GⅠ史上最大?の大穴

ヨーク競馬場のイボア・フェスティヴァル、昨日の最終日のレポートです。

まずはストレンソール・ステークス(GⅢ、3歳上、1マイル208ヤード)。当初12頭の最終登録がありましたが、2頭取り消して10頭立て。
5対4の1番人気に支持されたのは、これまで5戦4勝2着1回と堅実なレインボー・ピーク Rainbow Peak 。パターン・レースは初挑戦ながら、前走ロイヤル・アスコットのウルファートン・ハンデ(リステッド)に快勝した上がり馬です。アスコットのレポートで紹介したように、今後はパターン・クラスの常連を目指す勢いです。

しかしレインボー・ピークの善戦も2着まで。優勝はゴドルフィンのリオ・デ・ラ・プラタ Rio de La Plata (7対1)でした。首差2着に本命レインボー・ピークが続き、4分の3馬身3着がキングズ・ギャンビット Kings Gambit という結果。

リオ・デ・ラ・プラタのパターン・レース優勝は3年前、まだ2歳時のジャン=リュック・ラガルデール賞(グラン・クリテリウム、GⅠ)が最後でしたから、実に久し振りのことです。一時はダービー候補と目された同馬、その後はビッグ・チャンスに恵まれませんでしたが、今シーズンは条件戦、リステッド戦に続いて3勝目でパターン・クラスに復帰した形です。

サイード・ビン・スロール厩舎、ランフランコ・デットーリ騎乗のお馴染のロイヤルブルーの勝負服。重馬場を苦手とするリオ・デ・ラ・プラタにとって、今年のヨークはタイムの速い良馬場に恵まれたことも幸運でした。
デットーリによれば、“ケガの多い馬で、パターン・レースの優勝はサイード以下スタッフの努力の賜物。この馬はゴールが何処か良く知っていて、自分を制御できる馬なのさ” ということ。

そしてヨークのフィナーレを飾るのが、スプリント路線の最高峰であるナンソープ・ステークス(GⅠ、2歳上、5ハロン)。毎年のレポートでも紹介しているように、2歳馬にも出走権利があるところが特徴です。
そして今年も2頭の2歳馬が出走してきました。

今年のスプリント界は、アスコットの二つのGⅠ戦を分けあったエキアーノ Equiano とスタースパングルドバナー Starspangledbanner が、続くジュライ・カップで1・2着。その2頭に加え、ボーダーレスコット Borderlescott (去年の覇者)、フリーティング・スピリット Fleeting Spirit 、キングスゲート・ネイティヴ Kingsgate Native (一昨年の覇者)と錚々たるメンバーが揃っていましたから、荒れる要素はほとんど無いというのが一般的な見方だったでしょう。

当初登録の13頭から、残念ながらフリーティング・スピリットが取り消して12頭立て。スタースパングルドバナーが当然のように6対4で1番人気、2番人気に7対2のエキアーノが続きます。

そして大番狂わせが待っていました。

優勝は、何と100対1の超大穴ソール・パワー Sole Power が飛び込み、1馬身4分の1の決定的な着差が付いて2着にスタースパングルドバナー。更に1馬身4分の1差3着には又しても100対1のピカデリー・フィリー Piccadilly Filly が入るというトンデモナイ結果になってしまいました。
有力馬では、ボーダーレスコットが6着、キングスゲート・ネイティヴは9着、エキアーノに至っては12着ドン尻負けという大惨敗です。

スタースパングルドバナーはジュライ・カップと同様にスタートダッシュがつかず、後手を踏んだ感がありました。13番枠と大外(スタンドに近い側)を引いたことで、最後まで他馬と馬体を接することができなかったことも影響したかもしれませんね。

またエキアーノもスタートから飛ばすことが出来ず、レース半ばで騎手が諦めてしまうシーンもありました。明らかに馬自身に走る気力が無かった様子。

連日の熱戦に沸いたヨーク競馬場も、この結果には“し~~~ん”と静まり返ってしまいました。

恐らくGⅠ史上で最大の穴馬となった(正確なデータじゃありませんから信用しないように)ソール・パワーは、ダンダルク競馬場のオールウェザー・トラックで2勝しただけの3歳せん馬。5月にパターン・レース(ニューマーケットのパレス・ハウス・ステークス)で4着したことはありますが、2週間前の前走はティッぺラリー競馬場のリステッド戦で5着という実績がある程度です。

GⅠレースで100対1という評価は、ブックメーカーのみならず陣営でも納得していたオッズだったようです。
調教するエディー・ライナム師は、“自分がGⅠに勝つこと自体が100対1だろうね” と言うほどで、“出走させるからには多少の望みはあったけれど、勝つとは思わなかったねぇ~。もし4着に入ったら祝杯だ、と思っていたんだから” と言葉を継いでいます。

ライナム師にとってはGⅠ初勝利ですが、騎乗したウェイン・ローダン騎手にとっても初体験。
ペースが速く、速い時計が出る馬場だったことが勝因の一つであることは間違いなさそうで、ダンダルクではコースレコード・タイムを記録したこともある快速馬です。

ロンシャンのアベイ・ド・ロンシャン賞にも登録する予定だそうですが、重馬場になったら出走させない、という断固たる信念を持っているソール・パワー陣営でした。

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