今日の1枚(35)

ベイヌムも佳境に入ってきました。今日はこれです。
①レスピーギ/ローマの泉
②ヘンドリク・アンドリーセン/苦痛の鏡
③シェーンベルク/管弦楽のための5小品 作品16
④ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第3番ハ短調作品37
録音データと共演者は、
①1949年10月16日
②1952年12月21日、ソプラノ独唱はイルマ・コラッシ Irma Kolassi
③1951年10月12日
④1952年12月18日、ピアノはソロモン
①はベイヌムとしては珍しいレパートリー。もちろん正規録音はありませんし、レスピーギの作品そのものもあまり取り上げたことはない由。
②は現代オランダの作品。アンドリーセン (1892-1981) はベイヌムが頻繁に取り上げた作曲家で、オルガニストとしても高名だった人。
「苦痛の鏡」 Miroir de Peine は本来はソプラノ独唱とオルガン伴奏による作品。1923年のオリジナルを1933年に弦楽合奏の伴奏に編曲したものです。
曲はフランスの詩人アンリ・ヴァンジョン Henri Vangeon のフランス語の詩に作曲した5曲からなる歌曲集。各曲のタイトルは、
1.「庭での罵倒」 Agonie au jardin
2.「キリストの笞刑」(ちけい) Flagellation
3.「キリストの荊冠」(けいかん) Couronnement d’epines
4.「十字架を担いて」 Portement de Croix
5.「キリストの磔刑」(たっけい) Crucifixion
キリストの逮捕から処刑までの各場面を描いたもの。5幅の宗教画といった趣の素晴らしい作品です。ローカルなオランダの現代音楽として聴かれずにいるのは何とも勿体無い。
第2曲の前後に登場するヴァイオリン・ソロ、第4曲のあたかもキリストが十字架を背負って歩く様を描写したような低弦のピチカートが印象的。
歌っているコラッシについての記述がなく、どういうソプラノかについては不明ですが、真摯な歌唱に惹き付けられます。
③もベイヌムには珍しいレパートリー。彼はメロディーやハーモニーを重視していた指揮者なので、シェーンベルクはほとんど手を付けていません。
この録音は1951年に亡くなったシェーンベルクを追悼する目的もあって組まれたプログラム。
④のソロを弾くソロモンは、本名がソロモン・カットナー Solomon Cutner 。「ソロモン」はペンネームですが、「イチロー」の先取りでしょうか。
8歳でチャイコフスキーの第1協奏曲を弾いてデビューしたというとんでもない人ですが、一時期ピアノが大嫌いになって引退していたことも。
ここではベートーヴェンのものではないカデンツァを弾いているのが珍しい盤。解説には誰のものか指摘はありません。ソロモンが正規に残した録音(EMI、メンゲス指揮のステレオ収録)ではクララ・シューマン作とクレジットされていて、聴いた限りではこれと同じだと思います。
このライヴも凄いテクニックが聴けますし、日本でほとんど知られていないのは不可解。大変な名演奏でしょう。
なお、このCDは①~③では聴衆の拍手がカットされています。収録時間(79分14秒)の関係でカットしたと思われますが、作品の性格上、フライング拍手にならなかったことが幸いしたかも。
特に②の録音状態が良いのはラッキー。
参照楽譜
①リコルディ PR438
②なし。ただしオランダのドネムス社からスコアが販売されている由
③ペータース Nr.3376a
④オイレンブルク No.704

 

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください