トゥルヌソル

久し振りに競馬ネタを書こうと思います。それも日本の競馬。
明日の京成杯にモンテトゥルヌソルという馬が出走を予定していて、「モンテトゥルヌソル/偉大な名に応える」というニュースがヤフーなどにも掲載されていました。
昭和初期の名種牡馬にあやかってネーミングされた馬。馬名に使われたトゥルヌソルは「ヒサトモ、クリフジなど史上最多となるダービー馬6頭を送り出すなどした、1930~40年代を代表する名種牡馬。毛利オーナーと同じ1922年生まれだったことから」命名されたという解説。
トゥルヌソルの生まれた1922年も、その産駒が活躍した1930・40年代も、私は競馬と無縁どころか生まれてもいませんでしたが、その昔に日本の競走馬の血統を調べていたころは何度もお世話になった名前です。
ここでチョッとプロフィールを。
トゥルヌソル Tournesol は フランス語で「ひまわり」のこと。文字通り太陽(sol)を回る(tourne)という意味です。名前から想像されるとおり、フランス産馬ですね。父はゲインズバラ Gainsborough 母はソリスト Soliste 。
フランス産ながら調教も競馬もイギリス。クラシック・レースには縁がありませんでしたが、現在のパターン・レース・クラスの重賞には勝っています。競走馬から引退すると同時に輸入され、下総御料牧場で供用されていました。父のゲインズバラが三冠馬だったことで、血統に期待が高かったのでしょう。
当時は外国の種牡馬の数も少なく、御料牧場のトゥルヌソルと、小岩井牧場のシアンモア Shian Mor (父・バッカン Buchan) とはライバル関係にありました。
トゥルヌソルは1928年から種牡馬として供用されましたから、1929年生まれが初産駒です。この初年度の中に、ダービー(もちろん日本ダービー/東京優駿)を制したワカタカがいました。
以下、年度毎に大レースの勝馬を列記すると、
1929 ワカタカ (ダービー)
1931 アトランタ (中山記念)
1932 ツキヤス (目黒記念)
1932 モアーザン (中山記念3回)
1933 トクマサ (ダービー、目黒記念、中山記念)
1934 ヒサトモ (ダービー、天皇賞)
1934 ハッピーマイト (天皇賞)
1934 アヅマダケ (目黒記念)
1934 ホウネン (目黒記念)
1936 ソールレディ (桜花賞)
1936 クモハタ (ダービー)
1936 トキノチカラ (天皇賞)
1937 イエリュウ (ダービー)
1938 テツバンザイ (オークス)
1939 クレタケ (中山記念)
1940 クリフジ (ダービー、オークス、菊花賞)
1941 クリヤマト (皐月賞)
何しろ日本ではクラシックレース体系が漸く整理されつつあった時代、他の大レースとしては天皇賞、中山記念、目黒記念しかなかったんですから、その辺は吟味しなきゃいけませんよ。
今でも酒席のネタになるのは、産駒はどれも重馬場に強かったこと。当時の競馬場の水捌けが悪かったこともあるでしょうが、ワカタカ、トクマサ、クモハタは重馬場のダービーでしたからね。
牝馬のクリフジは11戦無敗。牝馬ながらダービーも菊花賞も制しています。当時のオークスは秋でしたから(阪神競馬場)、菊花賞狙いのステップレースとして圧勝したんでしたっけ。
この中から種馬として成功したのは、何と言ってもクモハタでしょう。いわゆる内国産種牡馬の雄ですが、戦争と終戦の影響下、1952年から1957年までリーディング・サイヤーに輝いています。
クモハタの産駒は、天皇賞(カツフジ、ニューフォード、ヤシマドオター、ハタカゼ、ミツハタ、クインナルビー、メイヂヒカリ、)、菊花賞(ニューフォード、メイヂヒカリ)、桜花賞(ヤシマドオター)、オークス(キヨフジ)など多くの活躍馬を出しましたが、やはり大器晩成タイプが目立ちます。
中でも強かったのはメイヂヒカリ。菊花賞と天皇賞を制し、新設された有馬記念(この時は中山グランプリというレース名でしたが)を待って引退を延期し、グランプリを圧勝した強さ。
日本最強馬は何か、という話題がいつも賑やかに議論されますが、私はシンザンでも、シンボリルドルフでも、ディープインパクトでもなく、躊躇いなく「メイヂヒカリ」を挙げますね。
話が逸れましたが、トゥルヌソルに代表されるゲインズバラ系。今日ではハイぺリオン Hyperion から枝を伸ばしているアルゼンチンのアリストファネス系と、スプリンターに活路を見出したテューダーミンストレル系が僅かに残るばかり。
名前だけではあっても、久し振りに「ひまわり」を応援しようじゃないか。

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