三重協奏曲とチャイコフスキー(オンライン)

今年のミューザ、ブログのタイトルにはプログラムに使われているキャッチコピーを使わせて貰っていますが、今回は文言が長いので省略しました。正式には、新世代の旗手たちによる「三重協奏曲」、そして感動が蘇る! 尾高忠明のチャイコフスキー となっています。

さて今年のフェスタサマーミューザ、8月2日は何日目になるのでしょうか。折り返し点をターンして後半に入ります。
この日は日本のオーケストラとしては最も創設が古いとされる東フィル。尤も定期演奏会の歴史としては現N響に次いで2番目の老舗ということでしょう。

その定期は戦前から始まっていて、長い間マンフレート・グルリットさんが指導してきました。グルリット氏は行政区こそ異なれど拙宅の比較的近くに住んでおられましたから、私にとっては大先輩のご近所さんという親しみもありましたね。
今年の指揮者は、同団の桂冠指揮者であり元首席指揮者の尾高忠明氏。オーチャードホールが設立された頃は尾高氏が首席だったと記憶します。違ったかな?

今回のプログラムは、ベートーヴェン生誕250年記念の一環として三重協奏曲が選ばれました。今年のフェストで取り上げられるベートーヴェンの協奏曲は、他にヴァイオリン協奏曲とピアノ協奏曲の1・4・5番。第2と第3ピアノ協奏曲以外は全て聴くことが出来ます。いわゆる「トリプル・コンチェルト」のソリストがまた豪華で、こんなメンバーでした。

ベートーヴェン/ヴァイオリン、チェロとピアノのための三重協奏曲
     ~休憩~
チャイコフスキー/交響曲第5番
 管弦楽/東京フィルハーモニー交響楽団
 指揮/尾高忠明
 ヴァイオリン/戸澤采紀
 チェロ/佐藤晴真
 ピアノ/田村響
 コンサートマスター/近藤薫

若手3人の揃い踏みで、全員が大きなコンクールの覇者たち。代表的な大会を一つだけ選べばこんな具合でしょうか。即ち、戸澤は15才で日本音楽コンクール優勝、佐藤は21才でミュンヘン国際コンクール優勝、田村は20才でロン・ティボー国際コンクールで優勝。戸澤は東京シティ・フィルのコンマスを務める戸澤哲夫氏の娘さんだそうで、父君は7日のシティ・フィル公演でコンマスを務められますから、ミューザ親子出演ということになります。
3人についてはライブ配信のスペシャル番組としてインタヴュー映像が流れましたから、ファンの皆様は大いに楽しんでください。

この日の公演も演奏会前にプレトークあり。話し手は指揮者の尾高氏とコンマスの近藤氏でしたが、主に話されたのは尾高忠さん。先日配信された大阪フィルのサマーコンサートでも長々とスピーチされていましたが、尾高演説はすっかり有名になってしまいました。大阪でも川崎でもいわゆる「ヨイショ」を盛り込むあたり、手慣れたもの。指揮者のプレトークはこれまで川瀬・下野・秋山・高関と聞いてきましたが、夫々の性格が良く出ていて面白いものですね。
海外渡航が困難な現状、日本のオーケストラ界は日本人指揮者が大活躍。既にフェストに出演した指揮者陣の中でも広上・下野・秋山・高関・尾高は日本全国を飛び回って再始動コンサートを指揮しまくっています。この状況は暫く続くでしょうが、現在ほど日本人指揮者の層が厚い時代は無いと言って良いでしょう。長老やヴェテラン、円熟期を迎えた人から働き盛り、若手や新人とそれこそ多士済々。我々もせいぜい配信を駆使して彼らの活躍を応援していこうじゃありませんか。

演奏に付いては各自ライヴなり配信なりで楽しまれたことと思います。三重協奏曲の評価については、前日の高関氏はやや頭を傾げていましたが、尾高氏は大絶賛。その辺りもご自身で確認してください。
3人のアンコールは、フォーレ/3つの歌曲より「夢のあとに」をピアノ・トリオで。3人を拍手で迎え入れるマエストロのバックステージ映像が見られるのも配信の特典です。

一方、オケのアンコールはチャイコフスキー/イワン・サマーリンの栄誉のための悲歌「感謝のしるし」。ほとんどの方は初体験の作品だと思いますが、チャイコフスキーは後にハムレットの付随音楽に転用しています。第3幕と第4幕の間に置かれた間奏曲がそれで、ハムレットのエレジーとして紹介されることもある佳作です。

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