ギリシャから来た音楽家

6日のプロムスは、私にはジャンル違いで一日お休みしました。ということで今年のプロムスも愈々最終週。残り1週間はブレーメンから来た古楽アンサンブルを楽しみましょう。

9月7日 ≪Prom 65≫
モーツァルト/歌劇「後宮からの逃走」序曲
モーツァルト/レチタティーヴォ「テッサリアの人々よ」とアリア「永遠なる神よ、われは求めず」Popli di Tessaglia!-Io non chiedi, eterni dei K.316
モーツァルト/カッサシオン第1番~第2楽章アンダンテ
モーツァルト/アリア「いや、いや、それはあなたにはできない」no, no, che non sei capace K.419
モーツァルト/交響曲第35番
     ~休憩~
R.シュトラウス/歌劇「カプリッチョ」六重奏曲
R.シュトラウス/歌劇「ナクソス島のアリアドネ」~「偉大な女王」
ベートーヴェン/交響曲第7番
 Deutsche Kammerphilharmonie Bremen
 指揮/コンスタンチノス・カリディス Constantinos Carydis
 ソプラノ/ダナエ・コントーラ Danae Kontora

最初に指揮者とソリストに触れると、二人は何れもギリシャはアテネ出身の音楽家たち。西洋音楽の歴史書と言えば、最初に登場するのがギリシャというのが定番ですね。言ってみればギリシャは音楽最先進国なわけで、彼が後進国ドイツのモーツァルト、ベートーヴェン、シュトラウスをどう扱うのかが聴き所。ま、これは冗談ですが、世界最前線のクラシック音楽を体験することができるコンサートでもあります。

最初に二人のプロフィール。指揮のカリディスは、

https://www.harrisonparrott.com/artists/constantinos-carydis

これがプロムス・デビューとなるコントーラは、

https://www.danaekontora.com/

昨今の夜の女王には欠かせないコロラトゥーラですね。

このプロムス、並べられた作品がただ順序良く演奏されるのではなく、チョットしたストーリー風になっているのがミソ。
冒頭の序曲は演奏会用にアレンジされた終結部があるものではなく、オペラ原曲通りに半終止で終わります。その最後でコントーラが静かに入場し、そのままK316の演奏会用アリアに流れ込む。この歌曲はハ短調のレチタティーヴォで始まり、ハ長調のアリアに行こう。最初の序曲もハ長調で、ハ短調のエピソードも挿入されることから、調性的にも実に凝った選曲と言えるでしょう。

次のカッサシオンもハ長調で、アンダンテ楽章だけが序奏の様に演奏され、立て続けにK419へ。これまた両曲ともハ長調で、アリアはアンフォッシという同時代の作曲家の歌劇「軽はずみな変わり者」に挿入するためにモーツァルトが書き下ろしたもので、ほとんど夜の女王の世界でしょう。

このスタイルはプログラム後半も同じで、カプリッチョの前奏曲からそのままツェルビネッタのアリアに突入。同じ作曲家の別の作品を恰も一続きの音楽の様にプログラミングしてしまうところが、カリディスの面目躍如でしょうか。
モーツァルトにしてもベートーヴェンにしても、楽譜に書いてないことをやったり、譜面とは違うことをやってしまう。ハフナー交響曲を例にとれば、第1楽章の再現部、第3楽章のトリオ部など、ビックリすること間違いなし。繰り返しがあれば、多くの場合は同じことを繰り返しません。

私も20年前なら怒って中継を切ってしまう所ですが、こういう演奏もあり。実に寛容になったものですな。

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