今日の1枚(51)

今日はまた温のほうに向かって進み始めたようです。昨日までの寒さは感じられません。
今日のベイヌムはデッカのロゴ3枚目、間違いなくどれもデッカのモノラル録音です。いずれもコンセルトへボウ管弦楽団を振ったもの。ユニヴァーサル・クラシックの UCCD-3523(476 9427) 。

①シューベルト/交響曲第4番ハ短調「悲劇的」
②シューベルト/「ロザムンデ」の音楽から序曲、間奏曲第3番、バレエ音楽第2番
③メンデルスゾーン/「真夏の夜の夢」から序曲、夜想曲、スケルツォ

データは、①が1952年12月、②と③が1952年5月、アムステルダム、とだけ記されています。
これはいずれもデッカのLPとして初出したもので、①はLP1枚2面をタップリ使ったもの。②と③はオリジナルでカップリングされたものです。つまりLP2枚分をスッポリとCD1枚に収めたアルバム。オリジナルLPのジャケットがどんなものだったのか興味が沸きます。

①の方が若干新しい録音の分だけ、音質も優れています。ステレオでないというだけで、現在でも立派に鑑賞に堪えるもの。
ベイヌムはシューベルトが好きでたまらなかったようで、この演奏にもそれが見事に反映しています。
第1楽章の繰り返しは省略、第3楽章は全て実行、第4楽章は省略。第2楽章には繰り返し箇所はありません。
第4楽章は形式が込み入っていて、演奏もややもすると混乱しがちですが、ベイヌムはさすがです。
特にコーダの第469小節、トランペットを含む ff を全体のピークと看做して強奏させているのが素晴らしいところ。正に乾坤一擲の ff という感じです。ff は他にいくらも出てきますが、特にこの場所を強調しているのは、ベイヌムのスコアの読み以外の何者でもないでしょう。

②はシャーロック・ホームズが喜びそうな録音。
まず序曲で、第2主題が出る場所にSPの繋ぎ面のような音の変化が聴き取れます。提示部と再現部の両方。これは夫々4分8秒、7分21秒に相当します。
データでも明白ですが、最初からLP用に録音された(はず)ですから、これをどう推理すべきでしょうかね。
間奏曲とバレエ音楽も面白いものです。まず本盤には「間奏曲第3番」と表記されていますが、これは誤り。間奏曲は2曲しかなく、これは第3幕の後に演奏されるものですから、第2番が正解。
さてこの2曲、ベイヌム・ライヴ録音セットにも入っていましたが、それとの比較が結構面白いのです。
細かく書くと煩わしいので省略しますが、繰り返しを実行するか省略するかで微妙な違いがあるのですね。
更にバレエ音楽第2番では、ダ・カーポで主部に戻る場所にも違いがあります。
もう一つ、戦前のライヴである間奏曲にはポルタメントがかなり目立つのに、戦後の録音であるデッカ盤ではポルタメントは全く影を潜めています。
僅か12年ほどの間に演奏スタイルが劇的に変化した、これは生きた証拠でもありましょうか。

③の「真夏の夜の夢」の音楽はSP時代の旧録音も存在しますが、これは新録音です。
旧盤ではスケルツォと間奏曲が1枚のSPの表裏、夜想曲が1枚2面という構成でした。旧録音もコンセルトへボウとのデッカ盤です。
因みに、「夜想曲」とか「間奏曲」という表記は、全曲版スコアでは単に第7曲、第5曲と記されているに過ぎません。別途組曲として纏められたスコアで初めて使われたタイトルですから念のため。

参照楽譜
①オイレンブルク No.507
②ブルード・ブラザーズ BB626(全曲版) 及びオイレンブルク No.817
③ドーヴァー(ブライトコプフ版メンデルスゾーン全集第15巻のリプリント) 及びオイレンブルク No.804

 

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