ウィーン国立歌劇場アーカイヴ(63)
ムソルグスキー、ベルリーニ、アイネムの作品を挟んで、ヴェルディ週間が戻ってきました。今日取り上げる「ドン・カルロ」は6月22日にも別公演が配信されましたから、二つの舞台を纏めて紹介することにします。
そもそも今回のダニエレ・アバド演出の「ドン・カルロ」は、ウィーン国立歌劇場の今シーズンの出し物の一つで、去年9月にも上演されてライブ・ストリーミングされていたもの。作品と演出の要旨に付いてはその時にかなり細かく触れた積りですから、そちらも参考にして下さい。
アーカイヴ配信された2公演のキャストも微妙に違っていて、以下の配役でした。
6月22日配信
ヴェルディ「ドン・カルロ」(2017年6月21日公演)
フィリッポⅡ世/フェルッチョ・フルラネット Ferruccio Furlanetto
ドン・カルロ/ラモン・ヴァルガス Ramon Vargas
ロドリーゴ/プラシド・ドミンゴ Placido Domingo
大審問官/アレクサンドルー・モイシウク Alexandru Moisiuc
エリザベッタ/クラッシミラ・ストヤノヴァ Krassimira Stoyanova
エボリ公女/エレーナ・ツィトコーワ Elena Zhidkova
修道士・カルロ5世/ライアン・スピード・グリーン Ryan Speedo Green
テオバルド/マーガレット・プランマー Margaret Plummer
レルマ伯爵・王室の布告者/カルロス・オスナ Carlos Osuna
天からの声/ヒラ・ファヒマ Hila Fahima
指揮/チョン・ミュン=フン Myung-Whun Chung
演出/ダニエレ・アバド Danieie Abbado
舞台構想/グラツィアーノ・グレゴーリ Graziano Gregori
舞台監督/アンジェロ・リンツァラタ Angelo Linzalata
衣裳/カーラ・テーティ Carla Teti
照明/アレッサンドロ・カルレッティ Alessandro Carletti
演出助手/ボリス・ステトカ Boris Stetka
6月28日配信
ヴェルディ「ドン・カルロ」(2016年6月2日公演)
フィリッポⅡ世/ルネ・パーペ Rene Pape
ドン・カルロ/ラモン・ヴァルガス Ramon Vargas
ロドリーゴ/ルドヴィック・テジエ Ludovic Tezier
大審問官/アレクサンドルー・モイシウク Alexandru Moisiuc
エリザベッタ/アーニャ・ハルテロス Anja Harteros
エボリ公女/ベアトリス・ユリア=モンゾン Beatrice Uria-Monzon
修道士・カルロ5世/パク・ジョンミン Jongmin Park
テオバルド/イレアナ・トンカ Ileana Tonca
レルマ伯爵・王室の布告者/カルロス・オスナ Carlos Osuna
天からの声/アンドレア・キャロル Andrea Carroll
指揮/マルコ・アルミリアート Marco Armiliato
演出/ダニエレ・アバド Danieie Abbado
舞台構想/グラツィアーノ・グレゴーリ Graziano Gregori
舞台監督/アンジェロ・リンツァラタ Angelo Linzalata
衣裳/カーラ・テーティ Carla Teti
照明/アレッサンドロ・カルレッティ Alessandro Carletti
演出助手/ボリス・ステトカ Boris Stetka
これらと去年9月の配役を比べて見ると色々面白いことが見えてきます。オッタヴァ・テレビを最初から見ている方は、公演年度の新しい順に鑑賞したことになりましょう。
「ドン・カルロ」は、少なくとも5人のスター級歌手が勢揃いしないと耳の肥えたファンを満足させることは出来ません。逆に言えば適材適所のキャストが組めれば歴史的舞台になることは間違いなく、ファン夫々が思い入れ深く、忘れ難い思い出となる経験をされていることと思います。それだけヴェルディの音楽が素晴らしく、アリア以上に重唱曲に心を打つ場面が多いという証拠にもなるでしょう。
ウィーンの3公演、5大スターの中で二度歌っているのは、ドン・カルロのヴァルガス、フィリッポⅡ世のパーペ、エボリ公女のツィトコーワの3人。残るエリザベッタとロドリーゴは、3人3様のキャラクターが楽しめました。
どの公演も甲乙付け難く、3時間半の長丁場も聴いていてモチヴェーションが上がり、幕が進む毎に惹き込まれて行きます。ヴェルディのパワフルな音楽には抗い難い。
一々詳しくは取り上げませんが、どの公演も終演後には聴衆がピット前に押し寄せ、夫々の感動を吐き出すまでは帰らない人たちがほとんど。何時まで続くのか、というカーテンコールを見ているのも楽しみで、どの公演も完全に拍手が鳴りやむ前に放映自体を止めざるを得なかったようです。
特に2017年6月の公演、ドミンゴが出演した舞台は正に5大スター饗宴。客席からは花束の応酬があり、5人がカーテンコールに呼び出される度に一斉にスマホが向けられるという会場の興奮ぶりが伝わってきました。
ネット配信とは言いながら、この一年間で3つの「ドン・カルロ」。過去に遡って実際の舞台で体験された方も多いでしょうが、時空を超えて理想のキャストをファン投票で選ぶ、などというお遊びを考えても良いかもね。
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