日本フィル・特別演奏会(オンライン)

7月13日、東京では新盆の入りに当たる月曜日、テレビマン・ユニオンの有料サイトで日本フィルの特別演奏会が配信されました。当家にも仏様が毎年戻ってこられるので、この日はサントリーホールへは出掛けず、行事を済ませてからパソコン前に陣取ります。
テレビマン・ユニオンはこれまでも「チョイ聴きクラシック」と題して様々なコンサートのハイライトを発信してきましたが、この度本格的にフル・コンサートを有料配信することになり、その第一弾としてコロナ明けの日本フィルが開催する3回の特別演奏会を特別価格で販売することになりました。新し物好きの私も早速これに飛びつき、取り敢えず体験してみようじゃないか、と考えた次第。その第1回、演奏されるプログラムは、

J・S・バッハ/トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
J・S・バッハ/主よ、人の望みの喜びよ
ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲
 指揮/井上道義
 ヴァイオリン/前橋汀子
 オルガン/石丸由佳
 コンサートマスター/木野雅之

チケットを買うのに若干トラブりましたが、何とか無事に開演時間。ところが画面は一向に切り替わらず、どうやら通信障害が発生したとのことで途中からの配信。カメラが切り替わるたびに画面は乱れ、音質も今一。どうもこれは外れかな、と思って最後まで見ることを断念してしまいました。アーカイヴ配信があるということなので後日見直そうか、と。

ということでこのコンサートの感想アップは諦めていました。14日の夜中になって漸くアーカイヴ配信が始まったようで、私は翌日の朝(15日)改めて見直しました。
初日のことがあったので余り期待もせずに見始めましたが、最初のオルガン・ソロからして演奏会当日のライブ配信とはまるで異なります。画面のチラツキは皆無ですし、音質は同じものかと疑う程に優れていて、配信を一気に見通してしまいました。ライヴの絵と音は一体何だったのか? 生放送ではアクセスが集中して受信トラブルとなるのか、あるいは一日かけて技術的な処理が施されたのか、理系ではないのでテクニカルなことは全く分かりません。

ライブストリーミング自体が急速に展開してきた分野だけに、様々な試行錯誤があるのでしょう。しかし今回のテレビマン・ユニオンによる配信は、私がいくつか体験した放送の中では最高クラス。海外の優れたストリーミングに比べても遜色ないものと断言したいと思います。これで1000円は廉い!

最初に演奏された石丸由佳によるバッハは、とても会場では見ることが出来ないストップの処理や手鍵盤・脚鍵盤の弾き分けなど、映像付き配信ならではの興味深い演奏が楽しめました。石丸の豊かな表情、思い入れの深いバッハ演奏に、コンサートの前座(失礼!)とは思えない充実した時間を体験。
続いてオーケストラが入場し、ベートーヴェンの協奏曲に入ります。

演奏会当日のチョイ聴きとは違い、前奏でのオーケストラ、特にヴィオラの刻みなど真に迫る迫力すら感じられます。前橋本人としても何か月かぶりとなる客席を前にしての演奏に伴う不安と喜び、思わず発する唸り声も聞こえますし、呼応するかのごとき井上の呻き声もシッカリ収録されています。
前橋のヴァイオリンは、師であるシゲティ譲りの「語るヴァイオリン」で、昨今主流の美しく流れるようなヴァイオリンとは一味も二味も違うもの。ゴリゴリと音符を一音づつ積み上げていくスタイルは、正にベートーヴェンの本質を衝いている、と改めて感心しました。私は、こういうヴァイオリンの方が好きですね。

アンコールは井上道義のピアノ伴奏も加わるベートーヴェンのロマンス第2番と、彼女の定番アンコールでもあるツィゴイネルワイゼン。
二人のトーク、演奏後のミッチーのスピーチもまた感動的。この配信は3か月間視聴できるそうですし、チケットも未だ買えるそうな。今回の経験では、却ってアーカイヴ配信の方が良質の音声と画像を楽しめるのではないか、と思いました。

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