ガラ・コンサート@ウィーン国立歌劇場

ウィーン国立歌劇場再開シリーズのライヴ・ストリーミング、現地6月27日の夜はその最終回として歌劇場総出のガラ・コンサートが行われました。
そもそもシーズン最後に開催されるガラは毎年恒例なのでしょう。今年も順調であれば6月28日に開催され、その模様もライブで中継されることになっていました。4人の指揮者と多くの歌手たちもリストアップされていたほどです。

ところが今回のコロナ禍により劇場は閉鎖、更にはシーズンそのものも途中で打ち切りとなり、当初ガラ・コンサートは去年6月のものがアーカイヴとして配信されることになっていました。
しかし情況が改善に向かい、6月8日には国立歌劇場も再始動。残りのシーズンは、リサイタルなどソーシャル・ディスタンスが守れる範囲での演奏会が続けられてきたのはご承知の通り。そして最終的には、ガラ・コンサートの実施も決まり、日本時間で今朝早朝からの配信が実現したことになります。

昨日は予定されていた「ドン・カルロ」のアーカイヴ配信があってそれを見終わり、ガラ・コンサートを見始めましたが、何とプログラムは4時間越え。なんじゃそれ、と思いながら見始めて、漸く見終わったのは午後になってしまいました。
長くなった理由は後で触れますが、コンサートそのものも長丁場。しかも今回はピアノ伴奏ではなく、フル・オーケストラが舞台に並んでいます。この週末は日本でも東響シティ・フィル、広島交響楽団が無観客演奏をライブ配信してどちらも見ましたが、ウィーンでは「さんみつ」ってなによ、と言わんばかり。弦楽器は1プルトに1台の譜面台で演奏していますし、奏者間の距離もいつもと変わりません。もちろん管楽器の前にアクリル板なんかありませんよ。

日本が厳密に感染拡大防止ルールを守っているのに比べると、ウィーンは随分緩い。そもそもルールそのものが緩和されているのでしょうか?
マスクにしても、オケのメンバーの多くはマスク着用で登壇してきましたが、本番中は外してます。指揮者も前半を担当したフィッシャーもマスク姿で指揮台に上がったものの、直ぐに外してポケットへ。
指揮者と歌手たちの挨拶は、前半こそエア・ハイタッチやら肘タッチなどで触れ合わないように配慮していましたが、途中から、特に後半は完全無視でガッチリ握手する場面ばかりと言って良いほど。コロナ禍など既に克服したぞ、というアピールが籠められているのかと邪推してしましましたね。何だ、ウィーンって普通にやってるじゃん。

休憩無しの70分程度という約束事も無くなったのか無視されたのか、途中に休憩を挟んで3時間を軽く超えるガラ・コンサートとなってしまいました。
演奏曲目は以下の通り。指揮者は二人で分担し、前半のモーツァルトと、後半に選ばれたワーグナーとフンパーディンクがフィッシャー担当。後半のフランスものとイタリアものはアルミリアートが振ります。
そのワーグナー、宮廷歌手のコニェチュニーはゲスト出演でしょう。貫録のオランダ人に圧倒されます。またフンパーディンクは「夢のパントマイム」付きのロング・バージョンでした。

モーツァルト/「フィガロの結婚」序曲
モーツァルト/「ドン・ジョヴァンニ」酒の歌(アダム・プラチェツカ)
モーツァルト/「イドメネオ」あなたは私のお父様(チェン・レイス)
モーツァルト/「イドメネオ」海の外なる胸の内の海は(ベンジャミン・ブリュンス)
モーツァルト/「コジ・ファン・トゥッテ」岩のように動かずに(ヴァレリーア・サヴィンスカヤ)
モーツァルト/「フィガロの結婚」自分で自分がわからない(レーチェル・フレンケル)
モーツァルト/「フィガロの結婚」楽しい思い出はどこに(オルガ・べズメルトナ)
モーツァルト/「フィガロの結婚」恋とはどんなものかしら(スヴェトリーナ・ストヤノヴァ)
モーツァルト/「フィガロの結婚」男たちよ眼を開けろ(アレッシオ・アルドゥイニ)
モーツァルト/「フィガロの結婚」愛の歓びよ早く来い(ヴァレンチナ・ナフォルニツァ)
モーツァルト/「フィガロの結婚」第2幕フィナーレ(オルガ・べズメルトナ、アンドレア・キャロル、マーガレット・プランマー、アダム・プラチェツカ、ペーター・ケルナー、ソリン・コリバン、トーマス・エベンシュタイン、イゴール・オニシュチェンコ)
     ~休憩~
ドニゼッティ/「連隊の娘」友よ、何と目出度い日だろう(ジョッシュ・ラヴェル)
ドニゼッティ/「連隊の娘」フランス万歳(ダニエラ・ファリー)
ワーグナー/「タンホイザー」夕星の歌(サミュエル・ハッセルホーン)
ワーグナー/「さまよえるオランダ人」期限は切れた(トマーシュ・コニェチュニー)
フンパーディンク/「ヘンゼルとグレーテル」夕べの祈り(イレアナ・トンカ、マーガレット・プランマー)
オッフェンバック/「ホフマン物語」昼と夜(ミヒャエル・ローレンツ)
ロッシーニ/「アルジェリアのイタリア人」運命のいたずらに対しては(マルガリータ・グリツコヴァ、オルハン・イルディッツ)
プッチーニ/「ラ・ボエーム」ムゼッタのワルツ(マリアム・バッティステリ)
ヴェルディ/「リゴレット」彼女はさらわれてしまった(シャホウ・ジンシュ)
ヴェルディ/「運命の力」神よ平和を与えたまえ(アニタ・ハーティヒ)
ヴェルディ/「ドン・カルロ」おお、むごい運命よ(シルヴィア・ヴェレシュ)
ヴェルディ/「マクベス」何という暗い闇が(パク・ヨンミン)
ヴェルディ/「ファルスタッフ」終曲のフーガ(オルガ・べズメルトナ、ヒラ・ファヒマ、ステファニー・ハウツィール、ゾルヤーナ・クシュプラー、アダム・プラチェツカ、クレメンス・ウンターライナー、シャホウ・ジンシュ、レオナルド・ナヴァロ、ベネディクト・コーベル、ライアン・スピード・グリーン)
 管弦楽/ウィーン国立歌劇場管弦楽団
 指揮/アダム・フィッシャー(前半と後半の一部)
 指揮/マルコ・アルミリアート(後半)

一体何人の歌手が登場したんでしょうか。多くの歌い手が1曲だけですから、全力を出し切っての歌は正に圧巻の連続。よくもまぁ、これだけの歌が続いたものだと感心してしまいました。
コンサートが終わってからが、また長い。延々1時間余り、今シーズン限りで身を引くドミニック・マイヤー総裁と営業部の総責任者トーマス・ぶらっツァー氏の引退セレモニーが行われました。出演した歌手も全員が客席に座って参加し、総裁のスピーチに聞き入っています。

ドイツ語が分からないので内容は理解できませんが、総裁の思い出話でしょうか、客席の歌手に向かって語り掛けたりもする。それにしても皆、話が長い。
最後は総裁を称える拍手が長々と続き、終わると彼方此方で談笑の輪が。これじゃ三密もへったくれもありませんナ。最後の儀式まで付き合う必要はありませんが、今のウィーンはこんな状況ですよ、というのを目撃するには絶好の映像でしょう。
これで順調に9月から新シーズンが始まる、んでしょうね。

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