ウィーン国立歌劇場アーカイヴ(14)
昨日「アリオダンテ」を紹介した時に14日以降のアーカイヴ配信は未定と書きましたが、その記事をアップするとほぼ同時にウィーンからの発表がありました。オッタヴァ・テレビのホームページでは未だ記載がありませんが、今回のアーカイヴ配信は更に継続され、4月30日までの具体的な内容がウィーン国立歌劇場のホームページに掲載されています。
詳しくはそちらを見て頂きたいのですが、例えば本来なら4月後半に上演されるはずだった「アルジェリアのイタリア女」が2種類、5月初めに予定されていた「フィデリオ」に至っては3種類の公演がアーカイヴ放送されます。その他にも「蝶々夫人」が二通りの公演を聴けますし、「ばらの騎士」「カプリッチョ」というリヒャルト・シュトラウス演目が並んだり、ネトレプコとガランチャが共演する「アンナ・ボレーナ」なども待っています。
さて現地の9日に配信されたのは「パルジファル」。ご存じのように今年は暦の関係で4月10日が復活祭、聖金曜日に当たっていますね。キリスト教世界では聖金曜日はあくまでも休息日ですから、ウィーンでも10日は配信もありません。
その代わり、というか前日の9日と、復活祭明けの12日にも「パルジファル」が配信され、更には15日にも3種類目の「パルジファル」も観ることが出来るようです。正にワーグナー週間。当欄では当初この演目は纏めて取り上げようと思っていたのですが、14日以降のホット・ニュースを紹介したかったのと、このあと配信される2種類の「パルジファル」では演出が異なるため、予定を早めてお知らせすることにした次第です。
ということでミーリッツ演出の「パルジファル」。そもそもこの舞台神聖祝典劇は鑑賞するのが大変で、小欄も早起きして見始め、2度の休憩を挟んで見終えると昼の12時チョッと前という難行苦行でしたね。余程のワーグナー好きならいざ知らず、もっと気軽にオペラを、外出自粛の機会にワーグナーのオペラとやらを見てみるか、と考えておられる皆様には余りお勧めしません。尤も時間を持て余している方には却ってありがたいかもしれませんが・・・。
2015年4月5日の公演、といいますからこの年はこの日が聖金曜日前日だったのでしょうか。何も全ての配役を書き出すまでもなかったのですが、これまでのアーカイヴ配信ですっかりお馴染みとなったウィーン国立歌劇場のアンサンブル・メンバーたちも大挙登場していますので、全員の名前をクレジットしておきました。
アムフォルタス/ミヒャエル・フォレ Michael Volle
ティトゥーレル/ライアン・スピード・グリーン Ryan Speedo Green
グルネマンツ/ステファン・ミリング Stephen Milling
パルジファル/ヨハン・ボータ Johan Botha
クリングゾール/ボアズ・ダニエル Boaz Daniel
クンドリー/アンゲラ・デノケ Angela Denoke
小姓1/キャサリン・トロットマン Catherine Trottmann
小姓2/ヒョナ・コ Hyuna Ko
小姓3/ジェイソン・ブリッジス Jason Bridges
小姓4/ペーター・ジェロシッツ Peter Jelosits
聖杯守護騎士1/ミヒャエル・ロイダー Michael Roider
聖杯守護騎士2/イェフヘニー・カピトゥーラ Yevheniy Kapitula
花の乙女1/イレアナ・トンカ Ileana Tonca
花の乙女2/オルガ・べズメルトナ Olga Bezmertna
花の乙女3/マルガリータ・グリツコヴァ Margarita Gritskova
花の乙女4/ヒラ・ファヒマ Hila Fahima
花の乙女5/ヒョナ・コ Hyuna Ko
花の乙女6/スザンヌ・ヘンドリックス Suzanne Hendrix
天上からの声/モニカ・ボヒネク Monika Bohinec
指揮/アダム・フィッシャー Adam Fischer
演出/クリスティーネ・ミーリッツ Christine Mielitz
舞台装置/ステファン・マイアー Stefan Mayer
この中で、例えばティトゥーレル役のグリーンは実際には舞台裏で歌っており、演じているのは別の役者さん。第1幕で聴こえてくる天の声も、ボヒネクは舞台裏からの声でしょう。二人ともカーテンコールにも出てきません。
カーテンコールと言えば、第1幕のあとにはありません。この幕は最後に聖餐式が行われるため、第1幕のあとでは拍手もしない、というのがウィーンの習慣なのでしょう。それでもパラパラと手を叩く人がいますが、それを「シーッ」と言って制する音も聞こえてきます。当然ながら第1幕の後ではカーテンコールがありません。仏教徒が多い日本では中々馴染めない慣習なのですが、以前に私が何度か見た日本の舞台でも、訳知り顔に拍手を制する連中がいて閉口したものです。
見終わって些か疲れたので簡単に感想を書くと、第2幕の「魔の花園」はほとんどキャバレーですね。クリングゾールの金ぴか衣装、艶めかしい花の乙女たちを楽しんで見ても良いのでしょうか。クンドリーが医者のような人物に注射されて変身させられる、というのもありかな。
第1幕の聖餐式の場面でも、第3幕第2場でティトゥーレルの遺骸(生身の人間が演じている)を棺から転げ出したりと、結構刺激的な演出もありました。最後でクンドリーがセリ舞台に乗って上がっていくのは、彼女の死を象徴しているのでしょう。幕切れで舞台前面にズラリと並ぶのは男性のみ、というのが如何にも「男のオペラ」という感じ。
次のヘルマニス演出との比較が楽しみになってきました。
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