ウィーン国立歌劇場アーカイヴ(41)
今朝、というか現地ウィーンでは28日に6月分のアーカイヴ配信予定が発表になりました。前半はリヒャルト・シュトラウスが多く、後半は予想通りヴェルディの名作が並びます。詳しくはウィーン国立歌劇場の Wiener Staatsoper Live at Home のホームページを見て頂くこととして、今日は今朝から明日一杯の二日間視聴できるワーグナー「トリスタンとイゾルデ」を紹介しましょう。
2015年1月18日の公演の記録で、次のような豪華キャストで行われた素晴らしい舞台です。どうかお見逃しなく。
トリスタン/ペーター・ザイフェルト Peter Seiffert
イゾルデ/イレーネ・セオリン Irene Theorin
マルケ王/アルベルト・ドーメン Albert Dohmen
クルヴェナル/トーマス・コニェチュニー Tomasz Konieczny
ブランゲーネ/ペトラ・ラング Petra Lang
メロート/ガブリエル・ベルムデツ Gabriel Bermudez
羊飼い/カルロス・オスナ Carlos Osuna
舵手/イル・ホン Il Hong
若い水夫/ジェイソン・ブリッジス Jason Bridges
指揮/ペーター・シュナイダー Peter Schneider
演出/デヴィッド・マクヴィカー David McVicar
舞台装置/ロバート・ジョーンズ Robert Jones
照明/ポール・コンスタブル Paule Constable
振付/アンドリュー・ジョージ Andrew George
何と言ってもヘルデン・テノールの大御所、バイロイトの常連でもあるペーター・ザイフェルトのトリスタンが聴き物でしょう。加えてイゾルデのセオリンは、二度に亘って配信されてきた「ニーベルングの指環」サイクルでブリュンヒルデを務めたドラマティック・ソプラノ。これに加えてラングのブランゲーネ、コニェチュニーがクルヴェナルですから、正に鬼に金棒の配役陣と呼べるのじゃないでしょうか。
毎回期待を裏切らないマクヴィカーの演出も見応えがあり、シンプルな舞台ながら読み替えや深読みとは無縁。数年前にテレビ観戦したバイロイト音楽祭の映像に立腹した身としては、大いに満足できるトリスタンでしたね。
第1幕と第3幕には、舞台奥に大きな月か太陽と思しき天体が昇っているのが印象的。特に第3幕では赤い天体が登場人物、中でもトリスタンの心象に合わせて輝いたり色褪せたりもする。そして最後、イゾルデの絶唱「愛の死」と共に沈んでいくのが誠に効果的でした。
この天体、私の感想では月でも太陽でもなく、要するに昼と夜の境目を意味するのではないかと思いました。「トリスタンとイゾルデ」では昼と夜が二人の会話でも重要なテーマになりますし、即ちトリスタンであり、イゾルデでもあると解釈できましょう。そこで「と」という接続詞も意味を持つ。
キャストのタイトルロールの中に振付師の名前があるのが如何にもマクヴィカー演出。第1幕では水夫たちが登場し、踊りとも演技とも見える振舞で単調になり勝ちな舞台進行を引き立てているのを興味深く感じました。
ところで第2幕の前半、一時画面と音声が途切れ途切れになる箇所がありました。収録時のトラブルか、配信の際の回線の不具合か、あるいは当方のシステムの故障か。もし再度再生してみて同じ個所で発生するなら収録時の問題でしょうし、他の番組で発生するようなら当方の問題。前者であることを祈りますが、オペラ全体の印象を大きく損ねるほどの問題ではないと思慮します。
発表された6月のアーカイヴ予定表には、このあとワーグナーものは見当たりません。アーカイヴとしては恐らく最後となるウィーンのワーグナーを目に焼き付けておきましょう。
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