ヴィグモア日誌(13)
前回で朗報として紹介した通り、12月第2週の演奏会からは5週間振り、11月2日以来となる観客が入るコンサートが再開しました。残念ながら演奏会の回数は相変わらず少なく、この週も月曜日のマチネと夜、一日置いて水曜日の夜の3回だけです。あらましは以下の通り。
12月7日(月)のマチネは観客入りコンサートの再開第一弾。客席は全員がマスク、ソーシャル・ディスタンスで間を開けた座席にこの日を待ち兼ねていた熱心なファンが集っていました。
久し振りに弦楽四重奏の会で、10月23日に続き二度目の登場となるドーリック弦楽四重奏団 Doric String Quartet 。前回はモーツァルト、メンデルスゾーン、ハイドンの3曲プロでしたが、このマチネではモーツァルトの弦楽四重奏曲第21番ニ長調K575と、ブリテンの弦楽四重奏曲第3番作品94を取り上げています。前にも書きましたが、彼らはサルビアホールでも聴いる団体。演奏後の拍手を聞くのも久し振りです。
12月7日の夜は、エジプト出身のソプラノ、ファトマ・サイード Fatma Said とジョセフ・ミドルトン Joseph Middleton のピアノによるデュオ・リサイタル。この美形ソプラノは去年のプロムスでモーツァルトのレクイエムをナタリー・シュトウツマン指揮で聴いたことがあり、。その時にもBBCのニュー・ジェネレーション・アーティスに選ばれていたことを紹介していました。一方ミドルトンはこの秋3週連続で登場していたピアニストで、これが4回目となるお馴染みの顔。
このリサイタルは前半が花、後半は夢をテーマとした作品が並べられ、参集した聴衆と共に1時間半ほどの素敵な時間を体験することが出来ます。曲目を一々書き出すのも煩わしいので、以下にリストアップしておきましょう。
モーツァルト/すみれK476
クララ・シューマン/すみれ
ブラームス/5つの歌~すみれに寄す作品49-2
R.シュトラウス/おとめの花作品22~矢車菊
R.シュトラウス/おとめの花作品22~けしの花
R.シュトラウス/おとめの花作品22~つた
シューベルト/すみれD786
シューベルト/夜と夢D827
フォーレ/2つの歌~月の光作品46-2
フォーレ/3つの歌~夢のあとに作品7-1
ドビュッシー/星の夜
シベリウス/5つの歌~それは夢か作品37-4
グリーグ/6つのドイツ語の歌~ある夢作品48-6
バーンスタイン/ピーター・パン~Dream with Me
ワイル/Youkali
ワイル/One Touch od Venus~Speak Low
ワイル/One Touch od Venus~I’m a stranger here myself
ところで冒頭に歌われたモーツァルトのすみれは、そのモチーフがそっくり弦楽四重奏曲第21番ニ長調K575の第2楽章に使われており、マチネでドーリック弦楽四重奏団が演奏したのと見事な対称になっていました。もちろん偶然でしょうが、モーツァルトには声楽曲と器楽曲の間で同じモチーフを転用する例が少なからずあり、これもその一つ。二つのコンサートを並べて聴くと、モーツァルトを聴く楽しみも倍増するのじゃないでしょうか。
アンコールは、ドロシー・フィールズ(作詞)とジェローム・カーン(作曲)の映画「スイング・タイム」(日本語名:有頂天時代)から The Way You Look Tonight 。
12月9日(水)の夜は、ポール・ルイス Paul Lewis のピアノ・リサイタル。この回は当初11月2日に予定されていたましたが、ここに延期されたものです。英・リヴァプール出身のルイスは、ヴィグモア・ホール、プロムスの常連で、王子ホールでも演奏したシューベルトや、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏会で有名。N響で皇帝を弾いたこともありましたね。
この日のリサイタルは、ハイドンのピアノ・ソナタハ短調 HXVI20 とベートーヴェンのディアベルリのワルツの主題による33の変奏曲ハ長調の二本立てです。
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