第145回クァルテット・ウィークエンド

当初の予定から半年遅れて開催されたコンサート。晴海の第一生命ホールで続けられているSQW(クァルテット・ウィークエンド)の第145回公演です。本来なら3月15日の日曜日午後2時開演のはずでしたが、コロナ禍の影響を受けて延期されていました。
一旦はチケットも手元に届いていましたが、席をリセットし、市松模様に配席したチケットが届きました。えッ、なんでこの席なの、という疑問もありましたが、中止にならず延期してでも開催できたことを喜びましょう。

≪クァルテット・エクセルシオ&タレイア・クァルテット≫
ドヴォルザーク/弦楽四重奏団曲第12番ヘ長調作品96「アメリカ」(エクセルシオ)
ヤナーチェク/弦楽四重奏団曲第2番「ないしょの手紙」(タレイア)
     ~休憩~
ガーデ(ゲーゼ)/弦楽八重奏曲ヘ長調作品17
 クァルテット・エクセルシオ(ドヴォルザーク)
 タレイア・クァルテット(ヤナーチェク)

出演者、演奏曲目に変更はありません。このシリーズの3月は例年クァルテット・エクセルシオが様々な企画で登場することになっていて、今回の二つの弦楽四重奏による共演(競演の方が相応しいかも)は2019年3月に始まった新シリーズ。去年はクァルテット奥志賀との共演でしたが、今年はタレイアQがゲストでした。
エクに付いては改めて書くまでもないでしょうから、タレイアについて。プログラムに掲載されていたプロフィールを掻い摘んで紹介すると、

2014年、東京藝術大学在学中に結成された団体で、その時はファーストが山田香子、セカンドの日吉麻優子、ヴィオラに渡部咲耶、チェロの石崎美雨の4人でした。このメンバーでザルツブルク=モーツァルト国際室内楽コンクール2015で3位、第3回宗次ホール弦楽四重奏コンクールは2位。
2016年度からセカンドが大澤理菜子に替わって活動を続け、英国デビューなどを経て第4回宗次ホール弦楽四重奏コンクールで1位。サントリーホール室内楽アカデミー第5期のフェローメンバーで研鑽を積み今日に至る、という経歴のようです。2018年秋にセカンドが再度交替し、現在は二村裕美。奇しくもセカンドに新メンバーを加えて間もない二つのクァルテット共演となりました。それにしてもタレイアQ、4人の名前を見ただけで若い団体であることが判ります。

エクセルシオに付いて一言だけ触れると、彼らも自粛期間中は活動停止に追い込まれていましたが、7月1日の札幌定期が再開公演だったと思います。その後も各地で演奏し、最近ではベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲録音を完成させたとか。海外の団体が渡航できない昨今は特別な依頼も数多く舞い込んでいるようで、極めて多忙な演奏活動を送っているという噂も聞こえてきました。
私が彼らを聴くのは1月末、鶴見のラボ・シリーズ以来。上記札幌定期と同じプログラムで行われる筈だった東京定期は、直前まで開催を模索していたものの残念ながら中止となり、実に8か月ぶりの再会でもあります。会場で手渡されたプログラムは2020-2021シーズン主催公演の総合プログラム。やっと現物を目にすることが出来ました。

その再会は、エク得意中の得意とするアメリカ。やはり万感の思いを抱かずに聴くことはできません。冷静を装ってはいましたが、脈拍は相当に上がっていたと思います。
続いてはタレイアのヤナーチェク。恥ずかしながら私が彼女たちを聴くのは初めて。宗次ホールのコンクール、東京文化会館でのリサイタル、プロジェクトQでの演奏、サントリーの室内楽アカデミーなどで聴かれた方も数多く来場されていたようで。私ももっと早く接する機会があったのですが、これもコロナ禍のために延び延びになっていた次第。今回、初めてタレイアの実力に触れることが出来ました。曖昧さの無いヤナーチェク、感心しましたね。

休憩を挟んでの八重奏。去年3月の奥志賀とはエネスコを披露してくれましたが、今回はゲーゼ。一般的には珍しい作品と言えるでしょうが、個人的には結構親しんでいて、エクのドイツ公演に同行した際、ゼーリゲンシュタットの音楽祭でヘンシェルQと共演したのがゲーゼでした。この時はリハーサルの一部も見学できましたし、その如何にもメンデルスゾーンに影響を受けたに違いないロマン派真っただ中の作風が耳に馴染んでいます。
他では、確か日本フィルがネーメ・ヤルヴィとヨーロッパ公演を行った報告パーティーの中で、日フィルのメンバーがこの八重奏曲を披露してくれたことがありましたっけ。場所は浜離宮朝日ホールだったと記憶しますが、それが私のゲーゼ初体験でもありました。

ということでメインのゲーゼ。各パートの表はタレイアが、裏をエクセルシオが担当するという組み合わせで、舞台下手から順に山田・西野・二村・北見・渡部・吉田・石崎・大友の順。
改めて見るまでもなく、華やかな女性奏者の中にあって大友肇チェロが黒一点。カーテンコールの度にレディー・ファーストを守り続ける姿に頬も思わず緩んでしまいました。

いつもなら演奏終了後に出演者とサイン会を兼ねての意見交換会があるのですが、今は御法度。聴き手同士の挨拶や懇談も注意されるほどで、不満が残ったとすれば、その一点でしょう。早くロビーに談笑の輪が広がる時が来ることを期待して止みません。
因みに来年3月の当シリーズ、エクと共演するのはクァルテット・インテグラで、総合プログラムには既に曲目解説とメンバーのプロフィールが掲載されています。共演曲目は、本命のメンデルスゾーン。

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください