ウィーン国立歌劇場アーカイヴ(32)
ウィーン国立歌劇場のアーカイヴ・シリーズ、昨日はドニゼッティの「ドン・パスクワーレ」が配信されて大変楽しかったのですが、この演目は17日にも別キャスト公演が放映されますので、感想は二つ纏めてと致します。
そこで今日は、アーカイヴとして第2サイクルともなるワーグナー「ニーベルングの指環」シリーズから第一弾となる「ラインの黄金」を紹介しましょう。このあと順に、上記ドン・パスクワーレを挟んでワルキューレ、ジークフリート、神々の黄昏と続きます。
思えばコロナ禍によって歌劇場が閉鎖され、アーカイヴ配信がスタートしたのは正にこの「ラインの黄金」からでした。当初は3月一杯の予定でしたが、その後閉鎖が延長され、最終的にはシーズンそのものの終了も余儀なくされたことは皆さまご承知の通り。
本来なら3月のライブ・ストリーミングは「トゥーランドット」の次に予定されていたのが「ラインの黄金」。アーカイヴも二巡目に入ったということでしょうか。
3月のアーカイヴ配信では、3シーズンに亘る指環サイクルからの抜粋という形で、2015年ラトル指揮のワルキューレ、2016年フィッシャー指揮のラインの黄金、そして2019年コーバー指揮のジークフリートと神々の黄昏というラインナップ。演出は全てべヒトルフですからサイクルとしての一貫性は保たれていました。
今日から始まるサイクルは、公演年度順に挙げれば2014年ラトル指揮のジークフリート、2017年シュナイダー指揮の神々の黄昏、2018年フィッシャー指揮でワルキューレ、そして2019年コーバー指揮ラインの黄金ということになります。ということは2014年から6年連続の指環サイクルということで、如何にこの大作がウィーンでは欠かせない年中行事になっているかが判ろうというもの。その意味でも、2020年の公演が中止になったのは歴史上稀有なことと言えそうですね。
さて指環に付いては改めて紹介することもありませんが、3月のシリーズを見逃した方は是非今回の配信でウィーンのリング、べヒトルフ演出の指環を味わってください。上記の様に2019年1月8日の公演記録で、配役は以下の通り。
ヴォータン/トマーシュ・コニエチュニー Tomasz Konieczny
ローゲ/ノルベルト・エルンスト Norbert Ernst
フリッカ/ソフィー・コッホ Sophie Koch
エルダ/モニカ・ボヒネク Monika Bohinec
アルベリッヒ/ヨッヘン・シュメッケンベッヒャー Jochen Schmeckenbecher
ドンナー/クレメンス・ウンターライナー Clemens Unterreiner
フロー/イェルク・シュナイダー Jorg Schneider
フライア/アンナ・ガブラー Anna Gabler
ミーメ/ヘルヴィッヒ・ペコラーロ Herwig Pecoraro
ファゾルト/パク・ヨンミン Jongmin Park
ファフナー/ソリン・コリバン Sorin Coliban
ヴォークリンデ/イレアナ・トンカ Ileana Tonca
ウェルグンデ/ステファニー・ハウツィール Stephanie Houtzeel
フロースヒルデ/ボンジヴェ・ナカニ Bongiwe Nakani
指揮/アクセル・コーバー Axel Kober
演出/スヴェン=エリック・べヒトルフ Sven-Eric Bechtolf
舞台/ロルフ・グリッテンベルク Rolf Glittenberg
衣装/マリアンヌ・グリッテンベルク Marianne Glittenberg
ビデオ/フリードリッヒ・ツォルン Friedrich Zorn
前回のキャストとはヴォータン、ローゲ、アルベリヒ、ミーメ、ファフナーが共通していますから、同じビデオを見ているような錯覚に陥ります。
フリッカのコッホは、既にアーカイヴ配信されたウェルテル(シャルロット)、ナクソス島のアリアドネ(作曲家)でもお馴染み。フライアのガブラーも、未だ当ブログでは取り上げていませんが、魔弾の射手でアガーテを歌っていたソプラノ。ほぼ全員が何処かで見た「顔」で、これまで見たどの「ラインの黄金」より親しみを感じます。
誰が主役、タイトルロールとは断定できない作品ですから、カーテンコールでもその都度全員が登場して客席の喝采を浴びます。登場人物が多い上、巨人族の二人などは歩く事すら容易ではない衣装なので、終わってからも時間が掛かるカーテンコールでした。やはりヴォータン、ローゲ、アルベリヒに拍手が集まりますが、何と言っても指揮者アクセル・コーバー、そしてウィーン・フィルこそ主役と言えるかもしれません。
残念なことに今回の「ラインの黄金」は、最も新しい公演であるにも関わらず音質が割れ気味で、些か耳障りに感じられる部分がありました。収録そのものに問題があったのかも知れません。
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