祝!生誕90年の武満徹&生誕250年のベートーヴェン(オンライン)

8月8日のフェスタサマーミューザは日本フィルでした。纏まりが無いようにも見えるプログラムですが、前半はリュートからギターに繋がり、武満徹からベートーヴェンへと、ダブルで生誕を祝う企画です。
今年のテーマだったベートーヴェン交響曲シリーズもこの日が最後。最初のシンフォニーである第1交響曲で閉じられるというのもかなり珍しいチクルスと言えそうです。

レスピーギ/リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲
武満徹/虹へ向かって、パルマ
     ~休憩~
ベートーヴェン/交響曲第1番
 管弦楽/日本フィルハーモニー交響楽団
 指揮/梅田俊明
 ギター/村治佳織
 オーボエ・ダモーレ/松岡裕雅
 コンサートマスター/千葉清加

珍しいと言えば、配信のみの特典映像としてインタヴューを受けた村治佳織、ホールでのプレトークにも参加してのダブル出演。村治ファンには嬉しい一日となりました。
更にダブルに拘れば、コンサートマスターの千葉も川瀬/神奈川フィルの演奏会でも一部コンサートマスターを務めており、一夏で二つのオーケストラのコンマスという新記録?を樹立しました。
それだけじゃありません。神奈川フィルではバッハの2台のヴァイオリンのための協奏曲、いわゆるドッペル・コンチェルトでのコンマス、そしてこの日は武満の2つのソロ楽器のための協奏曲、即ちドッペル・コンチェルトのコンマスで、二重・二重コンマスという珍記録をも達成したことになりますね。

この日のプレトークは、日フィルの夏休みコンサートで長年司会を務めてこられた江原陽子氏と指揮者の梅田氏による対談。途中からは上記のように村治氏も参加しての3人語りとなりました。

インタヴューとプレトークでも話題になっていたように、生誕90年を祝して演奏された武満作品は、村治・梅田両氏にとって、またオーケストラ・メンバーのほとんどにとって初体験となる由。
武満徹にはギターが使われる協奏作品が3曲あって、残る2曲は「夢の縁へ」(1983)と「スペクトル・カンティクル」(1995)。村治はこのうち「夢の縁へ」を去年同じ日本フィルと共演していて(インキネン指揮)、あとスペクトル・カンティクルを演奏すれば3大協奏曲を制覇することになります。

「虹へ向かって、パルマ」(1984)は、ダウンロードして読めるこの日のプログラムに詳しい解説(宮本明氏)がありますので内容は省略。ただ、スコアには弦楽器の人数まで指定があって、それによれば14-12-10-8-6。
武満の指示通りの弦楽編成で演奏されたのは当然ですが、3管編成の管楽器に打楽器多数(奏者は4人)、2台のハープにチェレスタと、舞台上はかなり密に。恐らく今年のサマーミューザでは最大の編成となりました。

拍手に応えて村治がアンコールしたのは、やはり武満が愛したギター・ソロ曲で1995年作曲の「森の中で」(ギターのための3つの小品)から第1曲「ウェインスコット・ポンド―コーネリア・フォスの絵画から-」。

ここで休憩が入り、後半のベートーヴェン。第1交響曲がメインになるのは珍しいこともあってか(去年のフェストでノット/東響がやりましたっけ)、プレトークでも、休憩時間中に放映された千葉コンマスのインタヴューでも同曲についてかなり突っ込んだ解説が聞かれました。
曰く、ハ長調でありながら出だしは遠い調から始まるところが新しい、第2楽章でもトランペットとティンパニが使われるところが新しい、第3楽章はメヌエットと書かれているのに実質スケルツォなのが新しい、冒頭の出だしがピツィカートなのが新しい(千葉解説)等々。夫々に説得力があり、第1交響曲を新鮮な気持ちで楽しめました。

オーケストラからもアンコールのサービスがあり、やはりベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」序曲。あれ、最近何処かでこの曲がアンコールされるのを聴いたばかりだなと思ったら、先日の群響と同じ。
最後までダブルが付いて回るコンサートでした。

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