東京籠城日記(5)

現実の演奏会から遠ざかって1か月以上が経ちましたが、昨今の状況では未だまだこの状況は長引くのではと懸念されます。そんな折、千葉県の長柄町にあるゴーシュ音楽院から郵便が届きました。開封すると、4月3日から5日まで真名カントリークラブで開催される予定だった「ながらの春・室内楽の和音楽祭」のプログラムです。
開催に向けて準備が進み、プログラムも出来上がっていた時点での中止決定。関係諸氏の精神的打撃、経済的損失を思うと胸が痛むのですが、ここは日本全体が疫病克服に向けて結集すべき時、改めて全員が心を合わせて団結しようと思います。

さて公式には第5回目となる筈だった音楽祭ですが、今年は3月30日から3日間のセミナー、そのあと4月3日から三日間がコンサートという計画でした。音楽祭全体が中止となった時、当初コンサートだけは無観客で実施し、それをDVDに収めるという計画が持ち上がりましたが、関係者が集まれば3密の条件を満たしてしまうこととなり、最終的には断念せざるを得なかった由。結果的には正しい判断だったと評価しています。
そこで今日は、本来ならば参加したはずの音楽祭のプログラムを紹介し、朝昼晩でも、三日間掛けても良し、様々な音源を使いながら自宅で「空想の音楽会」を開催することといたしましょう。ではプログラムからどうぞ。

4月3日
モーツァルト/フルート四重奏曲第3番K285b
ベートーヴェン/大フーガ作品130
     ~休憩~
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第13番作品130
 クァルテット・エクセルシオ
 フルート/山野雅美

4月4日
ドホナーニ/セレナーデ作品10
ベートーヴェン/ロンドWoO41
ドヴォルザーク(クライスラー編)/スラヴ幻想曲
ウェーベルン/緩徐楽章
     ~休憩~
ベートーヴェン/弦楽五重奏曲作品29
 クァルテット・エクセルシオ
 ヴァイオリン/高橋渚
 ヴィオラ/高橋梓
 ピアノ/野本哲雄

4月5日
モーツァルト/弦楽四重奏曲第3番K156
ダマーズ/演奏会用ソナタ
     ~休憩~
ショスタコーヴィチ/ピアノ五重奏曲
 クァルテット・エクセルシオ
 フルート/宮本夢加
 チェロ/大友肇
 ピアノ/野本哲雄、上野範子

今年の音楽祭は、当然ながらベートーヴェン生誕250年を記念して後期の弦楽四重奏曲が選ばれました。定番の作品以外にも中々普通のコンサートでは聴けないヴァイオリンとピアノのためのロンドや、ヴィオラを加えた弦楽五重奏曲も並んでいます。
音楽祭の最後は、エクとしてもチャレンジになる筈だったショスタコーヴィチの大作もあります。ドホナーニのセレナーデはヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの三重奏。最終日には珍しいダマーズの作品も取り上げられました。

ダマーズは2013年に亡くなったフランスの作曲家で、演奏会用ソナタは、フルートを勉強している方以外は殆ど聴いたことがない作品かと思われます。
曲はフルート・ソロとピアノ伴奏という二重奏版と、これにチェロが加わるトリオ版とがあります。今回は宮本・大友・野本の三重奏版で演奏される予定でした。楽譜はムラマツ・フルートから出ていますので、興味ある方は検索してみてください。

さて自宅での空想音楽会、音源をお持ちでない方でもNMLなら全て揃います。ダマーズ作品はフルート・ピアノ版が一点、トリオ版は2点が配信中。

ところで毎春音楽祭が開かれる長柄町は、自然豊かな里山が広がる長閑な田園地帯。虫好きな私は、ここでウラナミアカシジミの写真を撮ったり、オオムラサキを目撃したこともあります。今頃ならハナカミキリも頻りに飛んでいることでしょう。鳥好きな方はウグイスが頻りに囀るのを聞くことが出来ますし、去年は里山を歩いていて偶然アオジの一団に出会ったりもしました。
皆様も房総の隠れ里に一度足を運んでください。音楽祭の期間中なら、これに加えて質の高い音楽が聴けるのですから・・・。

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