2夜連続のエリアス弦楽四重奏団(オンライン)

ヴィグモア・ホールの秋シリーズも第4週に入って、そろそろ1か月が経過します。ということは第1週に行われた演奏会の配信がそろそろ期限の30日に達するということで、聴き逃した方は早目にアクセスしておいて下さい。
当ブログでは1週分を纏めて紹介していますが、特に弦楽四重奏など個人的に好きなジャンルについては個別に紹介してきました。そこで第4週の演奏会の中から、現地時間で6日と7日の夜、2夜連続で開催されたエリアス弦楽四重奏団を取り上げましょう。二日間ともベートーヴェンの弦楽四重奏曲で、特に後期の3曲が集中的に聴けた注目のコンサートです。プログラムは、

10月6日
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第12番変ホ長調作品127
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第8番ホ短調作品59-2「ラズモフスキー第2」

10月7日
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調作品131
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第13番変ロ長調作品130(終楽章は大フーガ変ロ長調作品133)
 エリアス弦楽四重奏団 Elias String Quartet

実はこの日は、当初はフランスを代表するクァトゥール・エベーヌが来英するはずでしたが、海外渡航制限のため延期となってしまいました。どうもフランスとイギリスの間の渡航は難しいようですね。
そこで別の日に予定されていたエライアス弦楽四重奏団が日程を調整し、実現したコンサートなのです。

今年がベートーヴェンの生誕250年であることはヴィグモア・ホールも意識していて、その弦楽四重奏曲も多くが予定に組まれています。特に後期についてはいくつかの団体が分担していて、作品132は9月22日にカスタリアン弦楽四重奏団が、また作品135は9月29日にアルビオン・クァルテットが演奏、当ブログでも個別に取り上げましたから、この二日間で行われたエリアス弦楽四重奏団の3曲と併せて後期シリーズが完成したことになります。

番組を進行するコメンテイターは、この団体名を英国流に「エライアス」と発音しました。しかし同団はメンデルスゾーンのオラトリオ「エリア」に因んでの命名ですから、ここでは「エリアス弦楽四重奏団」と表記することにしましょう。幸松肇氏の「世界の弦楽四重奏団とそのレコード」でもエリアスとなっていますから、日本ではこれで良いでしょう。

1998年、マンチェスターで王立北部音楽大学の学生たちによって結成。ケルンでアルバン・ベルクQに師事しています。現在のメンバーはファーストがセーラ・べトロック Sara Bitlloch 、 セカンドはドナルド・グラント Donald Grant 。ヴィオラがシモーン・ヴァン・ギッセン Simone van der Giessen 、チェロにマリー・べトロック Marie Bitlloch という4人。名前から判るように、ファーストとチェロは姉妹に当たります。
幸松事典によると、結成時のヴィオラはマーチン・セイヴィングという方だったそうで、現在のヴィオラは途中から交替したことが判ります。他の3人は創設時のメンバー。

彼らは既にヴィグモア・ホールでベートーヴェン全曲演奏会を開催しており、その5回のコンサートは全てヴィグモア・ホール・レーベルに録音されている由。幸松氏が著作の中で紹介している2008年12月29日のヴィグモア・ホール・ライヴは、ナクソスのNMLでも聴くことが出来ます。残念ながら同じレーベルのベートーヴェン全集は未だNMLでは聴けませんが、今回の無料配信でその真髄を味わうことが出来ました。
二日間とも極めて集中力が高く、彼らにとっても久し振りのライヴとあって演奏する喜び、聴き手の感銘の深さがネットを通じても伝わってきます。特に今朝視聴した作品130のカヴァティーナの素晴らしさに、私も思わず泣いてしまったほど。

幸松氏も指摘されているように、瑞々しいニュアンスと造形の見事な平衡感覚が確固とした自己主張と結びついており、気品の高さと趣味の良さが見事に表出されている名演と言えるでしょう。
ベートーヴェンの後期作品群、私も早く生演奏で接したいという気持ちが強くなってきました。

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