今日の1枚(28)

今日は土用の入りです。冬の土用。で、今日の1枚を続けますが、ベイヌム指揮コンセルトへボウ管弦楽団のライヴ録音集。今日の1枚が戦前の記録の最後になります。ということは、メンゲルベルク治世下の最終便。一応ここで一区切りしましょう。
①ドビュッシー/春
②レーガー/管弦楽のための「バレエ組曲」
③バルトーク/管弦楽のための協奏曲
録音データは、
①1942年7月8日
②1943年7月18日
実は③が問題で、ベイヌムはこのバルトーク作品を何度も演奏して高い評価を受けていますが、コンセルトへボウとのライヴ録音は残っていないそうです。ガラス・ディスクが失われたのかも知れません。
この1枚に収められているのは、1948年にデッカに録音した正規のスタジオ録音です。
ところが、これをデッカが出している同じ物と比較すると、著しく状態が悪いのです。私の手元にある盤と聞き比べてみましたが、同じものということは確認できましたが、まるで音質が異なります。
理由は判りませんが、恐らくベースにしたSP盤の状態によるのでしょう。
従ってバルトークはいずれデッカ盤を取り上げる時に回して、今日の1枚では割愛します。
なおデータですが、ライヴ録音集に収められたものは1948年9月10日と記載されています。一方のデッカ盤は9月20日。データなどというものはこんなものでしょう。たかがデータ、されどデータではあります。
①海でも紹介したとおり、ベイヌムはドビュッシーを得意にしていました。しかし「春」はあまり演奏したことがないそうで、これは貴重な記録です。
もちろんドビュッシー監修の元にアンリ・ビュッセルが再構築したオーケストラ版による演奏。(オリジナルの女声合唱付き版は失われています)
残念ながら録音状態があまり良くなく、例えば冒頭のフルートとピアノのユニゾンも、ピアノの音がほとんど聴き取れません。全体的な雰囲気が伝わってくる程度の録音。
最後の拍手が妙に残響を伴い、電気的に細工されているような感じに聞こえるのが不思議。
②は素晴らしいものです。もちろん音質は①とあまり変わりませんが・・・。
現在ではレーガーは滅多に演奏されることはありません。真に残念な事態と言わざるを得ません。
ベイヌムはこれを大変得意にしていて、コンセルトへボウでは都合8回も取り上げているそうです。これはその一つの記録。
演奏会だけでなく、ベイヌムにはバレエ組曲の正規録音も残されています。ベイヌムはデッカとフィリップスの録音が知られていますが、その以前はポリドールにも録音していました。数は少ないのですが、そのカタログにあるのがレーガー。
レコード録音百科事典で調べたところ、ポリドールの Pol 68227/8 という品番、2枚組み4面のSPで発売されていました。第5曲のみはシベリウスと組んだ1枚ものでも(Pol 68411)出ています。もちろんコンセルトへボウとの収録。
(ベイヌムは同じポリドールに、レーガーのモーツァルト変奏曲も録音しています)
このスタジオ録音は、ライヴ録音集の解説によれば、1943年5月収録だそうで、ライヴ録音の2ヶ月前のものということになります。
レーガーは作曲だけでなく、オルガン奏者、指揮者としても有名だった人で、1916年3月にはコンセルトへボウを振っています。これがレーガーの指揮者としての最後の演奏。この年の5月11日にライプチヒで、43歳の若さで亡くなりました。働き過ぎから来る心臓発作ですね。
指揮者としては、有名なマイニンゲンのオーケストラを率いていましたし、最も得意としていたのはドビュッシー。
バレエ組曲は、そのドビュッシーの影響の強いもので、イタリアのコメディア・デ・ラルテからヒントを得た作品。この傾向のものとしては、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」、シェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」と並ぶ三大傑作の一つでしょう。
ベイヌムはこの作品を完璧に理解していて、劣悪な録音の中からも優れた演奏が聴き取れます。
作品は、「入場」 「コロンビーヌ」 「ハルレキン」 「ピエロとピエレット」 「愛のワルツ」 「終曲」の6曲構成。それにしても「愛のワルツ」の素晴らしいことよ!!
2005年に復刻出版されたヘフリッヒのスコアに、ウィリアム・グリム William Grim の、作品とレーガーに関する素晴らしい解説が載っています。
参照楽譜
①デュラン D&C 8759
②ヘフリッヒ No.403

 

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