キーワードは100年

21日のプロム45はジャズを中心にしたプログラムでしたので、小生はパス。一日休養して22日から再開しましょう。
そのプロム46、バーミンガム市交響楽団が、そのカリスマ音楽監督のグラジニテ=ティラと共に登場しました。今年のプロムスの隠れテーマ、女性作曲家の作品を女性指揮者が振るという趣旨の一環とも言えそうです。

8月22日 ≪Prom 46≫
ドロシー・ハウエル Dorothy Howell/交響詩「ラミア」Lamia
エルガー/チェロ協奏曲
     ~休憩~
ナッセン/The Way to Castle Yonder
ワインベルグ/交響曲第3番(ロンドン初演)
 バーミンガム市交響楽団
 指揮/ミルガ・グラジニテ=ティラ Mirga Grazinyte-Tyla
 チェロ/シェイク・カネー=メイソン Sheku Kanneh-Mason

グラジニテ=ティラは一昨年のプロムスでも聴きましたが、リトアニア出身の成長株。その時のベートーヴェンは余り感心しませんでしたが、登場するだけで歓声が上がるほどの人気です。今回は曲目も彼女の本領を発揮するのに相応しく、改めて彼女のカリスマ性を思い知らされた次第。
確か一昨年も紹介したと思いますが、彼女のホームページを掲げておきましょう。来年のベートーヴェン250年祭は、バーミンガムで彼女を中心に交響曲全曲演奏会も企画されているようですね。

http://mirgagrazinytetyla.com/

ということで注目のコンサートでしたが、プログラミングのキーワードは「100年目」ということでもあります。
最初に取り上げられたハウエル(1898-1982)は、バーミンガムに生れた女性作曲家。日本では全く知られていないと思いますので、ウィキペディアをご覧ください↓ 

https://en.wikipedia.org/wiki/Dorothy_Howell_(composer)

紹介された交響詩は15分ほどのメロディックな管弦楽曲で、丁度100年前の1919年にヘンリー・ウッドが世界初演した作品でもあります。

その意味では、続くエルガーも100年前の10月27日に初演された作品なのですね。今回のチェリストは、今春日本フィルのヨーロッパ・ツアーでもインキネンとエルガーを共演した英国の若手チェリスト。彼もまた大変な人気者で、姿を現わすや指揮者に対する以上の声援が飛び交っていました。彼は、既にグラジニテ=ティラとバーミンガム市響とのコンビでショスタコーヴィチをデッカに録音しています。こちらもプロフィールを。

日本フィルの応援ツアーに参加された方は、懐かしく思い出されたことでしょう。彼のアンコールは、この日に相応しくワインベルグの前奏曲第18番。ロストロポーヴィチのために書かれた無伴奏による24曲から成る曲集の一つ。幸い楽譜は nkoda で見ることができましたので、譜面を見ながら楽しみました。何れ時間を見て全曲を聴いてみましょう。

後半の開始は、去年亡くなったナッセンの代表作。有名な歌劇「ヒグレティー、ピグレティー、ポップ」のダイジェスト版とでも呼べる一種の組曲で、通して演奏される3部分で構成されています。即ち、
The Journey to the Big White House 、Kleine Trauermusik 、The Ride to Castle Yonder 。スコアはフェイバー社のサイトで閲覧可能。

最後は、今年生誕100年を迎えたポーランドの作曲家ワインベルクの第3交響曲。民謡や踊りの音楽が用いられている作品で、4楽章から成ります。グラジニテ=ティラはドイツ・グラモフォンと専属契約を結んだ記念に、同じワインベルグの交響曲第2番と第21番を組み合わせたディスクを5月に発売したばかり。日本では未だ発売されていないと思いますが(多分売れないから?)、更にワインベルグ・シリーズが続いてくことに期待しましょう。

ワインベルグのスコア、残念ながら現時点で見ることができるのは、全22曲ある交響曲に限って言えば nkoda で第12番と第14番が、シコルスキのサイトで更に第6番(合唱付き)と第10番(弦楽オーケストラ)が手に入るだけ。今回演奏された第3のカッコよさを思うと、これから急速にワインベルグ・ルネサンスが始まる予感がしています。

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