エッティンガーの悲愴交響曲
今年のサマーミューザ、残すところあと二日。11日の日曜日は最後から2番目のコンサート、東フィルが久し振りに桂冠指揮者ダン・エッティンガーを迎えたコンサートを堪能してきました。名曲を並べた演目で、誰もが聴きたくなるようなマチネー、私もそれに釣られての参戦です。
ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕前奏曲
モーツァルト/フルート協奏曲第1番ト長調K313
~休憩~
チャイコフスキー/交響曲第6番ロ短調作品74「悲愴」
東京フィルハーモニー交響楽団
指揮/ダン・エッティンガー
フルート/高木綾子
コンサートマスター/三浦章宏
11時半からリハーサルがありましたが、3時までの時間を持て余すのでパス、本番だけの感想です。
今年のミューザ、いつものようにN響は完売。チャイコフスキー・コンクールの結果が入って来るやあっという間に日フィルも完売。当初から人気を集めていた今回の東フィルと、最終日の東響もやがて完売したようで、この日の前売り券はありませんでした。開始当初はガラガラ(失礼!)な公演も多かったフェスタですが、最近ではウッカリするとチケットが手に入りません。オールドファンには感慨深いものさえ感じられますな。
ということで、開場して直ぐでもロビーには人が溢れており、意外だったのは開演前なのに男性トイレすら並ぶ状態。そこで旧知の顔にバッタリ出会ったりして、コンサートの人気ぶりが伺えました。
どの公演でも、オーケストラのメンバーが入場すると暖かい拍手が出迎えます。都心のコンサートではほとんど見られない光景。
以前エッティンガーが首席指揮者だった頃は私も東フィルの会員でしたので、スラリとした長身を懐かしく見下ろします。細身の衣裳を身に着けていたので、痩躯がことさらに目立つ印象。風貌はバレンボイムに似ているし、金髪の刈り方が独特で、何処と無くアニメの主人公を連想させるのは相変わらず、というより以前にも増してきたようにも思われました。
しかし出てくる音楽は素晴らしい。最初の前奏曲からしてドラマがあり、単なる音符の再現はならないのがエッティンガーでしょう。これから楽劇が始まるという期待感を抱かせてくれるような前奏曲でした。
続いては人気フルーティスト、高木綾子登場。実はこの人、私は殆ど聴いたことが無く、多分これが初体験だと思います。その人柄に付いては家内から色々教えてもらいました。へぇ~、そうなんだ。
譜面を置いてのモーツァルト、人気の秘密も判りました。
アンコールがあり、有名なドビュッシーのシランクス。たった1本のフルートがホール一杯に響き渡り、客席は水を打ったよう。改めてミューザ川崎シンフォニーホールのアクースティックの素晴らしさに感動してしまいました。
後半は期待のチャイコフスキー。指揮棒を使わず、両の手だけでオーケストラをドライヴしていくエッティンガー。最弱音から最強音まで、スコアの隅々から大きなドラマを汲み取り、ホールの特性を見事に生かして壮大な音の建築物を組み上げていきます。
このホールでは2階を選択するのが好みで、ここから見て聴くとメンバーの一人一人がどんな仕事をしているのかが一目瞭然なのも嬉しいところ。第2クラリネット奏者が第1楽章、展開部直前でバス・クラリネットに持ち替える様子もバッチリ目撃できます。スコアが無くても管弦楽法が見えてくる、それがミューザ川崎なのです。
エッティンガーと東フィルの悲愴。大満足でホールを後にしましたが、ムラヴィンスキーはどうだった、ラザレフはこうだった、広上はネ、などと思い出を語り合うのもコンサート通いの醍醐味ではありましょう。
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