ウィーン国立歌劇場アーカイヴ(31)

「セヴィリアの理髪師」に続いてチャイコフスキーのバレエ「白鳥の湖」が配信されたウィーン国立歌劇場のアーカイヴ、バレエはパスして次の演目を取り上げましょう。リヒャルト・シュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」です。
ウィーン国立歌劇場の2019-20シーズンの目玉の一つはリヒャルト・シュトラウス・シリーズで、「サロメ」「ナクソス島のアリアドネ」「影のない女」「エレクトラ」「ばらの騎士」「アラベラ」が次々と取り上げられる予定になっていました。3月中旬に歌劇場が閉鎖され、シリーズとしては「エレクトラ」まで進んだところで強制的に中断されてしまったことになります。

そこで無料アーカイヴ・シリーズでも基本的なスケジュールに沿って配信が組まれており、このあとも「アラベラ」が放映される予定。日本時間では13日限定で見ることが出来る「ナクソス島のアリアドネ」は、去年10月にライブで配信された公演と同じ演出による舞台ですから、べヒトルフ演出のキモについては10月の記事をお読みください。
今回のアーカイヴは6年前、2014年10月23日の公演記録で、ユニテルが作成した映像。見慣れている配信より解像度も優れていますし、カメラワークも若干異なっていました。タイトルロールの出し方も恐らくDVD用に作られているのだろうと思われます。

何と言っても指揮者がティーレマンであるところがミソで、客席の反応も “待ってました、ティーレマン” と言わんばかり。コンマスもライナー・キュッヒルということで、見る方の関心がピットに向いてしまう嫌いはありましょう。改めてキャストは以下の通りで、去年の公演と共通するのは音楽教師のシュメッケンベッヒャー、ツェルピネッタのファリー位のものでしょうか。

執事長(語り)/ペーター・マティツ Peter Matic
音楽教師/ヨッヘン・シュメッケンベッヒャー Jochen Schmeckenbecher
作曲家/ソフィー・コッホ Sophie Koch
テノール歌手(バッカス)/ヨハン・ボータ Johan Botha
士官/ダニエル・レケシュ Daniel Lokos
舞踏教師/ノルベルト・エルンスト Norbert Ernst
ツェルビネッタ/ダニエラ・ファリー Daniela Fally
プリマドンナ(アリアドネ)/ソワール・イソコスキ Soile Isokoski
かつら師/ウォン・チェル・ソン Won Cheol Song
召使/マルクス・ペルズ Marcus Pelz
ハルレキン/アダム・プラチェツカ Adam Plachetka
スカラムッチョ/カルロス・オスナ Carlos Osuna
トゥルファルディン/パク・ヨンミン Jongmin Park
ブリゲッラ/ベンジャミン・ブリュンス Benjamin Bruns
ナヤーデ/ヴァレンチナ・ナフォルニツァ Valentina Nafornita
ドリヤーデ/オルガ・べズメルトナ Olga Bezmertna
エコー/レーチェル・フレンケル Rachel Frenkel
指揮/クリスチャン・ティーレマン Chiristian Thielemann
演出/スヴェン=エリク・べヒトルフ Sven-Eric Bechtolf
舞台/ロルフ・グリッテンベルク Rolf Glittenberg
衣装/マリアンネ・グリッテンベルク Marianne Glittenberg
照明/ユルゲン・ホフマン Jurgen Hoffmann

今回改めて見直してみて、実に良く考えられた演出であることに感心しました。何度見ても新しい発見がある舞台ということでしょうか。それはシュトラウスの音楽も同じで、聴く度に惹き込まれていくオペラ。
特に第2幕の劇中劇は、若い頃は中々親しめなかったものですが、今回などは次々と変化していく場面夫々に深い味わいがあることにハッとさせられます。シュトラウスには素晴らしい歌曲、それもオーケストラ伴奏による歌曲が数多くあるのですが、一見すると悲劇と笑劇のごちゃまぜの中にも素晴らしい「管弦楽伴奏付き歌曲」が含まれている。その典型がツェルピネッタが歌うレシタティーヴォとアリアでしょう。

このオペラ、死ぬまでにあと何度接することが出来るかは分かりませんが、最後まで見飽きた、という感想を持つことはないと思いますね。ティーレマンによるアリアドネも心行くまで楽しみましょう。

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