今日の1枚(18)

今日はリストです。リストと言えば(私にとっては)アラウですが、これはクラウディオ・アラウがフィリップスに残した膨大な録音を作曲家別に纏めてボックス・アルバムにしたもの。そのリスト編全6枚組みの最初の1枚です。
アラウ(1903-1991)の生誕100年を記念してフランス・フィリップスが発売したセット。ボックスとしては 473-775-2 、個別には 473-776-2 。

①リスト/ピアノ・ソナタ ロ短調
②リスト/ピアノ協奏曲第1番変ホ長調
③リスト/ピアノ協奏曲第2番イ長調

協奏曲でのオーケストラは、サー・コーリン・デーヴィス指揮ロンドン交響楽団。
実に76分にも及ぶ長時間収録盤です。アナログによるステレオ録音。
このセットは詳細なデータが掲載されていません。僅かに、①が1970年3月にオランダで、②③が1979年12月にロンドンで録音されたということだけ。録音会場もプロデューサーなどの名前もクレジットなし。
仕方ないので別資料(レコード芸術附録のイヤーブック)に当たってみたところ、
②③は1979年12月12~15日にロンドンのヘンリー・ウッド・ホール。①は1970年3月22~24にベルリンのヨハネスシュティフトという場所で録音されたことが判明しました。PもEも不明です。
妙なのは①で、CDではオランダとなっているのに、資料ではベルリンであること。日付は同じ頃なので同一録音のデータでしょうが、如何にいい加減であることか。
(このボックスの別の1枚には1985年のディジタル録音も収録されています。それはスイスでの録音)

当然ながらソナタと協奏曲では録音のコンセプトが違います。オーディオとして、私は断然ソナタが優れていると思いました。
アラウでなければ出せないような低音に中心を置いた、深くて重い音が良く捉えられています。

一方の協奏曲はピアノを主体にした録音で、オーケストラは後に追いやられ、ナマのコンサートで聴くバランスとはかなり異なります。例えば第1協奏曲では有名なトライアングルが出てきますが、これがほとんど聴き取れません。オケ全体も奥行き感が不明瞭で、協奏曲録音の難しさを露呈した1枚でしょう。
演奏はソナタも協奏曲も見事なもの。アラウはベルリンでマルティン・クラウゼに師事した人。クラウゼはリストの高弟ですから、アラウはリストの直系の孫弟子に当たります。
リストのピアニズムを現代に伝えるのは、アラウに学んだバレンボイムに受け継がれているだけでしょうか。
アラウの特徴は、超絶と言ってよいほどの技巧を持っていながら、あくまでも音楽の深い精神性を追求したことでしょう。このソナタでも協奏曲でも決して技巧をひけらかすショーピースにせず、むしろ詩的と呼べるほどに繊細な表現に徹していること。それでいて重量感が凄い。

ソナタは4つのトラックに分かれていて、Grandioso から2、Andante sostenuto から3、Allegro energico から4。
第1協奏曲は3楽章作品ですが、第2楽章の Allegretto vivace 、トライアングルが登場するところにもトラックが付けられています。
第2協奏曲は単一楽章作品。スコアでは6つの部分に分けることを推奨していますが、この盤は4分割。2は Allegro moderato (練習記号G)、3は allegro deciso (練習記号I)、4は Allegro animato (練習記号P)から。
尚、第2協奏曲でリストが指定した Un poco piu mosso からのカット可能箇所はカットせず、完全演奏で収録されています。

参照楽譜
①リー・ポケット・スコア LPS No.178
②オイレンブルク No.710
③オイレンブルク No.720

 

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