に入ると♭5つが主調。第2楽章は♯4つが基本の調性で、第3楽章も前半は♯4つで始まり、後半は♭5つに交代する。つまり、牧神も海も同じ調性で書かれていると言っても過言じゃありません。

ここで妄想。牧神と海を並べて演奏するときは、オケには最初から海の編成で並んでもらい、牧神と海は曲間の拍手を入れず、続けて演奏する。それだけの根拠はあると思いましたね。
もちろんヴィオッティ/東フィルはそんな暴挙はせず、牧神が終わると3管のメンバーが続々入場し、新たなチューニングを経て海へ。海では、最近は主流になっているオリジナルの金管ファンファーレ付き(第3楽章後半)エディションでの演奏でした。

次回は8月3日の神奈川フィルで再びフレンチを楽しむ予定です。

 

 

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