今日の1枚(26)

今朝は寒かったですね。今シーズン一番冷え込んだ朝だったかも。ユリウス暦なら1月2日ですし、小正月でもあります。
ベイヌム/コンセルトへボウ管弦楽団の3枚目を取り上げます。最初に書き忘れましたが、このセットには分厚い解説書が付いていまして、ディスクの細かい情報はこれを参考にしています。執筆はケース・ヴィッセ Kees Wisse という方。
解説書はオランダ語、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語で書かれています。残念ながら日本語はなし。
3枚目の内容は、

①ルドルフ・メンゲルベルク/サルヴェ・レジーナ
②フランク/「プシケ」交響的断章
③ラヴェル/ピアノ協奏曲
④ドビュッシー/海

①は1939年10月2日、ソプラノ独唱はトー・ヴァン・デア・スルイース To van der Sluys という方。
②が1941年5月15日
③は1940年11月28日の収録で、ピアノはコール・デ・グロート Cor de Groot 。
④が1941年1月30日の演奏です。

①はコンセルトへボウならではの曲目。オランダの現代作品です。ルドルフ・メンゲルベルク Rudolf Mengelberg (1892-1959) は名指揮者ウィレム・メンゲルベルクの遠い親戚に当たる人で、ドイツ生まれ。1915年にオランダに移住しています。
もちろん作曲家ですが、1935年にコンセルトへボウ管のマネージャーに就任、オーケストラの運営面で大きな役割を果たしていたそうです。
彼の作品はオーケストラ作品のほか、コンサートホールで演奏するための宗教作品が多く残されています。難解な音楽ではなく、メロディーが豊かで構成もシッカリしています。

ここで演奏されているサルヴェ・レジーナ Salve Regina (1934) はソプラノ独唱(歌詞は当然ながらラテン語)と管弦楽のための11分ほどの作品。スコアが手に入らないので詳しいことは判りませんが、大まかに4部分で構成されているような感じ。第2部に相当する(感じられる)Ad te clamamus が作品のピークでしょうか。
まるでプッチーニのアリアを聴いているような美しい音楽で、ややポルタメントをかけた演奏が一層リリックな美しさを強調するよう。
ただし最初の3分ほどはノイズが酷く、一般的な意味での鑑賞に堪えられるものではありません。新しい録音で聴いてみたい作品。
ソプラノのスルイースも立派な歌唱で、中央部ではドラマティックな声を聴かせてくれます。

②は有名なニ短調交響曲と同時期の作品。何故今日では演奏されないのか不思議なほど、素晴らしい一編です。本来は合唱付きの大作ですが、オーケストラだけで演奏できるように4曲を選んで交響曲風に編んだもの。
第1楽章「プシケの眠り」 第2楽章「西風に運ばれたプシケ」 第3楽章「エロスの花園」 第4楽章「プシケとエロス」 で構成。
特に第4楽章は中間音域(ヴィオラとチェロ)の美しい音楽が魅力。ベイヌムのややポルタメントをかけたスタイルが作品に見事にマッチして名演を成し遂げています。
現代のコンサートホールに復帰することを切に願わずにはいられない佳曲。

③のソロを弾くグロートは当時のオランダの高名なピアニスト。メンゲルベルクとの録音も残されています。特にベートーヴェンとショパンの解釈には定評がありました。
一方で現代作品にも積極的で、このラヴェルも達者な一枚。
オーケストラ・パートにスコアとはやや違う箇所がいくつかありますが、指揮者の解釈なのか演奏譜の違いなのかは不明。
(第2楽章練習番号9の3小節目のフルート、第3楽章練習番号1の7小節目のトロンボーンなど)

④はベイヌムが最も愛したドビュッシー。全体にかなり速いテンポで通しているのが特徴。
第3楽章のファンファーレはデュランの決定版スコア通り省略。作品最後のコルネットの上昇音型もスコア通り。
解説に、ベイヌムとロサンジェルス・フィルのリハーサルでの一こまが紹介されています。
ベイヌムがフルートとオーボエ奏者に歩み寄り、“ここでは私はフルートは聴きたくない。オーボエも聴きたくない。私が聴きたいのはフローボエ Floboe だ。” と説明した由。
具体的な場所は、恐らく第3楽章のハープに乗って二つの楽器が重なるところ(練習番号54の7小節目から)か、クライマックスに向けて動き出す場面での重奏(練習番号58の5小節目から)だと思われます。
なるほどここを注意して聴いてみると、フルートでもオーボエでもなく、フローボエが鳴っていることに注目。

参照楽譜
①は無し。出版されているか否か不明。
②ヘフリッヒ No.336 (ライプチヒ市のライブラリーからのリプリント)
③デュラン D&F12150
④デュラン D&F6838

 

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