ウィーン国立歌劇場再開公演「エレクトラ」(オンライン)
今年3月中旬から閉鎖されていたウィーン国立歌劇場。6月に再開したもののオペラ公演は行えずそのままシーズンを終了していました。
この間に新総裁ボグダン・ロシュチッチ Bogdan Roscic を新総裁、フィリップ・ジョルダン Philippe Jordan を新たな音楽監督に迎え、去る7日の「蝶々夫人」でオペラ公演の新シーズンをスタートさせたことは各種ニュースでご存知のことでしょう。
ファンとして気になっていたのは、去年からオッターヴァが提携して日本でも親しまれてきたライヴ・ストリーミングがどうなるか、ということ。ライヴ配信は費用が嵩み、一部では終了してしまうのではという噂も流れていたほどでしたが、現時点では継続して配信される模様です。字幕に付いても、今まで通り日本語字幕が選べました。
先の計画は未発表ですが、取り敢えず第一弾として11日に上演されたリヒャルト・シュトラウスの歌劇「エレクトラ」が無事に配信されましたので、そのレポートです。
公式発表があったように、オッターヴァでは現下調整中。何れ再開の案内があるものと期待されますが、待ち切れない小欄は直接ウィーン国立歌劇場のサイトにアクセスし、配信を視聴するための会員登録を済ませました。今回のエレクトラは無料とのことで、今朝無事に視聴することが出来た次第。
エレクトラ/リカルダ・メルベート Ricarda Merbeth
クリュテムネストラ/ドリス・ゾッフェル Doris Soffel
クリソテミス/カミラ・ニールンド Camilla Nylund
オレスト/デレク・ウェルトン Derek Welton
エギスト/イェルク・シュナイダー Jorg Schneider
第1の少女/モニカ・ボヒネク Monica Bohinec
第2の少女/ノア・ベイナルト Noa Beinart
第3の少女/マーガレット・プランマー Margaret Plummer
第4の少女/レジーネ・ハングラー Regine Hangler
第5の少女/ヴェラ=ロッテ・ベッカー Vera-Lotte Boecker
監視の女/ドンナ・エレン Donna Ellen
若い召使/ロバート・バートネック Robert Bartneck
年老いた召使/ダン・パウル・ドゥミトレスク Dan Paul Dumitrescu
オレストの後見人/マーカス・ペルツ Marcus Pelz
クリュテムネストラの腹心の侍女/アンナ・ネカメス Anna Nekhames
クリュテムネストラの裾持ち/ステファニー・メイトランド Stephanie Maitland
指揮/フランツ・ウェルザー=メスト Franz Welser-Moest
演出/ハリー・クプファー Harry Kupfer
舞台/ハンス・シャーファーノッホ Hans Schavernoch
衣装/ラインハルト・ハインリッヒ Reinhard Heinrich
振付/アンゲラ・ブラント Angela Brandt
冒頭のテロップでは他に6人の召使女のキャストが上がっていましたが、長くなるので省略しました。悪しからず。
ウィーンのエレクトラは、ライヴ配信された去年の公演、アーカイヴで見ることが出来た公演共々ウヴェ・エリック・ラウフェンベルク Uwe Eric Laufenberg による演出でしたが、新シーズンで使われているクプファー演出は、かつてアバド時代のウィーン国立歌劇場で親しまれてきた古典。スタッフ一新に伴って復活したというべきでしょう。エレベーターが上下するラウフェンベルクのものと違い、ウィーンの常連たちにとっては懐かしく感じられたのではないでしょうか。
いきなり幕が切って落とされ、アガメムノンの巨大な像と転がる首。その像から垂れ下がるロープ。主役たちはこのロープを掴みながら歌うことで、彼らが全てアガメムノンと繋がっている運命を象徴するのです。
先代の音楽監督であったウェルザー=メストが指揮台に戻ってきたことも、注目の的。
もちろんアバド時代とはキャストも入れ替わり、エレクトラを歌うメルベートは、新国立劇場のブリュンヒルデでお馴染みのドラマティック・ソプラノ。今年の東京春音楽祭でオランダ人のゼンタを歌うはずでしたが、ここで再開できました。
クリソテミスにニールンド、クリュテムネストラにゾッフェルを起用した辺り、ウィーン国立歌劇場が新シーズンに掛ける意気込みが伝わって来るじゃありませんか。エレクトラ・クリュテムネストラ・クリソテミスの3人の絡みは正に圧巻。コロナ禍明けの舞台とは思えない最高のエレクトラに興奮してしまいました。
いや、コロナ禍明けだからこそ、と言うべきか。先日新国立劇場の二期会・フィデリオでもそうでしたが、これまで溜まっていた歌うことへの渇望が一気に爆発した印象。冒頭アガメムノンの動機から最後の和音まで、一気に聴き通し、見通してしまいます。
画質・音質はやはり最高クラス。生々しいウィーン・フィルの音、的確に登場人物の表情を捉える抜群のカメラワーク。これこそがストリーミングの最高峰だと確信しました。
客席の反応もいつも通りで、幕が下りるや否や盛大な拍手とブラヴォ~。ウィーンの新聞ではブラヴォーは控えるように、但しブラヴォー警察は出ないでしょうと書かれていましたが、この圧倒的な舞台に声援を浴びせない方が不健康と言わんばかり。
確かに客席は満席ではなかったものの、入りは50%を遥かに上回っていたように見えます。マスクに付いては、開演前にアナウンスがありましたがドイツ語なので良く分かりません。マスク装着で来場しても、上演中は外している人が多かったようにも見えました。リヒャルト・シュトラウスですから、ピットは密集状態。舞台では群衆たちが仮面や覆面で顔を覆っていたのが、確認できた唯一の感染防止対策なのでしょう。カーテンコールでの握手も通常通り。
これは予想と希望ですが、オッターヴァが無事に配信を再開してくれた暁には、是非このエレクトラもコンテンツに加えて欲しいもの。ウィーンから直接受信できたエレクトラが何時まで視聴できるかは、今のところ把握していません。
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