今日の1枚(45)

今日は立春ですが、皮肉にも寒いですね。
今日のベイヌムは、コンセルトへボウとロンドン・フィルの混成盤です。

 

①チャイコフスキー/幻想序曲「ロメオとジュリエット」
②ロッシーニ/歌劇「どろぼうかささぎ」序曲
③ロッシーニ/歌劇「ウイリアム・テル」序曲
④ロッシーニ/歌劇「セミラーミデ」序曲
⑤ロッシーニ/歌劇「絹のはしご」序曲

①がロンドン・フィルとの録音、②~⑤が所謂ロッシーニ序曲集、コンセルトへボウとの録音です。
データは、
①1950年1月12日、ロンドンのキングスウェイ・ホール
②~⑤は1952年5月、アムステルダムのコンセルトへボウ
プロデューサーは①が Victor Olof ②~⑤は John Culshaw 、エンジニアは全て Kenneth Wilkinson 。

①はデッカとしては不出来の部類だと思います。高音がキツイ上に、重低音がほとんど聴かれません。この曲は大太鼓が活躍しますが、これがほとんど聴こえないのです。
ま、大太鼓が物足りないのはこれまでと同じですが、これは極端。聴いていて疲れますし、何度も繰り返し聴けるものじゃありません。
演奏もベイヌムとしては燃焼不足。ライヴ・セットに収められている1940年戦時下のものに聴かれた高度な緊張感がほとんど消失しています。
更に奇妙なのは、コール・アングレとヴィオラが美しいメロディーを出す直前、第184小節の途中で意味不明のパウゼが置かれていること。これはこの部分の繰り返し、419小節の途中も同じで、事故が起きたのかと思うほどに唐突です。
最初が7分の辺り、二度目が14分の箇所ですから、SP盤用の繋ぎ箇所と考えられなくもありませんが、どうしたんでしょうか。CD化の際の編集ミスの可能性もあります。
(この録音の初出はデッカのLP、LXT 2531 という品番で、ホルダ指揮パリ音楽院管のリミニのフランチェスカとカップリングされていました)

②~⑤は、これがオリジナルのLP盤ロッシーニ序曲集。1952年の録音だけに重低音の不足感は解消されています。
ただ4曲の間には微妙なバラツキがあって、②と③は演奏・録音ともやや冴えず、ベイヌム/コンセルトへボウ/デッカとしては低調な感じが否めません。特に「ウイリアム・テル」の行進曲など覇気が全く感じられないのです。
反して④⑤は活気も戻っており、普通の水準。恐らく別の日のテイクだと思われます。
ロッシーニの譜面はいろいろなものがあるので、穿鑿する必要もないでしょう。一般的にはオイレンブルクのスコアが普及していますが、ベイヌムのものはほぼこれに沿っているようです。ただ「どろぼうかささぎ」と「セミラーミデ」は、オイレンブルク版には記載の無いシンバルが追加されています。
「セミラーミデ」には珍しく2箇所のパッセージに反復記号がありますが、ベイヌムは全て実行しています。

参照楽譜
①オイレンブルク No.675
②オイレンブルク No.686
③オイレンブルク No.616
④オイレンブルク No.654
⑤オイレンブルク No.1113

 

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