今日の1枚(46)

デッカ50周年記念のアルバムは昨日で一段落、今日から3枚はフィリップスの50周年記念アルバムからベイヌム盤を拾います。
フィリップス・クラシックスは1950年にオランダの電機メーカーであるフィリップスのレコード部門として発足した会社です。この時期には既にLPが開発されていましたから、フィリップスにはSP録音はありません。
2001年に発売された一連のCDは、過去のフィリップスのカタログから名録音とされるものを集めて廉価シリーズ化したもの、モノラル編とステレオ編に分かれていました。
ブックレットには元副社長の新忠篤氏が一文を寄せていて、これが結構面白い読み物。全てのディスクのレーベル面に PHILIPS 50th という文字が刻印されています。
最初はモノラルから1枚、UCCP-9366(470 206-2) で、

①モーツァルト/フルート協奏曲第1番ト長調K313
②モーツァルト/フルート協奏曲第2番二長調K314
③モーツァルト/フルートと管弦楽のためのアンダンテ ハ長調K315
④モーツァルト/フルートとハープのための協奏曲ハ長調K299

フルートのソロは全てフーベルト・バルワーザー、ハープはフィア・ベルクハウト。
オーケストラは①と②がジョン・プリッチャード指揮ウィーン交響楽団、③はベルンハルト・パウムガルトナー指揮ウィーン交響楽団。
④がエドゥアルト・ヴァン・ベイヌム指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管弦楽団です。
フィリップスは、その初期からプロデューサーとエンジニアは同じ人物が担当する伝統があります。もちろん音楽的理由からですが、現在でもその多くは名前を公表しません。大企業の一部門というスタンス故でしょう。
高名なフォルカー・シュトラウスがコンセルトへボウの録音を担当するようになるのはハイティンク時代になってからですから、これはシュトラウス録音じゃないと思います。何を調べても資料は無く、いわば無名氏による録音。

録音年月日は公表されていて、
①②は1953年1月28日から29日、ウィーン
③は1954年1月、同じくウィーン
④は1957年6月6日、アムステルダムのコンセルトへボウ
ただ「ウィーン」というのも大らかです。
バルワーザー Hubert Barwahser は1936年から1971年までコンセルトへボウの首席を務めた名手。④で加わるベルクハウト Phia Berghout もコンセルトへボウの首席ハーピストです。
(新氏によると、バルワーザーの使用楽器は木製フルート、とブックレットに書かれています)

これまでのデッカ録音とは趣をかなり異にして、全体に円やかな音創りが目立ちます。
①と②はあまり残響を伴わない、どちらかというとデッドな音。フルートの息遣いなども生々しく収録されています。
これがLPでもオリジナル・カップリング。

③は同じ会場かもしれませんが、遥かに残響を多く取り入れ、細部はあまり明瞭ではありません。
オリジナル・カップリングは、クワンツのフルート協奏曲ト長調、グルックのフルート協奏曲ト長調(ヘルマン・シェルヘンが様々なグルック作品から編曲したもの)との組み合わせ、N 00213L というLPでした。

④はどちらかと言えば③に近い残響豊かなもの。1957年録音にしてはやや鮮度を欠いているように聴こえます。
実はベイヌム/コンセルトへボウのステレオ初録音はこの年の5月。これは6月録音ですから、時期的にはステレオであってもよかったように思います。

演奏を聴いてみると、楽章間もテープが回ったまま、途中で録音を止めたようには聴こえません。あるいは全曲を一気録りしたのかも知れませんね。通常の正規録音セッションとは一味違う印象がありますが、どうでしょうか。
尚、これらの作品の全10楽章全てにカデンツァがありますが、私はこれらについて知識もありませんし、譜面も見たことがありません。
従って誰のカデンツァであるかは不明。モーツァルト自作はありませんから、モーツァルト作でないことだけは確か。 解説にも記載は一切ありません。

参照楽譜
①②③ カーマス No.967(3曲合本)
④オイレンブルク No.767

 

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