クァルテット・エクセルシオのベートーヴェン弦楽四重奏全曲チクルス(3)
去年の10月からスタートした浦安音楽ホールの主催公演・ベートーヴェン生誕250年記念弦楽四重奏全曲チクルスの第3回が、1月13日に無事開催されました。
無事と言ったのは、もちろん首都圏1都3県に2度目となる緊急事態宣言が発令されたからで、様々な自粛要請が行われる中でも、この公演は予定通りに実施されたからです。
全5回のチクルス、これが折り返し点。残るは2月6日の作品18全曲の一気演奏と、3月24日の最高傑作2曲、作品131と132の完結演奏会の2回となります。何とか最後まで完走できることを願わずにはいられません。
ということで第3回は次のプログラム。夜7時開演で、とても8時までには終わらないプログラムですが・・・。
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第7番ヘ長調作品59-1「ラズモフスキー第1番」
ベートーヴェン/大フーガ変ロ長調作品133
~休憩~
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第13番変ロ長調作品130
去年12月16日、ベートーヴェンの誕生日当日に行われた第2回では、演奏終了後にアンコールとしてベートーヴェンが登場するサプライズがありましたが、今回は開場してホールに入ると、ドイツ観光局から借用したという金色のベートーヴェン像が迎えてくれるというサプライズ。
両手をポケットに入れ、意味ありげにニヤッと笑ったベートーヴェンに思わずスマホを向けてしまいます。写真を紹介していも良いのでしょうが、当ブログは写真掲載は我慢していますので、それは他のブログやSNSなどで探してみてください。
前2回でも紹介しましたが、本公演に先立って公開リハーサルが行われたのも予定通り。ただその日が緊急事態宣言再発例の当日で、なおかつ酷く寒い一日でもあったため、小欄は欠席してしまいました。
ニュースで見た発令の内容を自主的に判断したのと、これまでと同じリハーサルの実況スタイルだろうと考えたため。実際に参加された方に伺ったところでは、大フーガがリハーサルの対象で、最後は全曲演奏が披露された模様です。
さて本編、冒頭から作品59のラズモフスキー・セットの第1番がホールに鳴り響きます。これでラズモフスキー・シリーズは完結。エクは去年の大晦日恒例上野のベートーヴェン後期全曲でもトップバッターとしてラズモフスキー全曲を演奏していますから、記憶が生々しいというファンもおられたでしょう。
この日は、ラズモフスキーで休憩でも終演でもなく、少し間をおいて何と大フーガが続きます。
思えば、第3回はチクルスの折り返し点。大フーガがチクルスの丁度中間点に置かれたことになり、偶然かも知れませんが、今回のチクルスを象徴するような構成であることに改めて気付くのです。
そう思って聴く大フーガ、誠に感慨深いものがありました。初稿では作品130の終楽章だった大フーガですが、改訂に伴って単一楽章として独立したもの。言わばベートーヴェンがこの分野で残した最終結論のようなもので、これをド真ん中で聴くのもまた一興でしょう。富士山型チクルス、とでも名付けましょうか。
大友チェロがかつて語ったように、「大フーガは一つのエンターテインメントで、そんなに大変さを感じない」そうな。前回サントリーホールでのチクルスでは大変さも聴き取れたような気がしますが、今回は寧ろ余裕なようなもの。ベートーヴェンのエンターテインメント性を意識した、大変さを感じさせない演奏と聴きました。どちらにしても、素晴らしい。
15分の休憩を挟み、後半は、そしてチクルスそのものの後半戦スタートとして作品130の改訂終楽章版が演奏されました。
熱心なクァルテット・ファンの間でも終楽章は大フーガ派と改訂アレグロ派に分かれるようですが、大フーガ派氏の、今回のエクの演奏なら改訂終楽章に納得、という感想になるほど、と点頭した次第。
私にとってはその前、第5楽章のカヴァティーナに最も思い入れがあり、何時だったかエクの試演会を聴いた後の懇談会で “ボクが死んだら葬式でカヴァティーナ弾いて下さい” と発言し、エクを含めて何人かに賛同してもらったことがありましたっけ。
家人には言い含めている積りですが、その時に間違えて改訂第6楽章を流してしまうかも。ま、それはそれで皆が踊り出す楽しい葬式になるか、などと会話を控えろと諭される中で感想を述べあった第3回でした。
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