完全暗譜のベートーヴェン(オンライン)

今年のプロムス、早くも大詰めを迎えました。10日にロイヤル・アルバート・ホールで行われたのは、立奏、メンバー全員が暗譜で演奏することで話題のオーロラ管弦楽団。俊英ニコラス・コロンの指揮共々毎年のようにプロムスを賑わせてきました。
と言っても今年は無観客。ベートーヴェン生誕250年を祝う最後のプログラムで、委嘱作品の世界初演に合わせて2曲プログラムでした。

9月10日
リチャード・エアーズ Richard Ayres/No.52(BBC委嘱・世界初演)
ベートーヴェン/交響曲第7番
 オーロラ管弦楽団
 指揮/ニコラス・コロン Nicholas Collon

前半で紹介されたリチャード・エアーズは、1965年、英国生まれ。その作品は交響曲とか弦楽四重奏のようなタイトルを付けず、全て番号で表記するという変わり種です。
今回BBCからの委嘱を受けて書き上げたのは「52番」。作品名を見ただけではどんなジャンルの音楽か見当もつきませんが、52番はオーケストラ、やや小振りな2管編成の室内オケのための一曲。

52番には副題があり、「ベートーヴェンに関する3章。dreaming, hearing loss, and saying goddbye 」となっています。つまりベートーヴェンへのオマージュということでしょう。
演奏時間は20分ほど。基本的に2管編成ですが、金管にはチンバッソが含まれているのが珍しい所。また指揮者はレコード・プレイヤーを操作するよう指示もあります。いきなりハイリゲンシュタットの遺書の朗読録音から始まり、時折人が叫ぶような録音も聞こえてきました。ノイズと楽器音が入り乱れるこれまで聴いたことの無いような音空間。

と、楽譜を見てきたようなことを書きましたが、アイレスの作品はショット社から出版されており、そのほとんどはペルーサル・スコアとして閲覧が可能ですし、ダウンロードしてオフラインで見ることもできるのです。
52番は今回が初演であるにも拘らず既にスコアが出ていて、私も譜面をダウンロードして閲覧しながら聴いた次第。興味ある方はショット社のホームページを検索し、作曲名と作品名をクリックすれば簡単にスコアに辿り着くことができます。何とも不思議な時代になったものですね。

メインのベートーヴェンは、もちろん立奏、プレイヤーも全員が暗譜での演奏。演奏に先立って、コロンが長く、細部に立ち入った曲目解説をしてくれました。
録音レヴェルが低くてやや聴き辛い所もありますが、繰り返しを全て実行する完全演奏。第3楽章、二度目のトリオでおやっと思う箇所がありますので注意していてください。

さて今年のプロムス、明日はアーカイヴ録音からテンシュテット指揮のベートーヴェン第9交響曲が放送され、日曜日にラスト・ナイトを迎えます。以前の記事で紹介したように、今年のラスト・ナイトは政治的にも論戦になっており、私はコメントを控えることにしました。どんなラスト・ナイトになるのかは各自でお確かめください。
予定されていたヴァイオリニストのパティアシュヴィリが急病のため降板。替わってニコラ・ベネデッティがヴォーン=ウイリアムスの揚げひばりを弾くことになっています。

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