北欧の巨人とベートーヴェン(オンライン)

フェスタサマーミューザの3日目は、N響。N響が観客の前で演奏するのは5か月ぶりとのことで、待ち焦がれていたファンも多かったのじゃないでしょうか。
日本で全国のオーケストラが演奏会中止を迫られる頃、確かN響はヨーロッパ楽旅中で、日本の団体としては観客の前で演奏できた最後のオーケストラだったと記憶しています。彼らが帰国すると同時にヨーロッパも悲惨な状況になり、その時点では何とラッキーなオケだな、と思ったものでした。

しかしご承知の通り、N響は指揮者もソリストも海外の演奏家との共演が主体となっているオーケストラ。4月以降は定期も断念せざるを得ず、遂に1シーズン丸ごと定期演奏会を中止するという思い切った決断に至りました。
これから来年の秋までどのような活動を行っていくのかは不明ですが、それでもビクともしないのは流石にN響ですね。今後暫くは日本人指揮者、日本人ソリストとの共演が増えていくものと想像されます。

ところで今年のフェスタサマーミューザ、当初の計画は忘れてしまいましたが、予定を大幅に変更する中で浮上してきたのが「ベートーヴェン生誕250年」というテーマ。そもそも川崎の夏では特段のテーマを掲げることは無かったと思いますが、ベートーヴェンの作品は舞台上のソーシャル・ディスタンスを守って演奏するには最適のサイズ。ホールの響きを十分に生かせるということもあって、今回のフェストでは第9以外の八つの交響曲をいくつかの参加団体に振り分けて取り上げるという音楽祭初の「テーマ」が生まれました。

オープニングで東京交響楽団がヴァーチャル指揮者の下で演奏したエロイカはその第一弾で、この日N響が受け持った第8交響曲は、リアル指揮者と演奏する最初のベートーヴェンということになります。プログラムは、

グリーグ/組曲「ホルベアの時代より」作品40
ベートーヴェン/交響曲第8番ヘ長調作品93
 管弦楽/NHK交響楽団
 指揮/広上淳一
 コンサートマスター/篠崎史紀

題して「北欧の巨人とベートーヴェン」
特にプレトークなどは無く、本番前に室内楽コンサートが開かれるのもN響流で、私は殆ど出掛ける機会のない定期演奏会でも続けられているスタイルだと認識しています。この日は以下のメンバーにより、ロッシーニの珍しい室内楽が演奏されました。挨拶と解説は、ファースト・ヴァイオリンの森田氏。

ロッシーニ/弦楽のためのソナタ第1番ト長調
 ヴァイオリン/森田昌弘、白井篤
 チェロ/宮坂拡志
 コントラバス/西山真二

ロッシーニは同種の弦楽ソナタを6曲書いていますが、1番は最も有名なもの。番組名が何だったか、放送局が何処だったのかも忘れましたが、その昔、この曲の冒頭はある音楽番組のテーマ・ミュージックになっていました。
私と同世代、あるいはそれ以上の年齢の古参ファンには何とも懐かしい弦楽の響き。ミューザの広々とした空間に響く懐メロに思わず胸が一杯になったファンも多かったでしょ?(もちろん私もその一人)

このロッシーニからして、今回のライヴ配信が大幅に改善されたことが聴き取れました。初日の配信で感じられた音量面での物足りなさは見事に払拭され、本編の弦楽合奏とベートーヴェンでも充実したオーケストラの分厚い響きが堪能できます。この調子でフィナーレまで突っ走って貰いましょう。
休憩の無い1時間弱のコンサート、最後に広上氏が客席に一言語り掛け、アンコールはモーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」序曲。どれも安定したN響の実力を楽しみました。

ところでN響は、プライムシートというネット配信サイトででアーカイヴ配信中。画像付きはN響ホームページから見ることが出来ますが、恐らくどれもミューザで行われているシリーズでの収録。全部で6人の指揮者による6曲が配信される予定で、私も第一弾のコープマン指揮モーツァルト「ジュピター」を楽しみました。
これも画質は超優秀、音質もハイレゾ配信とあって、ミューザの収録・配信システムが優れているのでしょうね。アフター・コロナの演奏会スタイルに、ミューザからの配信を定期的に加えて頂けるようお願いします。

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