ウィーン国立歌劇場アーカイヴ(66)
今朝は久し振りにウィーン国立歌劇場のアーカイブ配信を鑑賞しました。前回の65、ファルスタッフを観てから5か月ぶりのことになります。
ウィーンの第1次ロックダウンは3月半ばから6月一杯の今シーズン全て。この間はアーカイブ配信として過去の公演を連日のように楽しみ、当ブログでも紹介してきました。
6月には規制が一旦緩和されて観客を入れてのリサイタル・シリーズが始まり、9月の新シーズンも何とか開幕に漕ぎつけていたのは当欄でも紹介した通り。ところが第2波に襲われたウィーンは再びロックダウンという事態に陥り、新シーズンも再び閉鎖。これに伴ってアーカイブ配信も再開されましたが、これまで配信されてきたものの再放送がほとんでした。当欄で既に紹介してきた演目ばかりでしたから、新しい記事を書くこともありませんでした。
ところが今朝、ウィーンからの連絡で12月7日のアーカイブ配信は今回初出となるサン=サーンスの歌劇「サムソンとデリラ」であると知り、早速ウィーン国立歌劇場の公式ウェブサイトにアクセス、これまでドイツ・オーストリアでのみ配信された2018年5月18日の公演を見ることが出来ました。コロナ禍が無ければ日本では見ることが出来なかった映像ということで、何とも気持ちは複雑です。ということで、キャストを含めて内容を記録しておきましょう。
サムソン/ロベルト・アラーニャ Roberto Alagna
デリラ/エリーナ・ガランチャ Elina Garanca
ダゴンの大司祭/カルロス・アルヴァレス Carlos Alvarez
ガザの太守アビメレク/ソリン・コリバン Sorin Coliban
ヘブライの長老/ダン・パウル・ドゥミトレスクー Dan Paul Dumitrescu
第1のペリシテ人/イェルク・シュナイダー Jorg Schneider
第2のペリシテ人/マーカス・ペルツ Marcus Pelz
ペリシテの使者/レオナルド・ナヴァロ Leonardo Navarro
指揮/マルコ・アルミリアート Marco Armiliato
演出/アレクサンドラ・リートケ Alexandrs Liedtke
舞台/ライムンド・オルフェオ・ヴォイト Raimundo Orfeo Voigt
衣装/スー・ビューラー Su Buhler
照明/ゲリット・ユルダ Gerrit Jurda
振付/ルーカス・ガウデルナク Lukas Gaudernak
アラーニャとガランチャが歌うサムソンとデリラと言えば、2年前にメットの新しい演目を品川の映画館で見ましたが、今回のウィーンはそれとは全く異なる演出です。リートケという女性演出家の舞台は現代風に読み替えたもので、第2幕のソレクの谷にあるデリラの家はモダーンなアパートメントのバスルームに替えられ、第3幕もガザの牢獄、ダゴンの寺院などは登場せず、縦長の舞台だけという殺風景な中で演じられていきます。
この演出、舞台装置には大いに違和感を覚えますが、アラーニャ、ガランチャ、アルヴァレスの3大スターによる名唱によって最後まで飽きずに楽しめました。
一日だけの配信なので細部をジックリ検証することは出来ませんが、不満のある演出の中にもいろいろ興味深いヒントを見付けることが出来ます。
例えば冒頭に登場するヘブライの長老は盲人で、明らかにサムソンの将来を予言し、歴史が繰り返すことを暗示しているのでしょう。最大の聴かせ所である第2幕、サムソンとデリラの愛と裏切りの場面では、アラーニャとガランチャがずぶ濡れで歌う迫力も。
意味不明と思われた水を用いた演出は、第3幕、最後にサムソンが神殿を崩壊させる場面での火と対照させているのであろうことも明らか。火と水の試練とは、どこかで見たようなテーマじゃありませんか。
それにしてもサムソンには影武者(バッカナールと炎のクライマックスは別人か? ということは二人の影武者?)が使われており、燃えるサムソンには度肝を抜かれます。あんなことして大丈夫なんだろうか?
ところで来る2021年はサン=サーンスの没後100年。来年のお正月早々には二期会でサムソンとデリラの演奏会形式公演が行われる予定で、今回のウィーンからの贈り物は又とない予習の機会となりました。
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