読売日響・第510回名曲シリーズ

昨日は、今年初めての読売日響のコンサートを聴いてきました。
その前に注文していた楽譜が入荷したということで、早めに出て本郷へ。物は11月に読響が日本初演するシュニトケの「リヴァプールのために」。
聴きどころを書くための準備ですが、受け取る際に同じシュニトケの第4ヴァイオリン協奏曲も発注。
“これは輸入した実績がないのですが・・・”
“いいですよ、不要不急のものですから。ダメモトで。”
何ともコストのかかるオーケストラですな。やれやれ。
昨日のサントリーは一風変わったプログラム。
モーツァルト/交響曲第40番
     ~休憩~
シューベルト(鈴木行一編曲)/「冬の旅」全曲
 指揮/ワルター・グガバウアー
 バリトン/フローリアン・プライ
 コンサートマスター/小森谷巧
 フォアシュピーラー/鈴木理恵子
読売日響の名曲シリーズにしては入りが悪かったですね。曲目の所為なのか演奏者故なのかは不明ですが、P席は半分も埋まっていない感じ。
私も初めて聴く指揮者、ソリストですし、もちろん「冬の旅」は知っていますが、オーケストラ版は初めての体験です。
恐らくリートの好きな人は尻込みしたでしょうし、オーケストラ好きには食指が動かない、そんなことでしょうか。会員席(と思しき良席)にも空席が目立っていました。
その初物グガバウアー。1955年にオーストリアのリンツで生まれ、ウィーン国立音大卒。長くウィーン少年合唱団の指揮を務め、現在は主に歌劇場で活動しているそうです。背の高い人。
このキャリアから想像されるとおり、いかにもウィーンの中道を行くモーツァルト。弦の編成は12型、クラリネットの入った版による演奏です。
変わったところと言えば、第2楽章と第3楽章のテンポが極めて速かったことでしょうか。第2楽章は8分の6拍子ですが、グガバウアーは「二つ振り」。ために、このアンダンテは踊りの音楽になっていました。ここだけは古楽スタイルのファンにも配慮した、ヴィブラートをあまり掛けないツルッとした音楽。
第3楽章も1小節を一つに振る指揮で、快速調。ただし、作品の持つ厳しさとは縁の遠い演奏です。
(この指揮者は指揮棒を持ち、スコアを見ながら指揮します。第2楽章だけは指揮棒を置いて振っていました)
驚いたのは繰り返しを徹底的に実行すること。モーツァルトが書いた繰り返し記号を全て忠実に再現したばかりか、第3楽章のメヌエットが回帰した際にも繰り返しを全部やりました。こういう演奏法を主張する説は知っていますし、実行した録音も聴いたことがありますが、ナマで聴こうとは思いませんでしたね。
とは言っても所謂オーセンティックな解釈ではなく、黄色い表紙のオイレンブルク・ポケット・スコアを使用しての指揮。
全体を通して指揮者も楽員も時折笑みを浮かべ、愉しげに演奏します。私がト短調交響曲に描いているイメージとはやや異なる演奏。
後半は珍しい管弦楽版による「冬の旅」。楽器編成に注目していましたが、前半のモーツァルトとほとんど同じ規模。いつもは休憩時の配置転換が慌しい読響ですが、この日はソリスト用に第1ヴァイオリンを一列ずらせただけ。あっという間に準備完了です。
木管は完全な2管編成ですが、第2フルートはピッコロに、第2オーボエはイングリッシュ・ホルンに夫々持ち替えます。これは予習CDで確認した通り。
金管はホルン2、トランペット2、ティンパニも入りますが、久し振りに菅原淳氏の担当です。
弦では、チェロがコントラバスと同じ2プルト、4人であることに注目。
演奏については簡単に触れておきます。
鈴木版は名バリトン、ヘルマン・プライの存在無しには生まれなかった編曲。初演もプライが行っています。
今日の独唱は、そのプライの子息をソリストに選んだ、という以外には意義を感じられない演奏でした。これを紹介するならもっと優れた日本人歌手が何人もいるはず。正直に告白すれば、全曲を聴き通すのにかなりの辛抱を強いられました。
それでも第21曲の「宿屋」が感動的だったこと、第23曲「幻の太陽」での素晴らしいチェロ四重奏が聴けたことを報告しておかなければいけないでしょう。これは鈴木行一の見事な編曲の賜物に違いありません。
親父さんとは似ても似つかないスラリとしたフローリアンに話を戻せば、「冬の旅」を歌うのに、いくら管弦楽版による演奏とは言え、譜面を見ながら歌うというのは如何なものでしょうか。
この日は対訳歌詞が配られていて、そのページを繰る音で客席がざわついたのも感心しません。配る方も配る方だけれど、見る方も見る方。歌の内容など予め勉強して来いよ、と、思わず叫びたくなりましたわ。
終わりもいけません。終わるのを待ち兼ねたような拍手。気持ちは分りますけどね。

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