ヴィクトリア女王生誕200年祭
今年のプロムスではヘンリー・ウッド、ベルリオーズのアニヴァーサリーを祝っていますが、英国にとって、そしてプロムスにとって最も重要な人物がアニヴァーサリーを迎えています。それがクィーン・ヴィクトリアの生誕200年。16日にはこれに因んだコンサートが行われました。
8月16日 ≪Prom 40≫
サリヴァン/バレエ組曲「ヴィクトリアとメリー・イングランド」
メンデルスゾーン/ピアノ協奏曲第1番
~休憩~
アルバート公 Prince Albert of Saxe-Coburg and Gotha/歌曲(5曲)
メンデルスゾーン/交響曲第3番
Orchestra of the Age of Enlightment 指揮/アダム・フィッシャー Adam Fischer
テノール/アレッサンドロ・フィッシャー Alessandro Fisher
ピアノ/スティーヴン・ハフ Stephen Hough
ヴィクトリア女王は、200年前の5月24日に生れました。現在のプロムスの会場であるロイヤル・アルバート・ホールは、正に女王が君臨していたヴィクトリア朝、1867年にその礎石が置かれたのでした。もちろん女王はその儀式に立ち会っています。
そしてホールの名称は、女王の夫であるアルバート公に因んて命名されたもの。世界最大の音楽祭プロムスは、ヴィクトリア女王あつてこその祭典とも言えるでしょう。
最初に演奏されたサリヴァンは、ヴィクトリア女王のダイアモンド・ジュビリー(在位60周年)を祝って作曲されたもの。3楽章から成り、英国国歌(God Save The Queen)が一部引用されて女王への祝意が表されます。
続くメンデルスゾーンのピアノ協奏曲、英皇室のコレクションにあるヴィクトリア女王自身のピアノ(エラール社のピアノ)をバッキンガム宮殿から持ち込んでの演奏というのが最大の聴き所。プロムスの公式ツイッターでいくつも投稿があるように、黄金のピアノ、豪華な装飾が施された楽器で、ネット中継とは言え一聴の価値があります。
嬉しいことに、ハフのアンコールはショパンの夜想曲変ホ長調作品9-2。恐らくショパンも同じエラールの楽器のために多くの作品を残したものと思われます。
後半は、そのピアノを伴奏楽器として歌われるアルバート公自身が作曲した歌曲から5曲。ヴィクトリア女王の夫であるアルバート公、正式にはザクセン=コーブルク=ゴータ公子と言い、本来ドイツ人でもあるので、ドイツ語歌曲でもあります。無料の楽譜サイト、IMSLPには公の歌曲集が掲載されていますから、興味ある方はダウンロードしてお楽しみください。もちろん今回の5曲も含まれています。歌われた5曲は順に、Gruss aus der Ferne 、Standchen 、Gruss an den Bruder 、Aus Wilhelm Meister 、Lebewohl 。
フィッシャーのテノールとハフのピアノ伴奏で歌われました。もちろん前半のメンデルスゾーンで弾かれたエラール・ピアノで。
記念演奏会のメインは、メンデルスゾーンの第3交響曲。1842年3月3日にライプチヒで初演されたあと、メンデルスゾーンは5月にスコットランド交響曲を英国でも演奏するために訪英し、ヴィクトリア女王に謁見。その際に女王に献呈する許可を得た作品でもありました。正にヴィクトリア女王200年祭に相応しい選曲でしょう。
エイジ・オブ・エンライトメントによる古楽演奏を聴いていると、エラール・ピアノの音色と通ずるところがあると感じました。
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