2010クラシック馬のプロフィール(10)

今年最後のクラシック、セントレジャーを制したアークティック・コスモス Arctic Cosmos のプロフィールです。
アイルランドもフランスも、そのセントレジャーを古馬に開放してしまいましたから、厳密な意味でクラシックレースとは呼べません。私の今年のクラシック馬プロフィールもこれが最終回です。

アークティック・コスモスは、父ノース・ライト North Light 、母フィフス・アヴェニュー・ドール Fifth Avenue Doll 、母の父マーケトリー Marquetry という血統です。

この牝系は、アークティック・コスモスの6代母にあたるロイヤル・フェイヴァリット Royal Favourite (1937年生)が英国からアメリカに渡って以来、ずっと米国で世代を継いできたファミリー。アメリカ競馬にはあまり馴染が無いので、近親の活躍馬を探すのに苦労する血統です。何とかやってみましょう。

まず母フィフス・アヴェニュー・ドールは53戦して10勝した馬ですが、ステークスでの実績は残していません。10勝は全て一般戦での勝鞍で、2歳時のものも含め、5.5ハロンから8.5ハロンまでの距離のものです。
アークティック・コスモスは、その母の初産駒。ケンタッキー産馬で、トトソルのオクトーバー・セール・イヤリングでブランドフォード・ブラッドストックが落札しました。4万7千ギニーだった由。

アークティック・コスモスの2代母はアレッジド Alleged 牝馬のアレグロ Allegro (1985年生)ですが、この馬の競走成績はよく判りません。その産駒にも目立った馬はいないようです。

最近のこの牝系で最も注目すべきは、3代母ドッツィー・ゴー Dotsie Go (1968年生、父クランデスタイン Clandestine)でしょう。7戦して未勝利でしたが、繁殖牝馬として成功した存在。現在までのところ、アレグロの他ではいずれも半姉妹に当たる2頭の娘が重要です。

最初は1975年生まれ、父にチョンピオン Chompion を持つビセーチ Beseech 。49戦3勝というごく普通の競走成績でしたが、2代娘となるナスクラ・カラーズ Naskra Colors (1992年生、父スター・ド・ナスクラ Star De Naskra)がGⅠ戦のスピンスター・ステークスで2着に入りました。

このナスクラ・カラーズも繁殖に上がり、ミスワキ Miswaki との配合で2001年に生まれた牡馬サー・シャックルトン Sir Shackleton が20戦7勝、ウェスト・ヴァージニア・ダービー(GⅢ)に勝った他、GⅠのウッドワード・ステークスで2着。更にガルフストリーム・パーク競馬場とタンパ競馬場の7ハロンでトラック・レコードを樹立するなど豊かなスピードを証明し、現在は種牡馬として将来を期待されている存在なのです。

続いて1978年生まれのキャッスル・ロワイヤル Castle Royale (父スレイディー・キャッスル Slady Castle)。30戦7勝の成績で、シープスヘッド・ベイ・ハンデ(GⅡ)に勝った他、GⅠのハイアリア・ターフ・カップ・ハンデで2着という実績を残しました。

繁殖に上がったキャッスル・ロワイヤルでは、何と言ってもヴァイス・リージェント Vice Regent との配合で1989年に生まれた牝馬に注目。
この馬は日本に輸入され、エイシンテネシーと命名されます。エイシンテネシーは6歳で阪神競馬場の金杯(GⅢ)に勝ち、繁殖牝馬としてもエイシンワンシャン(オークスにも出走)、障害で活躍したエイシンペキンなどを出しているのはみなさんご存知でしょう。

キャッスル・ロワイヤルの別の牝馬ジャヴァ・マジック Java Magic からは、同じく日本に輸入されてファンタジー・ステークスとセントウル・ステークスを制したテネシーガールがいることも付け加えておきましょう。

以上、アークティック・コスモスの牝系はアメリカで栄えているファミリーですが、日本にも深く浸透しつつある血統でもあります。ファミリー・ナンバーは1-n 。

最後にアークティック・コスモスの父ノース・ライトにも簡単に触れておきましょう。

ノース・ライトは、2004年の英国ダービー馬。サー・マイケル・スタウト師が調教した4頭目のダービー馬で、ダービー以後は4歳時も含めて勝鞍が無く、タイムフォームの評価は126。最も評価の低かったダービー馬の1頭です。

アークティック・コスモスは、ノース・ライトの初年度産駒の1頭。ノース・ライトにとって初めてのGⅠホースとなりますが、初年度からクラシック・ホースを出すあたり、流石にダービー馬ですね。

またノース・ライト自身はデインヒル Danehill 産駒でありながら、母のソート・アウト Sought Out はカドラン賞に勝ったステイヤー。アークティック・コスモスのスタミナは、むしろ父の母譲りのものと言えるかも知れません。

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください