コンセルトヘボウの再開コンサート(オンライン)
漸くヨーロッパでも観客を入れたコンサートが行われるようになってきました。夏の間はシーズン・オフということもあって本格的なオーケストラのコンサートは殆ど開催されていませんでしたが、秋を迎えて各オーケストラとも手探り状態ながら再始動の動きが出始めています。
首題のコンセルトヘボウ、正式にはロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団というのでしょうが、アムステルダムの有名なホールで新たなシーズンをスタートさせるという発表がありました。詳しいことは同団のホームページで確認してください。有難いことに開幕を飾るコンサートが無料配信されると聞き、早速視聴しました。以下のプログラムです。
ヤコブ・テル・ヴェルデュイ Jacob ter Veldhuis/Who, What, Where, When, Why? (世界初演)
ベートーヴェン/交響曲第3番
指揮/フランソワ=クサヴィエ・ロト Francois-Xavier Roth
コンセルトヘボウ管は同じプログラムを何日間も開くのが特徴で、この演奏会も8月20日から3回ほど開催されることになっています。今朝(日本時間で午前4時から)ライブで配信されたのは現地23日の模様で、コンセルトヘボウ自身のユーチューブ・チャンネルで普通に見ることが出来ます。ユーチューブのホームページで検索、この際ですからチャンネル登録しておくことをお勧めしておきましょう。
コンセルトヘボウの映像は、今年予定されていたマーラー・フェスティヴァルの代替となった過去のアーカイヴ番組、ロックダウンの期間中に僅かな観客を入れてのコンサートでヒメネス指揮のベートーヴェン第7とドヴォルザーク第8、ビチュコフ指揮のベートーヴェン第2などを見てきました。当初はこれに比べて日本の配信技術は遅れているなと感じたものですが、改めて今朝の放送を見て思ったのは、日本の技術進歩が目覚ましく、この分野でもオランダに追い付き、あるいは追い越してしまったのではということ。もちろん今回も音質・画質とも優秀ですが、例えばミューザ川崎の配信レヴェルと遜色ないくらい、と見れば良いでしょうか。
番組の冒頭、事前に収録されたと思われる解説映像が流れます。コンセルトヘボウの配信ではコントラバス奏者が解説するのが定番のようで、この日はエロイカがメインだけに、ホルン首席の女性奏者がゲストでホルンの奏法、座る位置などを紹介していました。言語は英語。
なお、この解説部分は左チャンネルからしか音が出ませんが、本番はチャンとステレオになっていますからご心配なく。
映像を見て判るのは、ソーシャル・ディスタンスを守っての演奏会と言っても日本とはやや対応が異なること。観客は満席の18%ほどと解説されていましたが、日本のように市松模様に座るのではありません。欧米では基本的にコンサートはペアや家族で出かけるのが常識ですから、ここに二人並んで、あそこは3人掛けで、というスタイルのソーシャル・ディスタンス。客席でマスクをしている人はいません。
えッ、と思ったのは、スペースが開いた客席の間にはテーブルが用意されていて、飲み物などが置かれているようにも見えます。日本では「客席での飲食は固くお断りします」というアナウンスがありますが、私が実際に経験したロンドンのプロムスでは、休憩時間中に客席でビールを売っていましたからね。本番は一杯飲みながら聴くという生活習慣の違いに驚いたものでした。
終演後のブラヴォ~も盛大で、指笛があちこちで鳴らされます。日本ではコロナ感染が劇的に抑えられていますが、この辺りにも原因があるのでしょう。
舞台上では楽器同士の間隔は大きく開けられ、この点は舞台が広いコンセルトヘボウには有利。演奏者でマスク着用はヴィオラとチェロに数人いる程度。弦楽器は一人1台の譜面台を使っていました。
演奏時間が1時間ほどと少な目、休憩が無いのは日本と同じ。指揮者と奏者は握手せず、肘タッチで挨拶するのも同じです。暫くはこのスタイルで演奏が続くものと思われます。
今回のプログラムは2曲。最初に演奏されたのはオランダを代表する現代の作曲家による新作で、恐らくこの日のために新しく書き下ろされた作品。読み難い名前の作曲家で、番組でも「Jacob TV」(発音もヤコブ・テーヴェー)と紹介されていました。1951年生まれ、ロック・ミュージシャンからスタートした人だそうで、それと思わせるようなパッセージも出てくる、メロディックで聴き易い音楽でした。
木管は2管(第2フルートはピッコロ)、金管はホルン4、トランペット2、トロンボーン2.打楽器はティンパニの他に2人、シロフォン、小太鼓、大太鼓と比較的少なく、ソーシャル・ディスタンスを意識して書かれた作品であることが見て取れます。演奏時間10分ほど。
演奏後、客席から作曲者が呼ばれて拍手に応えていました。
メインはベートーヴェンのエロイカ。指揮するロトは、本来なら10月に来日して読響定期でマーラーの第7交響曲を振る予定でしたが、現状では来日は難しいと思われます。私も楽しみにしていた指揮者ですが、幸いコンセルトヘボウを振る様子が同時中継で見れましたから、取り敢えずこれで満足しておきましょう。
モダン楽器によるベートーヴェンですが(ティンパニのみバロック楽器)、古楽流の演奏スタイルを取り入れたもの。所謂イン・テンポではなく、かなり自由にテンポを動かし、大きく間合いを開けたりもする解釈。特に第2楽章は自由奔放なアーティキュレーションを伴い、ドラマティックで相当に個性的な名演と聴きました。それでいて各パート間はクッキリと分離されて聴こえ、如何にもフランス人の色彩感覚が聴き取れます。
第4楽章の変奏曲では、第2変奏でしょうか、弦4部の合奏は首席奏者のみ、弦楽四重奏のスタイルで弾かれるのも時々耳にする解釈です。ヴィオラの首席、今回は波木井氏ではありませんでしたが、東洋系の女性でした。何という方でしょうか?
指揮者は舞台奥の階段を下りて登場するのではなく、指揮台の真下からロビーに降りることが出来る階段を使って登場するという今までとは違った光景も。
コンセルトヘボウの新シリーズ、次回はアンドリス・ネルソンスの指揮でラフマニノフの交響曲第2番のみというプログラム。無料配信されるかは不明ですが、これからも中継されることに期待しちゃいましょう。
コンセルトヘボウの定期会員になったような気分ですからね。
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