巨匠が振るドイツ音楽の至高(オンライン)

今年のフェスタサマーミューザも残り4日、昨日8月7日に行われた東京シティ・フィルのコンサートが平日夜に開催される最後の演奏会となりました。
7日は首都圏でも今年最初の猛暑日が記録されましたが、こんな時は老人は外出せず、お家でオーケストラという選択肢があるので大いに助かります。尤も、この日のプログラムは生演奏で聴いた方がより大きな感動が得られるのは間違いないでしょうが・・・。

ワーグナー/歌劇「タンホイザー」序曲
     ~休憩~
ブルックナー/交響曲第4番(ハース版)
 管弦楽/東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
 指揮/飯守泰次郎
 コンサートマスター/戸澤哲夫

同団の桂冠名誉指揮者を務める飯守マエストロ、一時入院中という噂が流れていて心配しましたが、元気な姿を見ることが出来て安心しました。足元に不安はありそうですが、背筋をピンと伸ばした立ち姿と、判り難い指揮振りは健在。80才を迎えて矍鑠たる巨匠、長老指揮者の貫録が感じられます。
曲目がワーグナーとブルックナーということもあり、客席は男性ばかりが目立ちました。男子トイレには長い列ができていたのでは、と想像します。何しろソーシャル・ディスタンスですからね。

プレトークはコンマスの戸澤哲夫氏と、音楽ジャーナリスト池田卓夫氏の対談。演奏前ということで戸澤氏は途中で切り上げ、あとは池田氏の思い出話が中心でした。

タンホイザー序曲とブルックナーの4番と言えば、金管、特にホルンに負担がかかるプログラム。今年のミューザでは最も壮大な音響が楽しめたコンサートでしょう。全曲が終わると暫し沈黙。
そのあとは感動を抑えられない多くの聴き手が盛大なスタンディング・オヴェーションでマエストロを称えました。これに丁寧に答えるマエストロ、最後までカーテンコールを受ける姿には、申し訳ないという気持ちも湧いてきます。

ブルックナーの交響曲というと、様々な版が話題になります。アナウンスでもプログラムでも「今日はハース版です」とのことでしたが、正直なところ版などどうでもよろしい、というのが私の意見。
実際、今回の演奏はハース版を楽譜通り演奏したわけではなく、むしろ戦前に出版されていたオイレンブルクのポケット・スコアに近かったのじゃないでしょうか。そもそも第4交響曲でのハース版とノヴァーク版の違いは、第4楽章の最後に第1楽章のホルン主題が回帰するかしないかの違いだけでしょ。その点ではハース版だったのでしょうが、マエストロの判断でハース版に100%忠実だったわけじゃありません。

同じシンフォニーでもどの版を使うか、何年の稿で演奏するかで揉めるのがブルックナー。日本人、特に男性にはそんな詮索好きが多いのでしょうか。先日訊いた話では、某有名指揮者が「ブルックナーは日本人だった」という珍説を披露したとか。
私がクラシック音楽を聴き始めた頃、レコード藝術誌で「ブルックナーの交響曲はどう聴くべきか」とかいう記事があったことを思い出しました。当時は原典版で聴くべきか、カット版がお勧めか、という話題だったように記憶しています。飯守マエストロのブルックナー演奏には多くの示唆が籠められていたと聴きましたが、どうでしょうか。

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