ウィーン国立歌劇場アーカイヴ(54)

昨日の「ナブッコ」に続き、今日16日は同じくヴェルディの「仮面舞踏会」が配信されています。このところオッタヴァでは2日間視聴できるのが基本になったようで、慌ただしく聴く必要はありません。ヴェルディの名作をじっくり・タップリ堪能しましょう。

ナブッコがヴェルディ初期の傑作だったのに対し、仮面舞踏会は脂が乗り切ったヴェルディの力強い音楽が魅力。次から次へと繰り出される名旋律に客席は沸きに沸き、途中の拍手で進行も遅れがち。通常なら2時間強で終わってしまうオペラも2時間40分ほど掛かっていました。全3幕、各幕の間に2度の休憩が挟まれていたようです。
2016年4月26日の公演で、キャスト他は、

グスタフ三世(リッカルド)/ピョートル・べチャワ Piotr Beczala
アンカーストレム伯爵(レナート)/ドミトリー・ホヴォロストフスキー Dmitry Hvorostovsky
アメリア/クラッシミラ・ストヤノヴァ Krassimira Stoyanova
ウルリカ/ナディア・クラステヴァ Nadia Krasteva
オスカル/ヒラ・ファヒマ Hila Fahima
クリスチャン/イゴール・オニシュチェンコIgor Onishchenko
ホーン伯爵/アレクサンドルー・モイシウク Alexandru Moisiuc
ヴァルティング伯爵/ソリン・コリバン Sorin Coliban
判事&アメリアの召使/トーマス・エベンシュタイン Thomas Ebenstein
指揮/ヘスス・ロペス・コボス Jesus Lopez Cobos
演出/ジャンフランコ・デ・ボシオ Gianfraco de Bosio
舞台/エマヌエレ・ルッツァーティ Emanuele Luzzati
衣装/サントゥッツァ・カリ Santuzza Cali

演出は伝統的なボシオによる舞台。舞台も衣装も私のような初心者には納得。リッカルド、アメーリア、レナートにこれだけの名歌手が揃えば、文句の付けようもない公演だっと言えるでしょう。これぞヴェルディ、イタリア・オペラの真骨頂を素直に楽しめばよろしい。
ヴェルディの歌劇は殆どが悲劇。前日のナブッコでも触れましたが、その中にも喜劇的な要素が紛れ込んでいることも多々あります。「仮面舞踏会」では第2幕、アメーリアの逢引きの相手が仕えている君主グスタフ三世だったことが判明する件の三重唱は、その典型でしょう。そもそもオスカルというキャラクターは喜劇的な性格があって、刃傷沙汰が起きる前の仮面舞踏会のシーンでもコミカルな側面を味わいたいもの。直前の喜劇との落差が大きいほど、悲劇がよりドラマチックに響くのも演劇の常識でしょう。

ということで聴きどころ盛りだくさんの「仮面舞踏会」でしたが、僅か4年前の公演でありながら、レナートを好演したロシアのホヴォロストフスキーとスペインの巨匠ロペス・コボス氏の二人が既に鬼籍に入っていることに気が付きました。ウルリカの占いじゃないけれど、このオペラには何か因縁染みたものさえ感じられます。
間違っていたら恐縮ですが、カラヤンが急死したのも「仮面舞踏会」の準備中だったのじゃなかったかしら。レナートを得意にしていたバスティアニーにも早逝の名バリトンでしたっけ。

最後の仮面舞踏会の場、昨日のナブッコでも紹介したウィーン国立歌劇場ならではの舞台オーケストラが舞台上で活躍していましたね。弦楽器奏者が10名ほど。このオーケストラの存在を知っていると、普段の仮面舞踏会より注意して見るシーンが多くなってしまいました。

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