2020年・室内楽事始め

1月も中旬を過ぎると、本格的な演奏会シーズンに突入してきます。小生も先頃のフル・オーケストラに続き、今年の室内楽聴き初めを体験してきました。
チョッと捻って千葉県浦安市にある浦安音楽ホールで行われたマチネー、「クァルテット・エクセルシオ×ストリング・クワルテットARCO」という豪華なメンバーによる以下のプログラム。

ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第4番ハ短調作品18-4
ドヴォルザーク/弦楽四重奏曲第12番ヘ長調作品96「アメリカ」
     ~休憩~
メンデルスゾーン/弦楽八重奏曲変ホ長調作品20
 クァルテット・エクセルシオ
 ストリング・クワルテットARCO

旧江戸川を挟んで東京都江戸川区と接する浦安市、住民の半数は都心に通勤しているということで、アクセスの良いことが売り。ということは都心からもアクセスが良いということで、休日ともなれば日本を代表するテーマパーク・ディズニーランドを目指す家族連れで賑わう街でもあります。そもそも「浦、安かれ」という言葉が起源と言われ、日本書紀にも出てくる由緒正しい地区。ここで一年最初の室内楽を楽しむのは縁起の良いことに違いありません。ましてや最初がベートーヴェンだったのですから、言うことなし。
この日は朝から雪交じりの雨、つまり霙が降り続いていましたが、ホールは8人の奏者の熱演、喝采を送る多くのファンで熱気に溢れていました。
プログラムは二つのクァルテットが夫々の得意曲を披露し、後半は合体して大いに盛り上がろうという企画。選ばれた作品も名曲ばかりで、浦安市民ならずとも食指を動かされたのじゃないでしょうか。

クァルテット・エクセルシオについては改めて紹介することもないでしょう。当ブログの中心となる団体の一つ。
方やストリング・クワルテットARCO(以下、アルコと略します)は多分、初めて紹介する団体。実は大晦日のベートーヴェン連続演奏会の常連として出演しており、私も聴いてはいるのですが、ブログで取り上げるのは初めてでしょう。先ずはメンバーを紹介すると、ファーストは伊藤亮太郎、セカンドが双紙正哉、ヴィオラに柳瀬省太、チェロが古川展生という4人の男性グループ。名前を聞けばお分かりのように、東京のメジャー・オケで首席を務める腕利きたちの団体です。ヴィオラの柳瀬は2代目とのこと。
アルコが結成されたのは1996年で、活動歴24年と今やヴェテランの領域。大阪国際室内楽コンクールで入賞した実績もあり、日本各地の音楽祭に欠かせない存在でもあります。ただ常設団体ではないため、どうしても活動は4人のスケジュールの合間を縫うことになるのは致し方ないところでしょう。

ということで、前半はエクのベートーヴェン、アルコのドヴォルザークの順で演奏されました。2曲の間にエクのチェロ大友が挨拶、簡単にアルコを紹介します。何と大友とアルコの柳瀬・古川は小学生の頃から同じ教室に通っていた仲間だったそうで、同じ世界に飛び込みながら別の道を歩んだ仲間たち、浦安の素晴らしいホールで共に弾くメンデルスゾーンには感慨も深かったことでしょう。

ベートーヴェンとドヴォルザーク。そこには弦楽四重奏一筋の常設クァルテットと、プロではありながら弦楽四重奏としてはアマチュアに近いグループとの差は、当然ながらあります。その違いが最もよく判るのは、やはり緩徐楽章でしょう。表現するのは難しいのですが、敢えて私流に考えれば、4つのパートが緻密に譜面を再現した結果、ピタリと合うのがアルコ。反してピタリと合わせるために緻密にアンサンブルを磨く、というのがエクじゃないでしょうか。アメリカの第2楽章、ここに二つの団体の違いが凝縮されていたように聴きました。

後半のメンデルスゾーン、これは前半とは違い、室内楽というより小型のオーケストラとでも言うべき世界。8人が奏でる和が、ほぼ同じ世代、幼馴染や学友たちの合奏とあれば和気藹々の喜びが客席にも伝播してきます。古川曰く「涙が出そうなほどの感激」に、こちらももらい泣きしてしまいましたね。
この日の並びは、舞台下手からアルコ・エク・エク・アルコ・エク・アルコ・アルコ・エクの順。第4楽章のフーガ風の入りは、ハッちゃん→のぶちゃん→省ちゃん→吉田→双紙→北見→西野→伊藤の流れでした。

演奏を終えて、大友と古川が感謝と感想を、柳瀬が今後の抱負を語ってからのアンコール。メンデルスゾーンの終楽章が高らかに、名残惜し気に奏でられて豪華なマチネーの幕を下ろします。
演奏後は8人が座る賑やかなサイン会。ついつい皆の笑顔に見惚れて、最後の写真撮影大会まで居残ってしまいました。

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